2-07『カリバーンー身分証』


「でか!?」「……すっすごいです」


 ようやく街の目と鼻の先までたどり着いた僕たち3人。


 まるで断崖絶壁の岩山を見てる様な大きな佇まいに、はっきり言って圧倒されている。

 地図を見る所、街にはいる入口は4箇所あり、僕達は西方面の入口に来ている。

(隣の入口までの距離……一日はかかるぞこれ)


 目の前にある巨大な石橋、街まで何百メートルあるのやら?横幅は車を5台は並べて走らせられそうだ。

 そんな大きな橋がある理由はまぁ、そこに掘りがあるからなのだが……底が見えない。


「いくとー!!みぃねぇねーー!!いこーよー!!はーやーくー!!」

 みぅの大興奮もこれに関しては仕方ないと思う。

 むしろ僕と同じ様に冷静を装っている、キョロキョロと周りを見てるのにゆっくり歩くみぃが特殊なんだろうな。


 橋を渡ってゆく、思ったより人が居ない。

(こんな大きな街で、人がこれだけ少ないってことは……僕達が来た方面にはあまり何も無いってことなのかな?)


 あっちなみにだけど、僕はみぃに抱っこしてもらってる。

(流石に喋るって空飛ぶ赤ん坊ってのは、目立ちそうだもんな~)

 異世界だからそんなの当たり前かもしれないが、まぁ念の為だな。もしも他にも僕みたいにふよふよ浮かぶ赤ん坊がいれば、僕も堂々とふよふよしようと思う。


 ちなみにみぃ、やっぱ物分りが良すぎて、下手くそな説明をしたらこくりと納得してくれたのは言うまでもないな。



 ☆☆☆☆☆



 風の強く吹く橋の上をようやく渡りきり、門の前へとたどり着いた僕達は門兵の人に声をかけられている。

 まぁ声をかけられているとは言うが、基本的に全員声をかけられてるので僕達だけではない。


「通行証、もしくは身分を証明する物を提示しろ」

(……かんがえてなかったぁああああああ!!!)


 よく考えてみたら当たり前、というか僕たちの前を進んでた人達は何かを兵士に翳してたから普通に気付くべきとこだった。


「……ふぇ?」

 先に歩いてたみぅ、首を傾げてる。

(どうしたものか……僕は今、普通の赤ん坊の振りをしてるから喋れない……ここは一旦引き返すようにコソッと言うか……)

 と、僕を抱っこするみぃに言おうとしたのだが、やはりみぃは頭が良すぎるというかなんというかなんだよな。


 みぃはそっと被っているフードを外した。


「ねこのこ族の者です、身分を証明するものは無いのですが、これで証明になりませんか?」

(考えたな……身分を証明するもの、でも……こんな事で行けるのか?)とも思ったが、どうやらこれは思わぬ効果があった。


「……!?ねっねこのこ族の方でしたか!!これは失礼致しました、どうぞお通りください!!」

 何故か兵士がビクッと驚いたあと、態度が悪かったのが急変しぺこぺこと頭を下げて通る事を許可する。


 そんなみぃを見てたみぅ、意味を理解したんだろう。


「みぅもねこのこ族だよ~!ほらね!」

 フードを外して耳を見せる、たぶん面白いんだろうなぴくぴく動いてて(うん……可愛い)獣人は最高だと思う。


「だっ大丈夫です!ねこのこ族の方々にはお世話になっておりますので!!どうぞお通りください、もし宜しければ冒険者ギルドで手続きして頂ければ身分証の発行も可能ですので、こちらをお持ちください!!」

 そう言って、兵士は耳をやたらと見せるみぅに何かを手渡したようだ。


(……んーねこのこ族って、街に貢献してるのか?)


 よく分からないが無事に門を通過し、僕達は街へと入る事が出来た。


 ☆☆☆☆☆



 外から見る街も充分圧巻だったのだが、街の中もそれはもう凄いです。

(まるでお祭りだな……)

 そう僕が思う程に街の中は賑わっていて、僕はふと2人をみて分かったことがある。


「おいしい匂いする~!!」

 みぅは人混みだろうが物怖じしない性格、興奮すると自分が抑えられないのだろうな。普通の赤ん坊のフリする僕に「いくと!!ねぇねぇあれなぁにー!!」なんて、ゆさゆさボディータッチしてきてる。

(お嬢様……お触りは禁止ですよ?)


 対するみぃ、この子はお姉ちゃんとしての立場のせいで、普通に僕を抱っこし立ってるように見えるが、抱かれている僕には分かるんだよな。

 僕を抱く手にギュッと力が入り、そのせいで押し付けられる胸板から早くなった心拍音が感じられる。

(やっぱみぃは僕と同じタイプか~人混みってなんか怖いんだよな……にしても……もうすこしふっくらしてたらな~……痛い)

 この2人の今後に期待します。

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