8プロポーズ か ラブストーリーは、突然に



3時間近くの映画を見終わり


電気がつくと


部屋から追い出される


昔は、最終上映が終わるとそのまま朝まで残れる


劇場もあったが考えが甘かった


部屋も取らず当てもなく


実家に泊まるには、なにか勿体無い


とりあえず券売フロアまで追い出される


他の作品終了まで


このソファーは、使える


「寝るか」



その時ばっと何かに捕まれ引っ張られる


殺気を含んだ力に驚くが


引き寄せられた瞬間


甘い香りに仄かなアルコールが漂う


目の前には、顔


よく見えない


そうじゃない


よくわからないが答えなのか


強いショックなのか


もう死ぬのか


しかし恐怖心じゃない




一瞬のうちにいろんな感情がよぎり


僕の顔から離れたその顔は、


僕の心を奪うのに十分だった




「ごめん」彼女は、そう言ったか言わないか


いや 言わせない


遮るように僕は、言ってしまった


「結婚してください」



僕は恐怖を感じた


彼女では、なく自分に


彼女は、笑顔で


「いいよ」


「私、久美子っていうの」


「よろしくね」と返した



これが初めての会話だった




後日、お互い


この出来事の記憶には、


くい違いが出る


僕の脳では、カッコよく記憶している


本当は、驚いた顔で


自己紹介でもしたんだろう



記憶とは、都合でいくらでも


書き換えられる

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