第16話 近況

私たちの近況はこうだ。

一ヶ月と一週間前、私たちの町は突然空っぽになった。

町に取り残された私たちは、ひたすらに生きて、家を守ってきた。

いつか両親が迎えに来てくれるまで、私は家を守らなければならなかった。

そろそろ新学期が始まる頃だ。

避難した私の同級生達は今どこでどうしているのだろう。

それを知る術などどこにもなかった。

人の手を離れた町というのは想像以上にすみやかに荒廃する。

余震のたびに町は壊れていく。

コンクリートの橋は、一昨日の震度5強に耐えられなかったようだ。


誰もいないこの町にいながら、私は最近人の気配を感じるようになってきた。

誰かいれば何かわかるかもしれない――そのために、目線の正体を探して回ったこともある。しかし誰とも出会うことはなかった。そう、昨日までは――

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