2-09『カリバーンー受付』
と、おもったのだがな。
「ええと…こっこれ」
そう言って、僕を片手で抱きしめ(力入りすぎ苦しい)門兵に渡されたしわくちゃの紙を手渡そうとするみぃだったのだが……
(へ?)危ない、つい声が出そうになった。
「可愛いーーー!!!!!」
僕はギルド受付のお姉さんにガシッと掴まれ、みぃの腕から奪い取られた。
(え?なに?誘拐?へ?)もうね混乱するよ、当たり前だよね?
「ご主人様!?」
(みぃさん!?その呼び方NGって言いましたよね!?)
「にゅ?」
(みぅさんはこの状況を見ても動じないのはある意味すごいよ?)
「小さいてって、小さいあんよ、ほっぺもお腹もぷーにぷに、可愛いわ~赤ちゃんてどうしてこんなに可愛いのかしら~」
(僕おもちゃじゃないのでそろそろ持ち上げないでくれませんか?)ここまでぐいぐいくる受付なんて首にしてしまえ!!とはまぁ、普通の赤ん坊の振りをしてるので言える訳はない。
「あの……えと、そのっ」
(みぃって頭いいけどその分ハプニングに案外弱いのな)
「くーろいめんめ!」
「だね~可愛いね~」
「うみゅ!!」
(……みぅは逆に恐ろしいぐらい対応早いよな、ていうかお姉さんと意気投合してません?なにしてんのあんた)
「うぅ……ひっく……あの……」
(やべ~みぃが泣きそうに…………ん?まてよ、みぃって泣くのか?)泣きます。
「……みぃねぇね……にゃにゃ!?いっいくとー!!!」
みぃが泣きそうになった途端、何故かみぅは受付のお姉さんに抱かれてる僕にしがみついてきた。
(え?どゆこと?)理由はすぐに分かった。
ギルド中が慌ただしくなる。
理由なシンプルに、みぃのせいだ。
(まさか……魔力の暴走!?)
ガタガタと揺れるギルド中の机や椅子、みぃを中心とした場所から大気が揺れる程の魔力が発生している。
「どうして聞いてくれないの……みぃ頑張ってるのに!!!」
一瞬空気が止まったかのように揺れていた大気は静けさを帯びた、が……その後すぐに大津波を巻き起こ……しそうになったので「『無』」僕を抱いている受付にバレないように、小さな声で僕は魔法を唱えた。
(せーーーーふ!!良かった~魔法の練習してて……)
僕が使ったのは魔法が放たれる際に詠唱等で集まる魔力、それを打ち消す魔法である。
(まぁ大気の魔力を消すだけだから……結局魔法自体には効果ないから間に合ってよかった)
「ふぇ?」みぅはこれが分かってたのだろう。けれど発動しなかったみぃのそれに不思議そうな表情。
みぃも、一応発動してないとはいえ魔力を爆発させたから落ち着いたんだろな、顔が真っ赤になっている。
(ん~さっきの魔力……あれは闇だよなぁ)
みぃの中に眠る、怪しい魔力が見え少し心配になった。
(さて……とりあえず今はいいや)
さっきのみぃの暴走により、受付のお姉さんがギュッと抱きしめてきて、重量感ある2つの山が僕に被さってるから勿体ないけれど、みぃが泣かされたのに少しムカッときたので行動する。
まぁ攻撃なんかじゃないけどな。
「ご主人……様?」
ただ、受付のお姉さんの腕の中からみぃの方へ手を伸ばすだけ、赤ん坊がこれをしたら抱っこしてる人は必ず持ち主に返さないとやばい!って何故か思ってしまうポーズだ。
「あっ……そうね、ごめんなさい……ふふ、お姉さんが悪かったわ」
「……ご主人様……えへへ」
(このたまーにデレるみぃの笑顔は反則級の可愛さだよな)
みぃは基本無表情、けれど無表情ながらに小さく笑う口と、さっき泣いたせいで濡れてる青い瞳が、満面の笑みよりも嬉しそうに見えるのは僕だけなのだろうか?
「ふぅ……ごめんなさい、赤ん坊を見るとつい抱きしめたくなってしまうんですよ……、では改めてご要件をお伺いしてもよろしいですか!」
(変な性癖だなこのお姉さん、けどまぁ……みぃを泣かさないのであればもう一度その豊満なそれを体験してもよろしくってよ?)
このあとみぃは受付を見事にこなした。
ちなみにみぅ、余程みぃが怖かったんだろうな。
書類とか書く際みぃから僕を預かったのだが、やたらと震えているのが伝わってきたよ。
(いつの時代も怒る姉が怖くない妹は居ないってことだな)
「いくとぉ……みぃねぇね……もう怒ってないかなぁ~ぶるぶる」
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