3-12『予選会場ー双頭水電龍』


(にしても、予選は大混乱ってぐらい荒れてるのにな~あの二人は落ち着いたもんだ)


 気を伺っているのだろう、みぃは魔力を溜めたまま動かず、みぅは適当に近寄ってきた冒険者の首を叩き気絶させる。


(とりあえずあの二人以外は大技を使わないし、このまま混戦になって終わりか?)


 と、思っていたのだが……どうやら僕は2人のことをまだまだ見くびっていた。というより、僕自身がまだまだだったようだ。


(……!?とうとう動き出したか)


 真ん中に堂々と突っ立ってると言うのに、ほかの冒険者がその危うい迄に高い風格からか近寄ろうとしない1人の老人。


(あれが居るから、みぃとみぅ、他の4人も端から移動してないんだな……)


 そしてその者は突然、くたびれた茶色のローブの中から手と杖を出し魔法を唱え始める。


 ゛天空満ちる空に度重なる光と闇を創造し、如何なる者共へ平等なる怒りと瞬間なる死を与えよ、憂い苦しみ為す術なく、地は荒れ水は淀み天を荒れされた報いを与える時が来た゛


 ……は?


 老人が空高く杖を翳すと、天には白と黒の魔法陣、召喚されるはこのコロシアムよりも遥かに大きく、この辺一帯を覆い尽くす荒れた雷雲。

 魔法陣は合わさり雲の下にコロシアムを完全に埋め尽くす程の雷の魔法陣が展開された。


(これ……止めるべきなのか?)


 と、思う僕であるが……ふむ、まぁ様子見だな。


 ゛これは……これは?、……!!王級魔法!?皆さん逃げてください!!!今すぐに!!!


 こぼれ落ちる様に、一滴の雫が天から落ちる。

 逃げようとする会場の人々、けれどそれは許されない。

 一滴の雫が地に落ちた時、突風が吹き始め、天から豪雨が齎され、いつしか人が吹き飛ぶ程の嵐が巻き起こる。


(ふむ……人がゴミのようだ~……あっ言ってみたかっただけです)


 多分あれだな、大会の出場ってかなり審査甘いから、なんか混じったんだなきっと……うん。

 僕はのんびり分析中。って訳には行かないか……冒険者は次々リタイアする度に転移されて安全な場所に飛ばされるが、観客だけは流石に死んじゃうしな?


 てなわけで、まぁ一応対応はさせてもらっている。


『対全魔法結界』

 コロシアムの客席にのみ、ドーナツ場に作らせてもらったよ。

 作りは簡単だ、僕のもってるスキル、全魔法攻撃無効化、それを魔力で大きく広げた感じ。

 だからまぁ客席からは一切の嵐が収まった。


 ふむ、これでいいかな?2人とも……


(この規模の魔法を見て笑うって、育てかた間違えたと思うわ)


 ☆☆☆☆☆



「みぃねぇね!これいくとの魔力だよ!」

「うん、ご主人様の魔力は優しいからわかるよね」

「えへへ、あのおっきいのに勝てるかな?」

「うん!みぃがあの魔法倒すから、みぅはあの人をやっつけてね?」「わかったー!!」


 こんな嵐の中、端に居たのはどうやらこうなるのを見越していたのか、それとも偶然なのか?みぃは開始前に溜めてた分の魔力の半分をアクアウォールに使用したようだな。


 アクアウォールは水の壁を正面に作り上げる魔法なのだが、みぃの場合は魔力操作が出来るから円球にして2人を囲うように端っこの壁を使い最低限、あの王級魔法から身を守ってる感じだ。



 そう言えば、僕は分かっている。

 どうやらこの王級魔法なのだが、この嵐はただの副産物。ここからが本領発揮なのだろう。

(みぃの考えが何となくわかったわ)

 たぶんその本領がみぃの狙い。


 天に展開されている巨大な雷の魔法陣、気付くと小さな魔法陣に分離し、いくつもの魔法陣となり暗雲の下に展開されている。


(ふむ、予想だと……みぃの魔力の練り方的にも今か)


 それは同時に放たれた。


『メテオボルト!!!』


『双水龍撃!!』


 まるで遥昔の文献にある様な光景が目の前に起きている。


 天空より降り注ぐ数多の雷撃、慈悲なく人間に罰を与える様に嵐により叩き落とされ地面に伏す人間達へ降り注ぐ。

 けれどそれを許さんとばかりに現れた、嵐によって落とされた水すら利用した巨大な2頭の龍がその身をもって防いで行く。

 次々降り注ぐ雷であるが、時間が経つ度に大きくなる2頭の龍にその道を阻まれ、一切人間を殺す事が叶わず。


 2頭の龍はその身体が天より人々を護ると見るや否や、その身体を天に持ち上げた。

 身体に溜まるは幾度も受けた雷撃、暗雲に届くや否や、その雷を自身を粉砕するエネルギーへと変えて勢いよく弾け飛んだ。


(ふむ……まさか、護るだけだと思いきや爆発なんてさせて消しちまうとはな~~あ~~あのファイアレインを消し去ったのを真似したのか……流石だな~)

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