7出会い
日付が変わるには、まだ早い時間
久美子は、松崎の隙を伺い店を出た
松崎は、製作陣に感謝を伝えまわって忙しかった
酔っては、いたが足元は、しっかりしていた
気持ちを切り替え、黒い服を着込み
いつもの太い黒縁のメガネをかけていた
昼間の輝いていた女優とは、思えない
「さっと切り替えてこそ女優」
松崎さんの言葉だ
緊張を解放しながら歩き
気が付けば午前中に舞台挨拶をしていた劇場に入っていた
久しぶりの主演
客観的に一人で見るのが抜け出した目的だった
不安から
松崎と見に行くことも考えたが
一人で見ることにした
券売機でチケットを買い
席をとった
空席は、気にしないで空いた前列
売店でビールとお菓子を買う
この格好と片手にビール、片手にお菓子
誰も彼女が主演女優とは、気付くことはない
緊張か興奮か酔いがまわり
少し意識が飛んだ状態での鑑賞だった
久しぶりの主演復帰作
ただ、安心した
スッタフロールまで丁寧に鑑賞し
観客が全員出るのを待ち
久美子も席を立った
シアターの大きな扉から出ると
廊下の明かりが眩しい
先に出たカップルからの
「よかったね」の声が
久美子を笑顔にした
胸が高鳴ったせいか
足元がふらついた
明るい券売フロアは、ソファー
一人の男性の
後ろ姿を見る
「旬」
酔ってるのか
夢なのか
頭の中に光が走るのように
思い出の断片か目の前をよぎる
気がついた時
久美子は、男性に駆け寄り腕をまわし
顔を寄せ唇に触れた
その力に二人は、ソファーに
倒れ込んだ
久美子は、目の前の顔に
意識が戻った
「ごめん」
この話は、後になって唇に触れたか触れないかで、
二人の意見の違っていた
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