2-23『カリバーンー引退』


 とまぁテンパってたレンであったが、1人放置されることで冷静になったのか勝手に何か喋り始めた。

(寂しい奴だな~)


「……すまない!!!!」(うるさい!!!!)

 突然勢いよく立ち上がったと思えばうるさいことこの上ない。

(いっそ、一生黙らそうか……)耳がキーンとする。


 そして何かまた喋り始めたと思えばお門違いなことを言い始める。


「今回は俺の作戦の甘さが招いたミスのせいで、みんなを危険に晒してしまったことをあやまりたい!!本当にごめん!!」

(うん、危険に晒されたのはそこの緑髪1人だけどな?)


 みぅはこの人何言ってんだろー?って顔でぼーっと見てるな。


「みぅ!!……それからみぃ……は向こうか、とりあえずみぅには礼を言いたい、俺達を連れて逃げてくれてありがとう!!」

「ふぇ??」はっきりいって、完全にみぅは話しを理解出来てない。

(誰が呼び捨てで呼んでいいって言った?やっぱり助けなくてよかったかなー)


「……あと、ペルネ無事でいてくれてありがとう」

「…………」(流石に無反応はひどいと思う)けど、実際僕がいなかったら死んでたしな~嫌われて当然か


 と、現状どう見ても、レンの信頼度はガタ落ちの状態。だというのになんということでしょう。


「俺にもう一度チャンスをくれ!!次はしっかり計画を練ってオークを倒す方法を考える、みんなの力が必要なんだ!!一緒に頑張ろう……俺たちはパーティなんだから!!」


 んーーーとまぁ、こうなるよな~


「……嫌、私はレンとはもうパーティを組みたくない、もう……誘わないで」この子、声小さいけど言う事がキッツイな


「なんで!?」そしてこいつはしつこいな?


 たーん!!と大きな音を鳴らすのはペルネ、机を叩きレンに突き刺さるように現実を突きつける言葉を放つ。

「一緒にって言うけど、レンは何が出来るの?私がオークに攻撃された時、みぃちゃんが魔法で防いでくれなかったら……私死んでたんだよ?死んでたらどうしてくれてたの?」

(ん?みぃが……あー、僕ってみぃに抱かれてたからみぃの所から魔法が来たせいで勘違いしてるのか~)

 ある意味ラッキー?でも、流石にレンが可哀想に思えてくるな~正直な話し、役に立たない点で言えば自分も同じだろうにな。


「……ああ、わかったよ」

 レンはギルドから去っていった。

(頑張れ少年、来世はきっと強い男になれるかもしれないぞ!)

 という訳で、僕は暖かい目でレンを見送った。


 そして僕が思ったことはまぁあれだな。

「うぅ……ごめん、ごめんね……」

(泣くくらいなら振らなきゃいいのにな~)

 このあと、ペルネが言うにはレンはペルネのためにいつも怪我ばっかりするらしいな。

 そして今回は、かなり度が過ぎてて死にかけた事でペルネはレンを突き放すことにしたらしい。


 とまぁ聞いた感じいい話しに聞こえるだろ?けど僕からしたら最低な話にしか聞こえないな。


 つまり女にいいとこ見せたいって理由で、女が危険に晒される事を分かっててそこに連れ出してる訳だ。

 それも自身を鍛えて、戦いに余裕を持たせる訳でもなく、無謀にも初心者冒険者に声掛けてパーティ組んで、無理のあるオークの討伐に飛び込む。

(男としてはゴミ以下だな)あと女を泣かせる男が最低なことぐらいは一般常識だからな?はっきり言って庇う余地なし。


「よしよし~」「うぅ……うぇーん…」

(みぅ、絶対意味は分からずなんとなーくで撫でてるだろ?)


 ☆☆☆☆☆



「私はエルフの里に帰ろうと思います」

(んーそうした方がいいんじゃね?エルフって長寿らしいし、里で鍛え直してオークぐらい1人で倒せるようになってから出直せばいいと思うぞ?)


 初心者冒険者のうちの約9割は生涯を全うすることなく死ぬと言われている。

 だから死なずにこうして里に帰るという選択を出来たのは良かった方だと思う。

(んー僕達もそろそろ気合い入れないとだよな~)


 なんだかんだあの二人を馬鹿にしてた僕であるが、みぅとみぃ、2人がかりだから楽に倒せたオーク。

(まだ下級なんだもんな~)

 中級、上級……聖級、王級、帝級、皇級、幻想級、神話級、そして無限級。

 魔法ランクと同様に存在する魔物の強さ、まだ下級の雑魚相手だと言うのに苦労している。

(……魔王と勇者、一体どんなけ強いんだよ……)

 少しだけ心が折れそうな僕である。

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