気になる女の子が4人いる俺に、誰が1番好きかなんて選べるわけがないっ! は?タイムリープ能力あげたんだから絶対選ばないといけないからね?

モフ

プロローグ

第1話 4つの選択肢


「斗和のことが好きなの! だから私と付き合ってくれないかな?」


 2023年3月、氷野斗和ひょうのとわは、放課後、誰もいない靴箱で幼馴染の橘翠華たちばなすいかから告白をされた。


 高校1年の春休み目前で、好きな女子からの人生で初めての告白。胸が躍って、顔のニヤニヤが止まらない。


「おれでよかったら……」


 続きを答えようとしたとき、目の前の幼馴染とは別の3人の女子が脳裏を過ぎった。


(でも、もし断ってしまえば、翠華を悲しませてしまう。それなら……)


 決心をつけて彼女の告白を了承しようとしたとき、何故か目の前が真っ暗になった。


 ※※※※※※※※


「ここはどこだ」


 目の前には先程とは打って変わって、真っ白い空間が広がっていた。


「おい。そこの人間。さっき、告白を了承しようとしただろ?」


 すると、無精髭を生やした、いかにも胡散臭そうな男が近づいて、そう言い放ったのだった。


「あんた誰?」


「僕は神様だ」


「嘘つけ。神様がそんな身なりなわけがないだろ」


 俺が想像していた神様のイメージとはかけ離れている。


「いいのか? 僕は、お前の秘密を知ってるんだぞ」


「なんだよ。言ってみろよ」


「押入れにある使わなくなった古びた鞄の中に2冊、学習机の3段目の引き出しに教科書に紛れ込んでるのが2冊といったところか」


「……」


(こいつ……俺のエロ本の隠し場所を知ってやがる!)


「少しは信じてくれたか?」


 神様を名乗った男は、無言な俺を見てケラケラと笑っていたが、少しすると真剣な表情に変えて「冗談は程々にして」と本題に入った。


「お前には、あの子以外に気になっている女子が3人いるな」


「は!? なんでそれも」


 図星だった。


「だから、神様だと言ってるじゃないか」


「……信じるよ。それで、その神様が俺に何の用?」


 俺は、話が長くなるのが嫌だったので、先に進めることにした。


「本当に、あの翠華という女子が彼女になってもいいのだな? 他の子はもう諦めがついたのだな?」


「あぁ。そうだよ。じゃないと、翠華が傷ついてしまう。あいつは俺が守らないと……」


「そんな思いで、その女と付き合っても上手く行かんな。すぐ破局だ」


「そんなの……だったらどうすればいいんだよ!」


「僕がチャンスをあげるよ。お前に時を戻す能力をやる」


「本気で言ってるのか? なんでそこまで」


「単なる気の迷いさ。お前はこれから、高校1年の入学式の日に全部で4回戻ることになる」


 ゴホッと咳き込んでから、神様は続けた。


「そこで、お前は1回戻る毎に、攻略する女の子を1人選んで、精進しろ。そして、告白するか、告白されるかして、晴れて付き合うまで行ったら、お前はまた過去に戻る。それをただ4回繰り返すだけだ。最後に1番好きな人を僕に伝えてくれれば、その世界線に飛ばしてやる」


「そんなことができるのか?」


「ただし、ここまでうまい話だとつまらない。ペナルティをつけよう」


「ペナルティ?」


 神様は、ふっと微笑を漏らして、告げていく。


「あぁ、ペナルティは2つ。まず1つ目は、戻った過去で、選んだ女の子と付き合えなかった場合お前は死ぬ。次に2つ目だが……これはまだ伝えなくていいか。期限は高校1年の春休みが終わるまでだ」


「死ぬ…?」


 俺は急に、想像し得ないことに対して恐怖を抱く。


「ここまで聞いても、挑戦したい意欲はあるか?」


 俺は頭に、気になっている4人の女子を思い浮かべた。


 橘翠華たちばなすいか……数分前に俺に告白をしてくれた幼馴染。メガネが似合っていて、真面目な性格。一緒にいると守りたくなる女の子。


 小野花佳織おのはなかおり……翠華と同じ俺と幼馴染。ツンデレで寂しがりな性格。一緒にいると構いたくなる女の子。


 橋野舞香はしのまいか……スポーツが得意で天真爛漫な性格。一緒にいると笑顔になれる女の子。


 野乃桃音ののももね……学年1の美少女でお淑やかな性格。一緒にいると落ち着く女の子。



「……わかった。優柔不断な俺が撒いた種だ。だったら、死ぬのを覚悟してでも、そうするべきだ」


「ふっ。お前ならそういうと思った。俺は上でお前を観察させてもらうとしよう。お前の考えていることもすべて筒抜けだと思えよ」


「お前が、神様だからだろ」


「よくわかってるじゃないか」


 俺も、神様も2人笑い合った。


「じゃあ行って来い」


 神様に手を肩に置かれて俺は意識を絶った。


 はたして俺は一体誰を選ぶか分からないが、後悔しないために、この都合のいいタイムリープを利用させてもらうとしよう。


 でも……思い返せばあのときの俺の決断は間違っていたのかもしれない。

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