性格が悪い

エリー.ファー

性格が悪い

 このままでは、生きていけない。

 不治の病だ。

 きっと、一生苦しむことになるのだろう。

 でも、神だから。

 しょうがないか。




「ゲームをやろうよ」

「いいよ」

「アクション系がいいかな」

「ゲーム、やりたくない」

「さっきいいよって言ってたじゃん」

「言ってたけど、さっきじゃん」

「まぁ、そうだけど」

「しょうがないよ。そんなことで怒らないで」

「怒ってはいないよ」

「そんなことない、怒ってる」

「だから、怒ってないって」

「言い方が怒ってる。怖い。謝って」

「なんで」

「いいから、謝って」

「ごめん」

「心が籠ってない」

「いや、だって」

「ちゃんと謝って」

「ごめん、ごめんなさい」

「もう二度と雰囲気を悪くしないで」

「分かってるよ。ごめん」

「そういう言い方が反省してない感じがするんだよね」

「もう、いいだろ」

「はあ。本当に嫌だ。こういう空気が一番嫌だ。あぁ、もう」




 性格が悪いのは問題だ。

 悪い性格も問題だ。

 どっちがより問題なのだろう。悪質と言いかえてもいいかもしれない。

 どちらでもいいのか。

 あぁ、何か間違えたのかもしれない。

 受け入れるために自分を褒めることから始めよう。

 自己肯定感が一番大切だとテレビで言っていた。

 そうだ。

 その繰り返しで私は強くなれるのだ。




「あなたの自己肯定感の低さはあなたの実力に合っているから、むしろまともな評価だと思いますよ」

「え」

「だから、あなたの人生の一番の問題点は、性格とか立ち振る舞いとか自己肯定感とかではなくて、単純に実力不足なだけでしょう」

「やめてください」

「何がですか」

「今、自己肯定感を育てているところなんです。なんでそういうことを言うんですか」

「自己肯定感を育てているというよりも、現実から目を逸らしているだけではありませんか」

「うるさい」

「現実から目を逸らすことをポジティブとは言わないんじゃないですか」

「頑張ってるし」

「みんな、そうでしょう」

「うるさい、もういい。あっち行け」

「誰に言っているのですか」

「あっち行け」

「鏡に向かって怒っても」

「お前は鏡じゃない」

「えぇ、正確には鏡じゃなくてあなた自身です。いえ、私たちです」

「もう、いい。もう、いらない」

「では、鏡を割ってみては」

「高いから嫌だ」

「そうですね。結構、高いですもんね」

「うん、そう」

「また大切に扱って下さいね」

「うん、そうする」

「それでは、さようなら」

「ばいばい」




 性格が悪いのは今に始まったことではない。ゆっくりと歪んでいったというよりも、最初から芯がなかったという方が正しいだろう。

 精神とは、目に見えないものである。

 受け入れがたい現実とは仲良くしない方がいい。




「性格の悪さを治療します」

「できるのですか」

「やってやれです」 

「そういう感じなんですね」

「だって、治療法なんてあってないようなものですし」

「え、大丈夫なんですか」

「大丈夫だといいですよね」

「私を何だと思っているのですか」

「患者様です」

「あぁ、そのあたりの感覚は死んでいないんですね」

「バカにしているんですか」

「えぇと、はい」

「治療のしがいがありますね」

「それは、なによりです。と言うべきなのかどうか」

「まぁ、悩むより前に脳みそをかき混ぜていきましょうか」

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