第3話 まずは戸締り
目の前が真っ白に光ったら、なんと異世界に来ていました。
これだけ聞くと、相当頭が悪そうだが……今まさに、現実として起こってしまったのだ。
これまで数多あまたの異世界小説を読みこんできた。「こういうことも会ったらいいな」と、日々妄想を繰り返した。そのおかげもあってか、かなり冷静でいられている。もし何も知らない人が突然こんなことになったら……さぞパニックになっていただろう。
「よし落ち着け、まずは家中の施錠確認からだ」
危険な魔物や人を襲う生きモノ。もしそんなのが存在するとしたら、施錠なんかしたところで意味はないんだろう。扉ごと破壊されて侵入してくるはずだ。けど、気休め程度にはなる。
「とりあえず、この状況を整理しよう」
家中のドアや窓の施錠、カーテンなんかも閉めながら思考を巡らせていく。
・ここは本当に異世界なのか
・神や女神、管理者的な存在はいるのか
・転移したのは自分だけなのか
・現地人はいるのか、意思疎通できるのか
・危険な魔物や、動物は存在するのか
・水と食料の確保が可能なのか
・水道や家電は利用できるのか
・PCに表示されているステータス
考える順番はさておき、まずはそれぞれの現状を整理してみることに――。
<ここは本当に異世界なのか>
家の外に見える森だが、日本に住んでいる時には、周辺に森なんてなかった。それとモニターに映っているステータス、絶対じゃないが、まあ異世界だとは思う。
<神やら女神やら>
転移前に起こった出来事といえば、強烈な光が発生したこと以外はとくに思い当たらない。
超常の何かと接触した記憶もない。なので現状、この世界に来た目的もわからないし、帰還できるのかも不明だ。
<ほかの転移者の存在>
不明だが十分可能性はある、と同時にこの存在が一番危険と思われる。
日本で見慣れた建物があれば、干渉する者がいて当然だろう。最悪、襲われて奪われる。
<現地人や魔物、水や食糧について>
ある程度、周辺の探索をしなければ何もわからない。まずは、家の備蓄とステータス関連について詳しく調べてからにしよう。
<水道や家電について>
水道電気ガスは使えなかった。必然、電化製品も機能していない。部屋の柱を鍋で思い切り叩いてみたが、柱も鍋にも傷がついていた。残念ながら、破壊不能の家に守られて無双、なんて展開ではないらしい。
水と食糧の備蓄については、節約すればひと月程度は粘れそうで、火を使った調理ができれば、食糧はもう少し持ちそうだった。
<ステータスとスキル>
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啓介 Lv1
職業:村長(村名なし)村
ユニークスキル 村Lv1(0/5)
『村長権限』
村への侵入・居住と追放の許可権限を持つ。※村人を対象に、忠誠度の数値を任意で設定し自動で侵入・追放可能
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モニターに表示されている情報を、上から順に確認していく。
まずは名称欄、なぜなのかわからないが、苗字は省略されて名前のみが表記されている。そして職業欄、『村長』というのが職業なのかは微妙なところだけれど、そこはひとまず置いておこう。
(家ごと転移したから村長なのか、村長だから家も付いてきたのか。神のみぞ知るってやつだな、神がこの世界にいるのか知らんが……)
などと考えつつ、視線を隣の文字に移す。きっと村の名称欄なのだろう。今は(村名なし)となっているけど、名前の入力ができるかもしれない。そう思ってモニターに触れてみた。
「あ……」
表示されている画面が、プツンと音を立てて消えてしまう。
「やっちまった」と一瞬あせるが……。もう一度モニターに触れると再び画面が表示された。記載された内容も、さっきまでと同じものだ。
どうやらモニターに触れることで、ONとOFFができる仕様らしい。異世界ものに良くあるやつで、タッチすることで詳細が見えたり、解説が出てくる機能はついてないようだ。
村の名前はひとまず後回しにして、現在のレベルとスキルに注視してみる。
初期レベルは1。よくある展開なら、魔物を倒したり、修練をすることなんかで上がっていくのかもしれない。正直、生き物を殺すとか不安しかない。人型の魔物とか、場合によっては人間を……果たしてやれるだろうか。
(やらなきゃ自分が死ぬだけか……)
レベルはあるが、『HP』や『力』なんかの項目はない。魔力とか魔法はどうなんだろうか。水魔法なんかが初期からあるとかなり便利なんだが……無いものねだりをしても仕方がない。
ちなみに、体内にある魔力を感じるだとか、魔法はイメージだとか、いろんなゲームの呪文を手当たり次第に詠唱してみたが、何一つとして反応しなかった。魔法関連については、余裕ができてから試行錯誤していこう。
そして最後にこのスキルだ。ユニークとついているくらいだから、通常とは異なる特別な能力だと思う。このスキルの性能次第で、今後の生存率が大きく変わってくるはずだ。
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ユニークスキル 村Lv1(0/5)
『村長権限』
村への侵入・居住と追放の許可権限を持つ。※村人を対象に、忠誠度の数値を任意で設定し自動で侵入・追放可能
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