第107話 遠征報告、あと大宴会


異世界生活233日目


 遺跡調査を切り上げた私たち7人は、それから2日半かけて村に戻っていた。延べ20日間にもおよぶ遠征は大成功、大手を振っての帰還となった。



 少し迷ったが、道中の結界は全て解除した。ルートは覚えたし、維持しておく必要性も薄い。また行くことがあれば、そのときに結界を張ればいいだけだ。


 ただし、ダンジョンの入口は石碑で封鎖した。


 解放したまま……知らずのうちに魔物が氾濫はんらん……そして村の滅亡エンド。なんてことが頭をよぎり、入口を囲った結界も残しておいた。





◇◇◇


 帰還して早々、報告会とは名ばかりの大宴会が始まる。


 今日帰ることは伝えていたので、到着時には村人総出のお出迎えだった。既に宴会の準備は万全、ラドたちダンジョン班も今日は休みにして待ち構えていた。


 道中、報告書っぽいものを作ったので食堂に張り出すと、誰かしらがそれを読み上げ、酒のつまみにして盛り上がっている。



 今回の遠征で得た成果は以下の通りだ



1.村(厳密には東のダンジョン)から北へ、約30kmの場所に川を発見。そこから東へ20kmのところに、獣人の先祖が住んでいた遺跡を見つける


2.遺跡(街)にはダンジョンがあり、既に25階層まで攻略されていた。 ※25階層には踏み入ってないが、転移陣は解放されている状態だった


3.16~20階層にはミノタウロス(平均Lv72)が出現し、21階層には巨大牛(Lv85前後)が存在した


4.ミノタウロスのドロップは『ミノタウロスの高級肉』とソフトボール大の魔石、巨大牛のドロップは『巨大牛の硬質革』とバレーボール大の魔石


5.遺跡のダンジョン入口は、石碑のようなもので塞がれていた。また、石碑には文字が刻まれていた


6.かつて東の地に獣人族がいたこと。巨大牛に襲われて滅亡(逃亡)したこと。なんらかの方法で西の地に移住したこと。ダンジョンへ入ること(もしくは一定階層を攻略すること)は禁忌だったと判明した


7.これは推測だが、滅びた獣人の街は500年以上昔に存在していた



 最後に、調査の目的であったオーク出現に関して――


 15階層踏破でオークが、20階層踏破でミノタウロスが、25階層踏破で巨大牛が地上へと解放される仕組みだ。

 東の森にもともとオークがいた理由、最近になって街や首都、人族領にオークが湧いた理由は、15階層を攻略したことが原因とみて間違いない。



「私たちの報告は以上だ。今度はラドのほうを教えてくれよ」

「ああ、我らもかなり成長したぞ。なにせ20日間、ダンジョンに籠りっぱなしだったからな!」

「途中で聞いたよ。東のダンジョンにある長屋で寝泊まりしてたらしいね」

「うむ、移動の手間が勿体なくてな。――もちろん、村の非戦闘職も毎日通っていたぞ」


 私たちがミノタウロスのことを伝えた翌日から、ラドたちのやる気はさらにヒートアップ、現地に寝泊まりして朝から晩まで戦っていたらしい。


「それでみんなは、どれぐらい強くなったんだ?」

「そうだな。まずは我ら戦士団だが……狼人5名も戦士職を授かった。これで村の戦士は11名となる。平均レベルは53、オークファイター程度なら余裕をもって倒せるぞ!」

「おお! レベルも申し分ないし、さては相当張り切ったな。狼人のみんなもおめでとう」

「斥候のふたりも相当なものだぞ。レベルもそうだが、探索範囲が凄いんだ」


 『探索』スキルLv4の効果は、最大で周囲3kmまで拡大可能。さらに対象の形状までわかるという優れもの。ダンジョンなら、その階層まるごと探知できると言っていた。


「竜人の三人、それにウルガンとウルークはどう?」

「彼らはもともとレベルが高かったのでな。我らとは別行動だったが……少なくとも60は超えているはずだ。相当暴れまわっていたよ」


 ドラゴの妻ドリーや子供のドルトとドレスは、魚人のマリアとパーティを組んで15階層に籠っていたようだ。まあこの面子が揃えば、滅茶苦茶やってたことは想像するに容易い。


 一方、ウルガンとウルークは、賢者の杏子と一緒に組んでいた。どうやらこの三人、少数狩りによる経験効率アップを狙っていたらしい。「次々と階層をまたぎ、手当たり次第に魔物を狩っていた」と、杏子本人から直接聞いたので間違いない。

 戦士団のみんなも、「どこからともなく爆発音が聞こえ、その先には必ず杏子殿がいた」と証言している。最初は驚いたが、あまりに毎日続くのでそのうち慣れてしまったそうだ。


 近くで桜たちと談笑している杏子、その顔は自信に満ちた表情をしている。あの雰囲気からしても、納得のいく成長ができたんだろう。あとでステータスを聞くのが楽しみだった。



 ラドたちとの話も一区切りしたところで、食堂にいる全員に声をかける。



「みんな! ちょっと聞いてくれるか。今後の方針について皆に伝えておきたいことがある」


 私がそう叫ぶと、食堂が一気に静まり返る。



「別に切羽詰まった話じゃないからね。そのまま飲み食いしながらで構わないよ」

「――んだよおさ、びっくりさせるじゃねぇか! うっぷっ」

「ちょっとルド爺、あんた飲み過ぎよっ」

「まだ全然酔ってねぇ! んで話ってのは何なんだー?」

「はははっ、爺さん静かにしろー!」

「村長の声が聞こえないぞー」


 周りの人に怒られたり笑われたりしながら、ルドルグがそう尋ねる。


「よぉし、ルドルグは放っておこう! まずは移住者の受け入れについてだ。――みんなも椿から聞いてると思うけど、街の奴隷が全て領主に買われてしまった。だから、移住者は当面増えそうにない」


 だいたいの者が頷いて納得している。


「だからって、村に支障がでるわけじゃないし、焦る必要もないと私は考えている。――ただ、今後の展開次第では、いま任せている仕事以外のことを頼むかもしれん。そこだけ頭にいれといてくれ」


「村長ー、他の仕事って何ですかー?」

「ああ、なにも特別なことじゃないんだ。農業なり採掘なり、そのとき忙しくなりそうなことをしてもらうだけだぞ」

「んん? だったら今と変わらないんじゃありませんか?」

「まあそうだけどさ。いきなりやらされるよりは、先に聞いといたほうが気が楽だろ?」

「ああなるほど。――まあ、おれたちは全然構いませんよー」

 

 そうだそうだ、と周りのみんなも笑顔で答えている。



「ありがとうみんな。それで次にオークへの対処だけどさ。前にやった西の森大捜索で、オークが1匹もいなかったのは知ってると思う。それで今回東を調査して、さらに詳しい事情がわかったんだ」


 そう前置きして、ダンジョン攻略と地上に湧く魔物の因果関係を説明していく。



 村を含めた西の森は、もとは大山脈だった。その影響で今でも大地神の加護に守られ、オークが湧くことも侵入してくることもない。もしかすると、ケーモスの街方面から流れてくることはあるかもだが、結界があれば何も問題ない。

 少なくとも東の森から来ることはない。大昔から、村近くの川を越えてくる魔物はいないことからも、それは証明されている。


 また、ダンジョン15階層を踏破すると、ダンジョン周辺にオークが湧く。同じように、20階層を踏破するとミノタウロス。未確認だが、25階層を踏破すると巨大牛が湧く。


 これらの事実を加味して、東のダンジョン15階層を攻略することに決定。村のみんなにもオークを倒せるだけの力をつけてもらう。もちろん急ぐ必要はない。将来的に全ての村人をレベル30以上にする計画だ。



「――と、概ねこんな感じだ。脅威となるのは魔物だけじゃない。自分で言うのもアレだが、人族や日本人……場合によっては獣人だって敵対するかもしれない。そうなったとき、自分や家族を守れる力をつけてほしい。私からは以上だ」


 私の宣言がおわると、鍛冶師のベアーズが声をかけてきた。


「村長、おれに戦うスキルはない。けどもっと強くなりたいんだ。そういうヤツもダンジョンに入っていいか?」

「もちろんだ。本来の仕事もある程度やってほしいが、仕事仲間と相談してどんどん行ってくれ。その場合、ラドの指示に必ず従ってくれよ」


 ベアーズ以外にも数十名の男女が志願しており、ラドのほうに駆け寄って相談していた。



 宴が再開されてからは、村人たちと楽しい時間を過ごした。結局夜まで宴会が続き、夜も暗くなってからようやくお開きとなる。



 あ、ちなみに冬也たち……明日さっそくボスに挑むそうだ。戦闘狂もここまでくると清々しい。


 「今日帰って来たばっかだぞ?」という言葉を飲み込んで、大盛り上がりのみんなを見守るおっさんだった。





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杏子 Lv58

村人:忠誠95

職業:賢者

ユニークスキル:全属性魔法Lv4<NEW>

念じることで全ての属性魔法を発動できる

異なる属性の魔法を同時に発動できる<NEW>

※レベルにより威力と範囲が向上する


スキル:消費MP減少Lv3<NEW>

魔法使用時のMPが30%減少する

スキル:治癒魔法Lv2<NEW>

対象に接触することで、MPを消費して傷や状態異常を治癒する

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ウルガン Lv63

村人:忠誠94

職業:槍士

スキル:槍術Lv4

槍の扱いに大きく上方補正がかかる

槍で攻撃する際の威力が大きく上昇する

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ウルーク Lv62

村人:忠誠94

職業:剣士

スキル:剣術Lv4

剣の扱いに大きく上方補正がかかる

剣で攻撃する際の威力が大きく上昇する


==============


ドラリアーナ(ドリー) Lv65

村人:忠誠85

職業:闘士

スキル:格闘術Lv4

無手での攻撃に大きな上方補正がかかる

身体能力が大きく向上する

スキル:飛行Lv4

翼による飛行が可能となる


大地神の加護

・竜気の吸収速度が大幅に向上する

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ドラガルト(ドルト) Lv60

村人:忠誠88

職業:闘士

スキル:格闘術Lv4

無手での攻撃に大きな上方補正がかかる

身体能力が向上する

スキル:飛行Lv3

翼による飛行が可能となる


大地神の加護

・竜気の吸収速度が大幅に向上する

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ドラレスティア(ドレス) Lv61

村人:忠誠87

職業:闘士

スキル:格闘術Lv4

無手での攻撃に大きな上方補正がかかる

身体能力が向上する

スキル:飛行Lv3

翼による飛行が可能となる


大地神の加護

・竜気の吸収速度が大幅に向上する

==============


マリンアークリア(マリア) Lv60

村人:忠誠90

職業:魔法使い

スキル 水魔法Lv4

念じることでMPを消費して威力の高い攻撃する。飲用可 形状操作可 温度調整可

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