第18話
「……なんてことがあったんだよ」
初日の授業を終えたアリシアはリーヴァスの教室にいた。
【くすりやさん】に依頼のあった塗布用の魔法薬を調合するために来た……はずだった。
最初の一週間は全学年そろって午前のみの授業だ。
新入生は初日に教室の場所を知らずに授業に入れなかった生徒が多く、午後は自身の通う教室の場所を探し回るのだ。
そして全学年に渡ってみると、選択授業によっては教本が間に合わなかった生徒がでてくる。
国内では手に入りやすい教本も、国外から通っている生徒の母国では手に入らなかったりする。
学園に来てから注文すれば、一週間で学園の売店に届けられる。
そのため一般教科で固められた午前の授業で終わる。
とはいえ予習や復習を怠れば授業についていけなくなり、待っているのは留年経由退学か転校の分岐がついた、エリート人生落伍者専用トロッコでいく下り坂である。
「アリシア。調合中のお喋りは?」
「……禁止です」
「それはどうして?」
「分量を間違えるからです」
「はい、正解。その
リーヴァスの言葉に、分量を
「真菰茸は傘が2グラム、軸は3.4グラム……」
「逆」
短い訂正と共に開かれたノートの一文にリーヴァスの細く長い指が指し示す。
そこには『真菰茸:傘3.4グラム、軸2グラム』と書かれていた。
「あぁっ! きゅううう……」
「確認はしっかり」
「はい……ごめんなさい」
リーヴァスの注意にアリシアは小さな頭を深く下げて謝罪する。
ガツンと鈍い音が響いたが、それは腰から曲げたアリシアの額が作業台の
それでもアリシアは声を出さずに頭を下げ続けている。
すべての素材が準備できたらノートを見ながらひとつずつ確認するため、放っておいても気付いただろう。
しかしリーヴァスは敢えて注意をした。
慢心は誰かの生命を奪うこともある。
あとで確認すると分かっているが、慢心は気づかない小さな何かを見落とす可能性が高い。
そうなったときに傷つくのはアリシアであり、後悔しても喪われた生命は還らない。
厳しいことを幼いアリシアに強いているとリーヴァスは分かっている。
そんなアリシアもこの道を選んだ以上、調合中は甘えを捨てている。
「一旦作業を止めて話を続けるか、このまま作業を続けて話を止めるか」
「作業を続けます」
頭を下げたまま即答するアリシアの両の眼には強い意志が浮かんでいる。
自身のミスを挽回しリーヴァスに認めてもらうために。
エヴェリが教えた回復薬など薬草の調合と違い、リーヴァスの魔法薬学は魔法や
エヴェリが教える薬草学が1学年から始まるのに対して、リーヴァスの教える魔法薬学は3学年から始まる。
売店で
品質によって買取価格が大きく違う。
最高級品になると国に買い取られて大金を得ることも可能になる。
それは小遣いや生活費に
ル・パート村には専用の坑道を所有している店がある。
アリシアと両親の店【くすりやさん】も専用の坑道を有しており、地下から坑道に入ることができる。
魔物が出現する地下3階より下に行かないのは、実力を把握している事と魔素だまりは地下2階までに10ヶ所あるからだ。
アリシアが必要とする
20日も置いておけば最高級品を採取できる。
さらにアリシアは
魔物の討伐やドロップアイテム、そして
アリシアはまだ
『不要なものを優先で購入させてもらう権利』
それがアリシアと
横領は契約違反となるため、罪を犯した
土に属する彼らは土に還るのだ、それも『腐食した黄土』に。
普通の黄土は『酸化鉄』といい素材として重宝されているが、
錆は大地に含まれた酸化鉄をも腐食させるため、見つけ次第
仲間の犯した
罰はそれだけではない。
信頼を裏切った罰として一族は1ランク下の
アリシアが契約をした
「一度堕ちた一族なら、苦しい日々を知ってるんだもん。二度と契約を反故にしようとは思わないよね」
アリシアと契約したことで、
一度失われた信頼を取り戻すことができたことで罪が許されたのだ。
その恩がある
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