第217話 1年A組のリベンジ
二試合目は1年A組の貴族チーム『ノーブルアーツ』との戦いになった。
クラス対抗戦のリベンジを狙うリゼルを筆頭に、グーテンブルク坊やとジョストの三人で構成されたチームの機兵編成はデューク三機だ。
デュークは重機兵と呼ばれる種類の機兵で防御力が高いことから、今回はホムだけではなく三人で戦うのが良いだろう。明日の三回戦に向けてアルフェの魔力を温存しておきたいので、僕が無限に湧き上がるエーテルにものを言わせて
とはいえ、防御に優れたデュークの機体特性に合わせて武装も
「ライルくんとジョストくん……、A組でもかなり強いんだね」
「だろうね」
グーテンブルク坊やは、別にリゼルの取り巻きってわけでもなさそうなので、クラス対抗戦のリベンジをかけて本気で選んだチームなのだろう。入学試験の成績順で選ばれたというのは、あながち間違いではなかったようだ。
「レディースエーンド……ジェントルメェエエエエン! 皆様、大っっつつつ変っ! お待たせ致しましたぁあああああっ! これよりぃいいいいいいっ、二回戦第一試合をぉおおおおおっ、開始いたしまぁああああああっすッッ!!!!!」
僕たちのいるAブロックの試合は順調すぎるほど早く進んだのだが、エステアたちのいるBブロックの試合がかなり押したこともあり、二回戦第一試合であるこの試合は、一時間遅れで開始された。
もっとも、今日は二回戦までの予定なので、観客も苛立った様子はなく、最終試合に登場する予定のエステアを一目見ようと、
「まぁずはぁああああっ! 一回戦第一試合で鮮烈なデビューを飾ったぁああああっ! リインフォォオオオオオスゥゥウウウウウウ!!!」
ジョニーの紹介でアルタードを先頭に入場を始めると、観客席からアルタードの名が聞こえて来る。
「アルタード! アルタード!」
「アルタード、がんばれー!」
ホムは戸惑いながらも、僕のアーケシウスを真似て右手を軽く上げて声援に応じている。
「応援してくれる人がいるって、嬉しいね」
「そうだね。これもホムが素晴らしい戦いをしてくれたお陰だよ」
普段のカナルフォード学園とは違い、一般客が入っていることもあり、
あるいは、相手が貴族寮の一年生代表ではあるけれど、負ける可能性を考えて表立って応援するのを控えているのかもしれないな。保身に走った狡いやり方は、いかにもイグニスたちが考えそうなことだ。
「……この試合も必ずマスターとアルフェ様を勝利に導きます」
「僕たちも加勢する。グーテンブルク坊やたちは初戦を見ているはずだ。慎重に行こう」
「心得ました」
「ワタシも戦うからね、ホムちゃん!」
表情は見えないけれど、声を聞く限りホムもアルフェも落ち着いている様子だ。これなら
「そしてぇえええええっ! 堅牢な守りに裏打ちされた、重機兵デュークゥゥウウウウウッ三機編成のぉおおおおおおっ! ノーーーーーブルアァアアアアアーーーーーーツゥゥウウウウウウッ!!!」
「リゼル! リゼル!」
「ライル! ライル!」
リゼルを先頭にグーテンブルク坊やとジョストが入場すると、二人を讃える声が僅かながら観客席から上がる。従者のジョストを讃える声が聞こえないのは、A組の身分による序列がかなり厳しいことを示しているようだ。だが、ジョストはそんなことを気にしてはいない様子で、グーテンブルク坊やに寄り添っている。
多分、あの二人は、主従関係を超えた絆で結ばれているのだろうな。
思えば、グーテンブルク坊やが大きく変わったのは、ジョストの存在が大きかったのかもしれない。この学園にも従者枠ではなく、きちんと受験を受けさせて入学したのだし、ジョストは見事にその期待に応えて見せたのだから。
「さて、防御に特化したデューク三機だ。陣形を崩して一機ずつ突破するのが定石になるだろうね」
「それでは、まずはわたくしが仕掛けます」
「頼んだよ、ホム。アルフェはホムの援護を」
「うん、わかった」
臨機応変に対応出来るように、綿密な作戦を立ててはいないが、これだけで試合の序盤の流れは見えてくる。
「それではぁああああっ! 試合開始ぃいいいいいいいっ!!!」
「ハッ!」
試合開始を告げるジョニーの第一声と同時に、ホムがアルタードの帯電布の放電を開始する。
「プラズマ・バーニアだ、来るぞ!」
噴射口が展開し、メインユニットの魔石灯が眩い橙色に点灯するのとほぼ同時に、リゼルが反応したのがわかった。
「
「はぁああああああっ!」
リゼルに向かって爆発的な加速で突き進んだアルタードの蹴りを、リゼルが大盾で防ぐ。
「お見事」
ホムは微かな笑いの息を漏らすと、左フックで大盾を払った。
「甘いな!」
アルタードの軸足に槍の斬撃が振り下ろされ、ホムはそれを間一髪のところで避ける。だが、その動きを読んでいたように、今度はグーテンブルク坊やがホムの行く手を阻んだ。
「ホム!」
さすがのアルタードもデューク三機に囲まれれば、身動きが取れなくなる。援護しようと咄嗟にアーケシウスのドリルでグーテンブルク坊やのデュークを攻撃するが、槍で簡単に弾かれてしまった。
「なんとぉおおおおおっ! 重機兵デューク、電光石火の先制攻撃にびくともしなぁああああああい! リインフォース、いきなり大ピィイイイイインチ!!!!」
「従機と重機兵じゃ分が悪いだろ、リーフ」
グーテンブルクが深入りするなと言いたげに、槍で牽制してくる。大きさやその重量で大きく劣る僕のアーケシウスは、大破を恐れて後退せざるを得ない。
「ホムちゃん、リーフ! 仕切り直そう!」
鋭く頭の中に響いたのはアルフェの声だ。ホムも同じ声を聞き取ったらしく、アルタードが素早く反応し、機体の頭部を下げたのがわかった。
次の瞬間。
「な、なんだっ!? なにが起きてる!?」
リゼルの機体から驚愕の悲鳴が上がったかと思うと、無数の
「これはぁあああああっ!? レムレス! 魔導杖を構えたレムレスがぁあああああっ、無詠唱でファイアボールの弾幕を起こしているぅぅううううううっ! すさまじい、凄まじい熱と煙だぁあああああああっ!」
実況席のジョニーが白熱した様子で声を張り上げる。
「今のうちに!」
アルフェの誘導で僕とホムがリゼルら三機から離れると同時に、ファイアボールの猛攻が止んだ。
「とんでもない魔法攻撃が飛び出したがぁあああ――、無傷!! さすがは鉄壁の守り!! デューク三機とも無傷だぁああああっ!」
もうもうと立ち込める煙の中、リゼルたちは防御陣形を敷いてどっしりと身構えている。追撃してこなかったのは、こちらの策を恐れてのことだろう。それだけに、かなり統制の取れたチームだという印象を持った。これだけしっかりと統制の取れた重機兵を攻略しようとなると、城塞をひとつ落とせるほどの策を練らなければならないな。
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