第二章 異世界の王国
第30話 ダンジョン脱出
「お疲れ様ですマスター」
「お疲れ真」
真が二人の元に近づくと、二人は真に労いの言葉を贈る。
「あぁ、二人ともありがとな。いばらのおかげでセイラが来るまでの時間を稼げた。セイラのおかげで敵を倒せた。本当に助かったよ」
「べ、べつに、私も助かるためだったし。……でも、助けになれたならよかった」
「私はマスターのメイドとして当然のことをしたまでです。ですが、せっかくならば報酬をいただきたいのですが……」
真の言葉にいばらは下を向きながらも安堵の表情を浮かべ、セイラは表には出さずとも喜んでいるのが分かる。
「報酬は後でな。今はここから出るのが先だ。このダンジョンっていう場所は壁や天井を破壊しても自動で修復する。見れば分かるがセイラが開けた穴もかなり狭くなっている」
天井を見ると、セイラが落ちてきた時は人が五、六人程度は通れた大きさの穴が今では二人が通れるかどうかの狭さにまで塞がっている。
「セイラ、機械とそこらへんに転がってる中で役立ちそうな物の回収を頼む」
「イエス、マスター」
セイラは異能を使って穴掘り機を分解、ゴブリンが持っていた武器など共にバックにしまう。
「いばら、立てるか?」
「大丈夫、っ!」
いばらは立ち上がって歩こうとするが、体力も魔力も回復しておらず少し歩くだけで体をふらつかせる。
「無理するな。どのみちこの穴は強化をしてないいばらだと登れないからな。ほら、背中に乗れ」
真はいばらに背中を向けてしゃがむ。
「え、それっておんぶ?」
「これが一番いい方法だからな。それとも横抱きが良かったか?」
「っ!そんなわけないでしょ!」
「じゃあ大人しく背中に乗ってくれ」
「……分かったわよ」
いばらは頬を赤くしながら真の背中に乗る。
「マスター、物資の回収完了しました」
「ご苦労様。じゃあ帰るぞ」
いばらを背負った真とセイラは真価解放による身体強化で上に向かって跳ぶ。
順調に上に向かって進んで行くが、上に行けば行くほど開けた穴は修復が進み小さくなっている。そしていよいよ次の穴は人が抜けることが出来ないど小さくなっている。
「セイラ!」
「イエス、【形状変換】」
その穴をセイラは異能を使って無理やり広げ、三人は上に進む。
「セイラ、魔力は持つか?」
「問題ありません。【形状変換】」
セイラは次から次へと異能によって穴を広げる。だが問題ないという割にはその顔には疲労が見える。
(真価解放に真価武装、中でも魔力を大量に消費するガトリングガンを使ったからな、さすがにきつそうだな)
真はセイラを心配しながらもセイラは異能を使い最後の穴を広げ、三人は最上階にたどり着いた。
「到着っと。おつかれセイラ」
「はぁっ、はぁっ、はい。マスター」
穴を広げるだけとはいえダンジョンの地形を変えるのは魔力を大量に消費したらしくセイラは息を荒げている。
「いばら、動けるか?」
「うん、大丈夫」
いばらは真の背中から降りると少しふらつきながら頭を押さえる。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫、疲れてるっていうよりも乗り物酔いみたいになってるだけだから」
「そうか。とりあえず座っておけ。セイラも一度息を整えろ」
いばらとセイラは壁に背を預けて座り込む。真も戦いで疲れが溜まっており休憩のため顔色の悪い二人の美少女の間に座る。そんな真たちの元に、複数の気配が近づいてくる。
(人の気配、いや人じゃないのもいるな。……というかこの感覚は)
「『我が
「ロウガ、やっぱりお前だったか」
真に近づいてきていた気配は狼のロウガ。ロウガは駆け寄ると真の腕の中に飛び込む。
「久しぶりだなロウガ。元気そうで何よりだ」
「『はい、お久しぶりです!主もご無事でよかった。ですがまさか久々の再開が異世界とは思いませんでした』」
「俺だって驚いたよ。まさかお前まで異世界に来るとはな。……かなりトップに心配かけただろうな」
「心配したのはトップだけじゃないよ」
ロウガの毛を撫でながら話す真の元に二人の人、姉川と空が近づいてくる。
「姉川さん……」
「久しぶりだね真くん」
「お久しぶりです。それに空、お前まで居るとはな」
真の言葉に空はムッとした表情になる。
「居たら悪いか?」
「まさか、むしろありがたいよ。お前は優秀だからな」
「……嫌味か?」
自分よりも年下で優秀な真に言われて空はひねくれた言葉を返す。だが、真は気にせずに軽く笑いながら答える。
「本心だ。誉め言葉なんだから素直に受け取れよ。それと、セイラとロウガが迷惑かけただろ?」
「別に。まぁ、お前が無事で良かったよ」
空はそっぽを向きながら呟く。
「さてと、色々と話したいことは山積だけど、まずはここから出ようか。座ってる二人は、結構疲れてるね。動けない感じ?」
「そうですね。……片方は俺が肩を貸すのでもう一人を姉川さんに―—」
真が言い終わる前に、右腕をセイラに、左腕をいばらにガシッと掴まれる。
「おい、お前ら」
「マスター申し訳ありません。ですが私の方が辛いのでマスターの肩をお借りさせてください」
「別に私はどっちでもいいけど、なんか
二人は互いに睨み合いながら、腕を掴む手を強める。
「なんで初対面でそこまで仲が悪いんだよ」
真を取り合う二人を見て、姉川は何かを察したような表情をする。
「……なるほどねぇ。まぁいいんじゃない?真くんなら二人とも支えられるでしょ」
「俺も歩いたり戦ったりで割と疲れてるんですけどね……」
姉川の言葉を否定しようとしたが、姉川の意味ありげな表情と、互いに譲る気が無い二人の睨み合いを見て、真は諦めたようにため息をついて立ち上がる。
「とりあえず睨み合うのをやめろ」
「……イエス、マスター」
「……分かった」
二人は睨み合うのをやめるが、代わりに真の腕を掴む力を強める。
「できればもう少し力を弱めてくれるとありがたいんだが。……はぁ~、行くか」
二人に腕を強く掴まれたまま真たちはダンジョンの外に出た。
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