第三章

通過儀礼(一)

 新暦八九五年初秋十月。

 西南州における、[第二次]西征の敗戦処理は奇妙な方向へ進んだ。

 西征を主導したモウリシア[・カスト]は、当然に責任を取る立場にあったが、これを政敵のホアビウ・オンデルサンとサレが陰に陽に擁護し、果ては摂政[ジヴァ・デウアルト]まで引っ張り出した。

 逆に側近として可愛がっている老執政[スザレ・マウロ]のほうが、西南州軍を率いた立場から、責任を取らせるべき旨を主張したが、時間が過ぎるにつれ、その責任はうやむやとなった。

 モウリシアが責任を取らぬ以上、オンデルサンとサレのボレイラ街道での動きについても、不問となった。


 三人の処置について、[タリストン・]グブリエラは憤ったが、南州公[エレーニ・ゴレアーナ]と結びついていると思われる、州内の反グブリエラ派に手を焼いていた彼には、どうすることもできなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る