第9話 どうやら世間は大変なことになっているようだが飯がうまい

「Cランクパーティーへの昇格記念! 今日は肉のシチューを頼んでしまったぞ!」


「うわあーっ!! 村にいた頃、こんないいお肉食べたことないですよお! 口の中でほろほろ崩れるーっ!!」


 俺とエクセレンは大盛りあがり。

 昨日の、遺跡警備の仕事は大成功だった。

 この成果を認められ、俺たちエクセレントマイティはD+ランクからCランクへの昇格を果たしたのだ。


 二人パーティなら、あとひとつ上がれば頂点。

 そこまで行きたいものだ。

 新メンバーを入れればもっと上にいけそうだが、そうすると未熟なエクセレンが強くなるための邪魔になりそうなのだ。


「俺は、攻撃はエクセレンにやってもらって、どんどん成長してもらいたいと思っている。なにせ勇者だからな」


「はい! ボクがんばります!! 実際、マイティに食い止めてもらってボクが攻撃する感じだと、凄く色んな事が経験できて成長してるって実感があるんです! 仕事二回目で、Eランク冒険者に昇格しましたし」


「うんうん。素晴らしいことだ。ところで、俺は遺跡の警備を昔はやったはずなんだが、こんなにきつい仕事だとは思ってなくてな。もっと簡単だと思っていた。やはり、仲間がたくさんいるとどんな仕事も楽になるんだな」


「そうなんですね! ああいう仕事を日常的にこなすなんて、冒険者って本当に凄いんですね……。ボクなんてまだまだです」


 謙虚になる俺たち、エクセレントマイティなのだった。

 まだまだ俺たちは道半ば。


 冒険者という広大な海原に漕ぎ出したばかりなのだ。


「だが、今日はお祝いだ! 仕事の達成と、エクセレン、そしてパーティの昇格! 大いに祝おう!」


「おめでたいです!」


 エールとミルクのジョッキで乾杯する。

 俺たちはとても盛り上がった。


 ところで、その横で辛気臭い話をしている者たちがいる。


「あちこちでモンスターが凶暴化して不味いことになってるらしい」


「ああ。奴ら、どんどん強くなってきやがる……!」


「聞いたか? Sランクパーティのあいつらがやられたらしい!」


「マジかよ……!! 巨人たちが暴走しているって依頼に行ったんだろ? Sランクパーティを蹴散らす巨人なんか、誰も勝てるわけない……」


 Sランクパーティか。

 フェイクブレイバーズ以外にも、この大陸にSランクパーティがいたんだな。

 いやはや、俺も世界が狭いな。精進しないといけない。


「ふぉぉぉぉ、マイティ見て下さい! この人参、すっごく甘くて……こんなの初めて……」


「具材と一緒に煮る前に、甘く味付けしてあったんだな。すげえ下ごしらえだぜ」


 今はシチューに集中である。

 しばらく、二人で物も言わずに食べた。

 パンとシチューを大量にお替りする。


 これは今回の、昇格記念用に取っておいた食事費用だから使い切って構わない。

 エクセレンの装備更新は済んだしな。

 彼女は今、革の鎧を組み込んだ、ピカピカのチェインメイルを纏っている。


 勇者らしくなってきたじゃないか。

 店の外には、屋内に入りきらないミノタウロスアックスが立て掛けてあるが。


 外で、わあわあと声が上がった。


「ウグワーッ!!」


「でかい斧を盗もうとした奴が下敷きになった!」


「バカだコイツ!」


 外も賑やかだな!

 町の外は大変なことになっているようだが、それを感じさせない平和ぶりだ。


 彼らの日常を守るためにも、俺たち冒険者は頑張らねばならないな!

 そして、エクセレンが勇者として育ってくれれば、人々を守る大いなる助けになってくれることだろう。


「俺もタンクとしての技量に磨きを掛けないといかんな!」


「マイティ、これ以上強くなるんですか?」


「何を言うんだ。俺なんかまだまだだよ。どんどん育つエクセレンを見てたら、このままじゃいけないと思うようになった! 俺も頑張るぞ!」


 シチューを口の端に付けたエクセレンが、笑顔になった。


「はい! 一緒に頑張りましょう!」


 そして食事しながら、次の仕事はどうしようか……という話になる。

 二、三日ほど休んでから、また仕事をしようというわけだ。


 前回の仕事はハードだったが、短期で終わったためにそれほど疲労は残っていない。

 すぐにでも次に取り掛かれるだろう。


「ボク、海の仕事に憧れるんですけど。実はその……一回も見たことがなくって」


「海か! いいな。よし、次の仕事は海の仕事にしよう。Cランクになれば、船の護衛なんかもできるようになるからな!」


 仕事の方向性は決定だ。

 新たな冒険が俺たちを待っている!




 荒れ狂う海原。

 船団は波に翻弄され、バラバラに分断されている。


「なんてことだ……! 海のモンスターたちも凶暴化している……!」


「海流を操るモンスターだと……!? そんなの、伝説に謳われるモンスターじゃないか……!」


 水夫たちが、護衛のために乗り込んだ冒険者たちが見つめる先で、荒れる海をものともせずに進んでくる存在がある。

 ボロボロに朽ちた、巨大な船。

 帆には禍々しいドクロのマークが刻まれている。


 幽霊船。

 それそのものがアンデッドの巣窟である、強大な海のモンスターだ。


『初めまして、いやお久しぶりかな、船乗りの諸君! 吾輩は船長のガイスト! 世界を股にかけ、全ての海を制覇した伝説の船乗り! そう、キャプテンガイストだ! 魔王様のお力を得て、たった今、伝説の中より帰還した!』


 舳先に立つのは、サーベルをぶら下げた大柄な男。

 豪奢な船長服に身を包む、髭の生えたスケルトンだ。


『そしてこの船の名は、彷徨える黒鯨号! 吾輩の船はひどく空腹なようでな。諸君には、黒鯨号の餌となる栄誉を与えよう!!』


 ガイスト船長は高らかに宣言した。

 波が蠢き、船団を幽霊船目掛けて集めていく。


 幽霊船から身を乗り出す、スケルトンや屍食鬼、幽霊たち。

 誰も逃れ得ぬ海の上で、蹂躙と殺戮が始まった。


 もはや、海上に安全な場所などない。



パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:C

構成員:二名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:14

HP:145

MP:88

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(下級) ヒール(下級) ライト(下級)

覚醒:シャイニング棍棒

武器:鉄のナイフ 鉄のトマホーク トゲ付き棍棒(覚醒) ミノタウロスアックス

防具:チェインメイル



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:85(レベルアップ間近)

HP:1200

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級)

魔法:なし

覚醒:なし

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド


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