第15話 ここは別世界……かよ!?
エリシュの
二人して満身創痍の状況でどうにか辿り着いた80階層、
王が君臨する最上階、88階に一番近いこの
王に近しい血統の者や、ステータスランクが高い者が居を構え、豊かな生活を楽しみ日々を過ごしているらしい。
したがって、80階層は贅と虚栄に溢れかえっていた。
中心に伸びる
その池を起点として豪奢だけど、意匠がよく汲み取れない———はっきり言ってしまえば意味不明で奇抜なオブジェが林立し、人が住むと思われる建物が放射線状に広がっていた。
「さあ、早く
渡された一枚の白い布。
言われるがままに、それで顔を覆い隠す。途端に甘く優しい香りが鼻腔をくすぐり始めた。
———それにしても、こんな布をどこから……。
「……お、おい。まさかコレ、お前の肌着とかじゃねーよな」
「仕方ないでしょう。今はそれで我慢して」
少々赤面したエリシュはそのまま俺の手を引いて、オブジェの森を足早に縫い歩く。
向かった先は、一際大きな建物の前。
賑やかな看板が中の様子を主張しているところから、デパートのような場所なのだと推測できた。
ゆったりしたスロープを上がって建物内へと入った俺は、その絢爛さに目を白黒させた。
棚に食料が潤沢に並べられ、煌びやかで派手な衣服が飾られている。やや混雑した人々の群れは皆一様に笑顔を浮かべ、この世の春を謳歌していた。
当然この場所には、地を這うような
「なんだよ……なんなんだよここは……? 一階層違うだけで、こうも違うもんなのか?」
「この80階層の
ピラミッドの中に作られたハラムディンという国は、下層では
ただ、それだけではどうにも腑に落ちないことが、一つある。
「なあエリシュ。上層階が安全なのは理解できた。だけどさ、この80階層に辿り着くまで、俺たちは
前を歩くエリシュが足を止める。黒髪を優しく浮かせ振り向くと、真摯な瞳が俺を見た。
「……この
「……なっ! それじゃみすみす
詰め寄る俺から背けたエリシュの顔には、
「理由は簡単よ。まず一つ。この80階層に登ってくる強敵も、最上階を守る戦士たちはそのほとんどがステータスランクAの強者たち。いくら80階層に登ってくる
「……ひでぇ話だな」
「でしょう。私もそう思う。そしてブレイク王子もそのことをとっても嘆いていたの。『我々は民に生かされている』って」
最上階の王城には、その地位に深く腰を落とし、うすら笑いを浮かべながら下を見下ろしている者もいれば、俺の
「だからこの80階層は特別な場所と言ったでしょ? ようやくその本当の意味がわかったようね……」
そう小さく溢したエリシュの顔は憂いの色に満ちていた。
その面持ちだけで、エリシュも心を痛めている一人だと分かり、俺は
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