第25話
パンッ! パンパンッ
手を打つ音がして、アリシアたちは静かになってその場に座る。
再構築中の生徒たちもいる中、すでに及第点を貰った自分たちが邪魔をしてはいけない。
クラッフィが響かせた音で我に返りそれに気付いたのだ。
生徒たちの復習を見守っていたクラッフィは、座って見上げている生徒たちを見遣ると口を開いた。
「及第点をとっても、自分の構築の間違いを放置せず。見直して正解に導いた努力を評価し3ポイントを加点する。また、マリランをはじめとした優秀者たちは正しい呪文の構築に協力したとして同じく3ポイントを加点する」
わあっ! と声をあがると隣同士で抱き合い喜ぶ。
授業終了の挨拶をしたとはいえ、まだ終業の鐘が鳴っておらず。
教室から出てないため今もなお授業の一環、復習をしているのと同じだ。
さらに追試者たちのグループも、聞こえたアドバイスをもとにほぼ構築間近だ。
あとは上手く呪文が発動できるか確認するだけだが、それには残念ながら残された時間が足りない。
しかし、誰もがすでに成功に近い呪文を構築出来ており、次の授業で披露できるだろう。
やる気があり、それが成功に結びついたのであれば評価されて当然。
しかし……加点される生徒がいれば、比較される生徒もいる。
「それに引き替え」
クラッフィの鋭い視線が、離れた場所で不貞腐れていた生徒たちに向けられる。
カリーナたち減点組だ。
授業開始までに呪文を構築できず、順番が回ってくるまでに完成させようと努力もせず。
その結果、最後まで披露できなかった彼らは「授業を受ける資格なし」と言われたのだ。
順番がきて披露できなくても、授業内で構築を完成させれば披露が許される。
実際に3人が完成させて全員の前で披露した。
授業前までに完成出来なかったことでポイントは貰えなかったが、成功させたことは評価されて成功者に加えられた。
いま残っているのは、努力もしないで時間を無駄に過ごしていた生徒たちである。
その中でもカリーナは減点を重ねたことで明日から
魔法呪文学だけでなく一般教科でも基礎学力がないと減点されていたのだ。
たとえ魔法の能力があろうと文字の読み書きができるか、四則計算ができるかなどの一般教科も必要なのだ。
その一般教科の授業をこれまで半分は出席していない。
遅刻だ何だと理由を口にするが、授業に遅れたことを反省しているなら、次の授業には遅刻してこないだろう。
それが積もり積もって、この日の午前でクラス替えが決定した。
ここで踏ん張らないと、次は留年への入り口が開くことになる。
しかし、カリーナは下位クラスに落とされたことで投げやりになった。
「いまさら頑張ったってホーク落ちが決定したんだから意味ないのよ!」
「でも、頑張ればまたイーグルクラスに戻って来られるよ」
「出戻り? どうせ下に見てバカにするくせに」
子どもらしい当たり散らし方である。
今までも何度か心配して声をかけてもらったものの、それらに対しては「余計なお世話!」と突き放してきた。
そして自分が困れば「手伝って」と周りに縋る。
何度か手を貸してもらったら図に乗った。
「課題のレポートをみせて。ついでだから写させて」
すでにカリーナのお願いに誰も協力しようとはしなくなっていた。
さすがに2週間後に提出という難しい課題が増えると、生徒たちは自分の課題を
何の努力もしない見返りもないカリーナは、だんだん孤立していった。
いま彼女が一緒にいる生徒たちはそんな課題をグループで取り組んでいる仲間だった。
課題に夢中になって、魔法呪文学の呪文構築を忘れて完成していなかったため減点されたのだ。
そしてそのまま取り組んでいた課題の続きを話し合っていたため、魔法呪文学で減点が追加された。
少なくとも何もしないカリーナよりはマシである……程度の問題ではあるが。
生徒たちは難しくなっていく内容のためにグループをつくって課題に取り組んでいく。
課題内容が特に難しいわけではない。
授業を真面目に聞いていれば1時間もかからないだろう。
課題と言ってもそれは授業内容をどこまで理解し把握できているかを確認するためのもの。
最初は復習として『これを理解したか?』と聞かれたことに答えるだけだった。
今は基礎を覚えたことを前提に少しひねった問題が課題に上がる。
虫食い計算や『この事変が起きた年代はいつか』という簡単なものから、『これは歴史上の誰のことを説明している文か。抜けたマスを埋めて正しい説明文に完成させよ』というものまである。
生徒の中には問題を答えた後に『この問題にはこの公式を使うとこうなって数がおかしくなる。この場合、ここにどう使うのか?』という疑問に思ったことが書かれることもある。
その疑問を解消するために、教師たちもたとえ学年が上がってから教える内容だったとしても、生徒が理解できるように分かりやすく教える努力と勉強が待っている。
教師もまた、生徒を正しく導くために陰ながら研究や勉強などの努力をしているのであった。
教師でも努力を怠らないのに、イーグルクラスに入ったカリーナはそれで満足してしまい努力を怠った。
努力を怠れば待っているのは転落である。
カリーナは気付いていないが、ホーククラスに落とされれば、やはり針の筵。
嘲笑の的として
入学前の知識で分けられたクラスは、入学後の授業に対する向き合い方や生徒同士の交流などで移動が決定する。
すでにカリーナより前にホーククラスに移動した生徒が3人いる。
どの生徒も教室の位置が覚えられず、一緒に行く生徒を捕まえられなければ遅刻で授業が受けられなかったのだ。
「入学時に貰った校内の地図はどうしたのです?」
「「「あっ!」」」
そんな光景は『新入生あるある』で、そろそろ新たなあるあるが控えている。
生活に慣れた生徒による寝坊という『あるある第二弾』が……
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