第22話 家族とは
私はありのままの自分と向き合うことで、自分をちゃんと伝えられるようになった。
自分で考えた夢も出来た。
誰かの言葉に流されず生きる私がいるのだ。
それに気が付かせてくれたのは、周りの家族や主治医、球場の仲間、他にもたくさんだ。もちろん自分の旦那も。
だから、感謝でいっぱいなのだ。
そして、私は今、出ていってしまった母にも感謝をしている。
何故なら一生懸命私を育ててくれたからだ。
正直、出ていってしまった時は自分を責めた。私が母を責めすぎたせいで、母は追い詰められ出ていってしまったのだと苦しんだ。そして、時間が経つと今度は怒りがわいてきた。どうして出ていってしまったのだと、腹が立って母のことを考えるだけでイライラする時もあった。もちろん、母を考え涙もたくさん流した。
なんで私を捨ててしまったのだろうと。
信じていたのにと。
でもその気持ちの裏で自分を責める私がいた。
それは、私が母を愛しているからだった。
今もそうだ。
昔、母は私を上手く育てられなかったかもしれないが、私は感謝をしている。もしかしたら、間違った育て方だっていう人もいるかもしれない、でも母は頑張っていた。
そして、大人になって父と母の離婚についてわかったことがいくつもあった。
父と母の離婚は、様々なことが重なってのことだったのだ。母は、しんどいながらも家事を頑張っていたが、料理は思うように私が小さな頃から作れてはいなかった。父は私が不登校になってから、それに気が付いて食事をちゃんと作るように母に言ったが、母はそれを拒否した。だから、父は自分で作ろうとしたが、母はそのことにプライドが許せずまた拒否をした。父と母の口論が多くなったのはそれだけはないが、お互いの意見が伝わることも、一緒に考えることもなく、価値観が合うことが無かったこともあるようだ。
ちなみに私は小学生の頃、栄養失調だった。私はそれに気が付くことはなく、自分が痩せているのは体質だと思っていた。でも、小学生の頃毎年健康診断で言われたことがあった。
「本当に食べてる?」
私はその言葉になんの疑問も持たず「体質なんです」と答えていた。同級生からも「骨、ガリガリ」なんて言われてバカにされることもあった。そんなことはないとバカにするやつらには腹を立てていた。
でも本当は、私には栄養が足りず、考える力も、何かを頑張る力も無かった。そして無理をしてからだと心に負担がかかっていたのかもしれない。
しかし、それが母のせいかというと違うのだ。仕事に熱心過ぎた父だって悪いかもしれない。家庭のことを考えられなかった父のせいかもしれない。でも、父だって母と同様一生懸命頑張っていた。父も母も悪気はない。
もしかしたら、父と母が昔からもっと対話していればよかった話なのか?でも、そもそも意見が通じ合わず、価値観が違いすぎて本当はやっていける二人ではなかった?それは、ふたりがいっぱいいっぱいになったせい?
いや、親が強制的に価値観が合わないのにお見合い結婚させたから、こうなってしまったなら父と母の親のせい?
それとも、私が、不登校になって、家族を困らせて、酷いことを言ってしまったから……?
私が……わがままだったから……。
いや、違う。
誰も悪くない。
誰かが悪いなんてない。
みんな一生懸命頑張っていたじゃないか。
私だって、母に酷いことを叫んで、自分を責めてしまったけれど、悪気はなかった。母だって悪気はなかったし、きっと自分を自分で責めている。父だって……悪気なんてないんだ。
みんな一生懸命生きすぎて、周りが見えなくなってしまっただけかもしれない。
もっとこうすればよかった、ああすればよかった。そう思うことはない訳ではない。
でも、そう考えたって何も生まれない。
できるのはこれからの未来をどうするかだ。
私はこれまでの経験を今に活かすことだけを考えるようにした。
だって、私は産まれて良かったと思っているから。辛いことばかりだったけれど父と母がいて、私は幸せだった。父と母の子で心から良かった。
自分の家族に答えなんてないし、答えは見つからないままだけれど、私を産んでくれてありがとうとだけは大声で叫んで言える。
答えを探さなくたって、家族は家族なのだ。
私が私と向き合うまで 白咲夢彩 @mia_mia
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