10 映画館の後




心を奪われるとは、


この事だろう


ほんの1時間前


寝床を探して街をうろついて男は、


さっきプロポーズした相手と店で飲んでる


夢のような話




だけど、


同級生もマッチングアプリで知り合った子と


一ヶ月で結婚したから


珍しい話でもない


そうとも思った



久美子さんとは、映画館での自己紹介後


居酒屋に入った


久美子さんは、表情は、酔っていたようにも見えたが


言葉や目が酔っていなかった


僕は、話すより話を聞いていた


僕は、飲みながら「頷いたり」、「うんうん」と返事をしていたが


久美子さんは、話続けた


お酒が弱い僕には、話の半分も記憶になかったが


学生時代に演劇をやっていたのは、この時に聞いたと思う


久美子さんは、楽しそうに話し


その話を楽しんでいた


空いたワインボトルを見て


飲んでる量がわかった


楽しかったせいか


かなり飲んだと思う


二人で店を出ると記憶と意識が途切れた




目が覚めると一人、ホテルのベッドにいた


「夢か」


周りを見まわした


小さなテーブルの上に


メモ書き


「ありがとう 連絡するね」のメッセージ


夢では、なかったようだ



居酒屋までの記憶は、鮮明だった



部屋のカーテンを開けると昨日の映画館が見えた


鏡に映る自分のひどい顔と


部屋を見てロマンスなんてなかったことは、すぐにわかった




今日は、


朝から飛行機に乗って昼には、戻る予定だったが


昼からの飛行機で夜に帰ることになりそうだ



ホテルのチェックアウト時に精算が住んでいた


「カッコ悪い男だ」倒れてホテルに送り届けてもらって


お金まで払わすとは、



この時は、「もう会うこともないだろう」


そんな気持ちだった


飛行機の中では、昨日、何があったか


思い出そう考えていた






夕方に飛行機を降り


電話がなった



表示される久美子の文字に


「連絡先を交換していたんだ」驚いた


電話からきこえる声は、「覚えてる」だった



「昨日は、どうも」などと返そうと思ったが


「そっちは、」なんて気取ってみた


久美子は、


「ははは」と笑った


このこの笑い声だ


「ときめいた」と言うには、歳を取りすぎだけど


この気持ちは、そうだ





また、笑い声の後に「楽しかったよ」の言葉に胸が震える


恥ずかしいが「恋」だな



この少しの会話から


どうやら久美子さんに


この生活の話をしていたようだ


彼女にホテル代を返したいと言おうと思うと



「昨日のプロポーズ 覚えてる」と聞かれた


一拍おいて


「覚えています」



そう答えた


昨日の記憶は、多くが欠けていたけど


「覚えています」に恥ずかしいより


やはり恋をしていた



最後に「ごちそうさま」のお礼で


食事代は、払ったことに


自分なりのメンツを保った


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