第3話
(※マーシー視点)
さて、エリオット様と別れるという約束の期日まで、あと三日ね。
前回あれだけしたから、私に逆らうとは思えないけど、念には念を入れるべきだわ。
もうすこし、脅しておくのがいいわ。
私は、カトリーを誰もいない空き教室に呼び出した。
*
さて、マーシーに呼び出されたけれど、いったいなんだろう。
約束の期日までは、まだ三日もある。
まあ、約束を守るつもりはないのだけれど。
そもそも婚約していないのだから、約束を守るも何もないのだ。
何の用か知らないけれど、ちょうどいい。
そのことについて彼女に説明してあげよう。
「遅い、やっときたわね」
呼び出された教室に行くと、既にご機嫌斜めなマーシーが待っていた。
「あの、何の御用でしょうか?」
「話があるの。もう少しで、約束の期日でしょう? あなたに約束を守る気があるのか確かめに来たの」
「えっと、そのことなんですけれど、少々誤解があるようです」
「何よ、誤解って? まさか、婚約していませんなんて言うつもりじゃないでしょうね?」
「いえ、そう言うつもりつもりだったのですけれど……」
「そんな嘘で、私は誤魔化されないわ! 噂で聞いたのよ。あなたたちは同棲しているって。その噂は、本当なのでしょう?」
「えっと、同棲というか……、はい、一緒に住んではいますね」
「ほら! やっぱり! 婚約者でもないのに、赤の他人が同棲するなんてことはないから、それがあなたたちが婚約している証拠だわ」
「えっとですね……」
さて、何から説明しようかしら……。
私は彼と婚約していないと言っているのに、まったく聞いてもらえない。
正直に話しているのに、彼女は嘘と決めつけてしまっている。
「またそうやってとぼけて、婚約していることを誤魔化すつもりね!」
マーシーが怒鳴って、ポケットから出した櫛を投げてきた。
せっかく拾って返してあげたのに……。
私はそれは華麗にキャッチする、つもりはない。
私は馬鹿ではないのだ。
繰り返す、私は馬鹿ではない。
キャッチできないことは前回学んでいる。
私は自身の運動神経を過信するなんてことはしない。
というわけで、とっさに横に飛んで避けた。
しかし、頭に衝撃が走った。
櫛が当たったのではない。
私が櫛を躱すために横に飛んだ勢いで、壁に当たったのだ。
どうやら自分で思っている以上に、私は運動神経が悪いらしい。
「いい気味ね。私に楯突くからそうなるのよ!」
マーシーが勝ち誇ったように何か言っているが、今は頭が痛くてそれどころではない。
幸い、彼女は満足したようで、教室から去っていった。
私も教室から出たが、頭を押さえてその場にうずくまった。
ちょうどその時、エリオットがやってきた。
「どうしたんだ、カトリー! まさか、マーシーにやられたのか!?」
「いえ、これは……」
「隠さなくていい! もう、彼女は許さないぞ! 僕が制裁を加える必要があるようだ!」
どうやら彼には止まる気がないらしい。
あらら……、どうなっても知りませんよ……。
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