第206話 ワタシの日記
---アルフェ視点---
ワタシは寮の部屋に戻ると、机の一番上の引き出しの鍵を開けて、中から日記帳を取りだした。
カナルフォード学園に入る少し前、入学前の買い出しに行った時に見つけた日記帳は、リーフの瞳と同じ龍樹の葉っぱの色。でも、描かれている花は本来の赤い色ではなくて、ワタシの瞳と同じ金色の花だ。
縁起が良いから季節の変わり目にわざとひとつふたつ混ぜているとお店の人は話していたけれど、ワタシにとっては運命の出逢いみたいに思えた。
だから、この日記は、ワタシとリーフのための日記にしたかった。入学してからずっと、リーフに宛ててこの日記を書くのがワタシの習慣になっている。
「今日も、とっても素敵なことがあったね」
話しかけながら日記帳に手を翳すと、リーフが描いてくれた簡易術式がワタシのエーテルに反応して日記の鍵が開かれる。この鍵は、ワタシとリーフのエーテルにだけ反応するようにリーフにお願いしたから。
ワタシはお気に入りのガラスペンを取ると、龍樹の葉の色に良く似たインクに浸して、今日に書くことを頭の中に思い描く。
朝の白い光がキラキラする中で、それよりももっと眩しいキラキラした金色のエーテルを
その日の午後に行われたワタシたちの二機の機兵評価査定が、リーフの想像を超える高得点を得られたこと――。
リーフも大好きなアーケシウスでワタシたちと一緒に戦えることが正式に決まったこと――。
すごくすごく嬉しくて、リーフに抱きついて沢山喜んで沢山笑ったけれど、まだ全部を伝えられたわけじゃない。ワタシのなかにはいつもリーフに伝えたいことがいっぱい溢れていて、どれだけ伝えても伝えきれないから……だから今の想いをペンに乗せて言葉にして綴る。
いつかワタシたちが大人になっても、リーフと一緒に振り返れば、いつだって『今』のことを思い出せるように。この日記とワタシが、リーフとの毎日を、ずっとずっと覚えていられるように。
リーフへ
機兵評価査定、お疲れさま。
リーフがずっと忙しそうで、寮にも帰ってこなくて心配だったけれど、完成を知らせてくれたリーフの笑顔で全部吹き飛んじゃった!
あのね、何度も言ったけれど言い足りないから、ここにも書かせてね。
リーフが私のために造ってくれたレムレス、すごく可愛くて素敵だったよ。
無理を言ってお願いしちゃったエーテル遮断ローブも、リーフがワタシのことを考えてレムレス用にデザインしてくれたのが嬉しくて、
ホムちゃんのアルタードも、とっても素敵だったよ。
リーフがホムちゃんのことを考えて造ってくれたのがよくわかって私まで嬉しくなっちゃった。
リーフが造ってくれたレムレスで、
今ね、リーフにも秘密にしているんだけど、私なりに作戦を考えてるの。
メルア先輩の最大の攻撃は、
その攻撃を上回らないとリーフとホムちゃんと一緒に勝つことができない。
だから、
あともう少しで完成できるから、
だから、だから、きっと一緒に勝とうね。勝ってみんなで笑顔でお祝いしようね。
大好きなリーフへ
アルフェより
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