第24話
「…………以上。名を呼ばれなかった者は明日の16時よりこの場所で追試を認める。再構築は追試者同士で相談し合うことを認める。なお、授業までに呪文を構築出来ずテストを受けられなかった者に追試の資格はない」
「「「はい」」」
「では今日の授業はここまで。残りの時間は各々の課題に取り組みなさい」
「「「はい。ありがとうございました!!!」」」
挨拶を終えて、生徒たちは己が構築した呪文を互いに見せあい批評し合う。
「今日の優秀者は5人いたね」
「マリランの魔法は綺麗に決まってたね」
「さすが最優秀者に選ばれるだけあるよな」
「ありがとう。上手くいくか心配だったの。成功してよかったわ」
口々に褒め称えるクラスメイトに恥ずかしそうに頬を染めるマリラン。
少し引っ込み思案のマリランにとって、話の中心になることに戸惑いがある。
家庭の事情から学園に入学するまでひとりでいることが多かったマリランにとって読書は唯一の趣味だった。
そんな彼女にとって前期の授業は自習で覚えた基礎のおさらい。
前期で良い成績がとれていても後期でついていけるかは今後の自分次第だと理解していた。
「うぅぅぅ。空中で一回転するだけだったのに……」
「アリシアは魔力を注ぎすぎなんだよ」
どんな教科でもアリシアは及第点ギリギリだ。
今回の魔法呪文学では魔力の調整など失敗点は多く見られたものの、完成させたポイントのみ貰えた。
「アリシア、靴に浮かせる魔法はかけたんだろ?」
「前に授業で成功したし、今回もそこまではできた」
そう、アリシアは上手く浮くことができた。
しかし、そこから横に一回転しようとしたら、横回転を繰り返して高く飛んでしまった。
実はアリシアのように激しい横回転や縦回転、前転をしてクラッフィの魔法で止められた生徒が半数近くいた。
その生徒たちは完成させたポイントだけで『一回転する』という加点はとれなかった。
「なあ、なんで空中で止まったんだ?」
アリシアは自分が構築した呪文を凝視していたところ、その呪文をみていた男子生徒に確認される。
彼もまた加点ポイントを貰えた生徒だ。
「一度バランスを整えるため」
「でもまっすぐ立ってただろ?」
コクコクコクと頷くアリシア。
その周囲では同じように空中で一時停止した生徒も同じく頷く。
及第点をギリギリ貰えた生徒たちのほとんどは、空中で一旦止まってから一回転した生徒たちだ。
「そこの【止まれ】の呪文が、まず余計な呪文だろ。飛ぶんじゃなくて浮くだけの呪文なんだからさ。高くても1メートルまでしか浮かねえよ」
「「「あっ!」」」
指摘されて【止まれ】の古代文字を入れて呪文を構築していた生徒たちは、古代文字の上に赤色で二重線を引いて取り消す。
「あっ、そういえば……」
そう呟いたマリランが少し離れて座っているアリシアに顔を向ける。
「ねえ、アリシア。回転の古代文字はなんて発音したの?」
「回転の発音?」
「そう、発音の方よ」
「えっと……【スクリュー】だよ」
「「「それだ!」」」
「「それだわ!」」
マリランをはじめとした加点ポイント組がいっせいに声を揃える。
意味が分からずただ驚いて目をパチパチと
同じく驚きの表情で動きを止めた生徒たちをマリランは見回すと言った。
「みんなの中でアリシアと同じように【スクリュー】と発音した人はいる?」
「言った奴は手をあげろ」
次々と手が上がっていく。
そのほとんどが回転に失敗した生徒たちだ。
「みんな! 【スクリュー】は連続回転よ。一回転の古代文字は【ターン】なの」
「「「えええええええ!!!」」」
マリランの言葉に生徒たちから声があがる。
そして一斉に呪文が書き直されていく。
「じゃあ、手直しした呪文を試すからみてて! 【浮く】」
真っ先に呪文の再構築ができたアリシアが立ち上がると、ノートを手に古代文字に魔力を込めて呪文を呟く。
アリシアの周りに風が渦を巻き、ふわりと彼女の身体が浮く。
ノートをみながら注意深く呪文を口にすると、くるんっとアリシアの身体が横に
「…………で、きた?」
アリシアの小さな呟きに、みんなが一斉に拍手を送る。
「できた! できたよ!」
「マリランみたいに綺麗なターンだったよ!」
アリシアに抱きついて、彼女の努力を褒め称える。
その様子を見ていた生徒たちも次々と立ち上がると、呪文をかけて一回転を成功させていく。
「できた!」
「俺もだ!」
「私も!」
成功した生徒同士で抱き合い、成功を讃えあう。
そして成功に導いてくれたマリランたちに感謝の言葉を送った。
マリランたちも、自分が成功した以上に紅潮させて仲間たちの成功を祝った。
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