第26話 オルシュア大陸
ステータスを確認しながら、みんなで順番に見ていった。今回とくに変化があったのは冬也と夏希、それと私だ。
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冬也 Lv7
村人:忠誠78
職業:剣士
スキル:剣術Lv2
剣の扱いに上昇補正がかかる
剣で攻撃する際の威力が上昇する<NEW>
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冬也は剣術スキルがLv2となり、剣で攻撃時の威力が上昇する効果が増えていた。基本レベルの上昇により腕力も上がっているので、既に大猪程度の魔物なら余裕で倒せるそうだ。
「まだまだ強くなるぞ。肉の確保と敵の排除はオレに任せてくれよなっ」
「冬也は村の戦士長だな」
「冬也くん、頼りにしてますね」
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夏希 Lv4
村人:忠誠76
職業:細工師
スキル:細工Lv3
細工や加工に上方補正がかかる
対象:木材、繊維、石材<NEW>
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夏希も細工スキルがLv3に上がり、新たに『石材』の細工や加工にも補正がかかるようになった。大量に作っていた槍や盾のおかげだろう。向上心もあり今後にも期待が持てる。
「夏希は村の貴重な職人だからな。さらなる活躍に期待してるぞ」
「お役に立てるよう頑張ります! 今後もいろいろ作っていきますよー」
今でも十分役に立っているが、この調子なら本当にすごい職人になりそうだと思った。
「さて、次は私なんだが……」
新たに増えた能力をもう一度見返す。
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啓介 Lv4
職業:村長 ナナシ村 ☆☆
ユニークスキル:村Lv5(19/100)
『村長権限』『範囲指定』『追放指定』
『能力模倣』
『
異世界人のステータスが閲覧できる
村ボーナス
☆ 豊かな土壌
☆☆ 万能な倉庫
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ユニークスキルがLv5になって、村人の最大数が2倍の100に増えた。今はまだ一時的にだが、村人も19人に増加していた。
「なんか今回の『閲覧』能力ってのは普通だよな。ステータスを見られるのは確かにありがたいけどさ」
「忠誠度とかスキルが確認できないのは困りますもんね」
「そうだよな。たださ、今までの能力と比べちゃうとな……。どうしても見劣り感が否めない」
今回の『閲覧』能力は、現地人のステータスがPCの画面で見られるようになる、ただそれだけだ。私の落胆を感じ取ったのか、しばらくこの場に何とも言えない空気が漂っていた。
「んー、ちょっと思いついたことがあるんですけど――」
その沈黙を破り、桜がそう言って切り出す。
「例えば、啓介さんがこの世界に来て、最初に遭遇したのが現地人で、その人を村人にしたとします。――その場合も『閲覧』能力が発現して、ユニークスキルのレベルが1つ上昇したんじゃないかと考えられますよね」
あり得る状況だと思い頷いて返した。
「スキルレベル上昇には様々な解放条件があって、それを解放するごとに、特定の能力が付与されるんじゃないでしょうか」
「解放条件ごとに、付与される能力も決まってるわけだな」
「そうなんじゃないかと思いますね」
「ありがとう。今後の参考になるよ」
「いえいえ、お役に立てたようで」
獲得した能力はイマイチだったが、解放条件の指針ができたのは非常に助かる。
「さて、スキル確認はこれくらいにして、ラドたち兎人族のことについてどうするかを話したいと思う」
全員、緊張もなく自然体で聞いている。
「まず、ラドたち兎人族には、この村に移住しないかを打診してみる。もっと詳しく、この村や私たちについて話すつもりだ」
「良いんじゃないか? 兎人族の信用も得られるし、隠し事はないほうが良いもんな」
「そうですね。私も良いと思います」
みんなも賛成のようなので話を進める。
「米の収穫も近いし、芋類は順調に育っている。食料に関しても問題ないと思う」
「魔物から肉も手に入るしね」
「万能倉庫もあるから、保管のことも気にせずに生産できる。あとは家を作れるかだけど……これは兎人族とも相談だな」
そのあとも1時間ほど話し合ったが、全員、兎人族の受け入れには賛成のようだ。全会一致で定住を進める方針となった。
◇◇◇
村人みんなで昼ごはんを食べたあと、私とラドさんはリビングで会話をしていた。ラドさんは、始めて見る家の構造や日本の製品に驚きまくっている。
「いくら使えないとは言え、これほどの魔道具が揃っているとは驚いた」
「電力、こちらで言うと魔石ですか。それがないので置物と化してますけどね」
この世界にも、灯りや風を起す魔道具と言うものがあるそうだ。ただ非常に高価なので、手に入れるのはなかなか大変らしい。
「今日は、この世界のことを聞きたいと思いお招きしました」
「ああ、知っていることなら話そう。それと、呼び方はラドでいい、丁寧な言葉もいらない」
「ん、……そうか。なら普段通り話す事にするよ。私もそのほうがありがたいしな」
「ああ、私も話しやすくて助かるぞ」
「じゃあまず、この世界の歴史とか、人種を含めた成り立ちが知りたい」
「そうだな、私が知っているのは―――」
ラドは自身の知る範囲で、丁寧にこの世界について話してくれた。
この世界は、『太陽の女神と月の女神』の2柱神によって創られたとされている。ただ、直接女神の姿を見た者はいないらしい。
ここは『オルシュア大陸』と呼ばれており、大陸の周囲はすべて海に囲われている。大陸を東と西に隔てる『大山脈』がそびえており、人の足では絶対に踏破不可能だと言っていた。
唯一、大山脈の南にある『大森林』を抜けられれば、東と西の行き来ができる。私たちのいる場所こそがその大森林なのだそうだ。
大山脈の西側には、人族の広大な領土が拡がり、その南端の一部に獣人族の領土があるという。この大森林の西側に隣接している形だ。大山脈の東側は未開の地であり、詳細はほとんどわからない。言い伝えでは、魔族が住んでいるとなっているが……誰もその姿を見たことがない。
「なるほど、大山脈ってのはそんなに険しいのかな?」
「ああ、高くそびえ立つ絶壁が延々と続いている。それが北の果てから大森林までずっとだ」
(以前、村の北を探索したときに見つけた絶壁がそれかな?)
「東と西を渡るのに、大森林を『抜けられれば』ってのはどういう意味かな?」
「この村の東に見える川、あの川から向こうは、魔物の強さが桁違いなんだ。奥へ行くほどそうなるらしい」
「ってことは、この場所も危険なんじゃないか? わざわざ危ない方へ逃げて来たのか?」
「いや、東の魔物は何故だか、こちら側へ川を渡って来ないんだ」
「うん? なんでそうだとわかるんだ?」
東にある川は、いたって普通に見える。何か、目視できない結界的な作用でもあるのだろうか。
「すまんが私も理由はわからない。ただ、過去に幾度も東を調査した結果らしい。少なくともここ100年、侵入してきた形跡はないと伝わっている」
「それは兎人族が調査したのか?」
「いや、獣人族領の戦士団が踏破を試みた結果だ。大森林についての情報は、獣人なら常識程度に知っていることだ」
東でオークを見つけたと報告があったが……川を渡ってこないなら、逆にここは安全なのかもしれない。
「じゃあ次に、獣人の街について教えて欲しい」
「ああ、我らは2か月に一度ぐらいしか街に行かんからな。そこまで詳しくはわからんぞ」
「少しでもわかれば十分だ。それで街の様子からなんだが――」
その後も会話を続け、街の状況や距離なんかもだいたい把握できた。ラドたちは定期的に街へ行き、塩や香辛料、生活用品などを手に入れていたそうだ。集落では布や革の加工品を売り、それで得た通貨で購入していたらしい。
聞きたいことはまだまだあるが、情報を整理してからまた後日と言うことにして、今日のところは話を切り上げた。
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