双子エッセイ

双子は違いを探される

　自分と兄は顔が似ているだけでなく、身長や体重もほぼ一緒。

　小学生の頃何故か一時期だけ、兄の方が自分より2センチほど身長が高くなったことがありましたけど数ヶ月で追い付いて、以来差はほとんど失くなりました。

　しかしここまで似ているとよく言われるのが、「どこで見分ければいいの？」です。

　しかしこれ、自分に聞いても分からないのですよ。何故なら双子本人は、見分ける必要がないからです。

　昔の写真を見ても、どっちがどっちかなんて分かりません。だけどどうにかして、違いを見つけたいと思う人っているのですよね。

　そのせいで専門学校のころ、ある事件が起きました。

　その日は身体測定があって、測定を終えた自分と兄は診断結果の書かれた紙を持って教室に戻ってきたのですが……。

　そしたら横からパシッと、クラスメイトの男子に結果が書かれた紙を強奪されたのです。見れば近くにいた兄も、同じように取られていました。そして。

「双子で違いがあるか調べてみたいんじゃ！」

　と言うわけで兄弟でどこかに差が無いか、徹底比較が始まったわけです。

　自分達のプライバシーはどこにいってしまったのでしょう？

　しかし見比べてみても身長は0.3センチ差。体重は0.5キロ差。

　どれもこれも誤差のレベルです。こんなの違いのうちに入らないと、みんな落胆していました。

　やはり違いなんて無いのか。そう思ったその時。

「あーっ、ここ違う！」

　一人が叫んで、一斉にみんなの注目が集まります。

　しかし自分達に明確な違いなんてあるのか？　そう思っていたら。

「あ、本当だ」

「４センチ違う！」

「弟の方が胸がデカイ！」

　………………は？

　耳を疑いました。

　いや、嘘でしょう。きっと見間違いに決まって……あ、本当だ。

　確かに自分の方に、兄より４センチ大きい数字が記載されていたのです。

　結果を見たクラスの皆は、さっそく自分と兄の胸を見比べられます。

　そっくりな無月兄弟は、胸で見分ければ良いなんて声も聞こえました。しかし。

「「「違いが全くわからん！」」」

　当時季節は冬で厚着していたこともあり、４センチ差があると言っても、それは目に見えて分かる違いではありませんでした。

　と言うわけで結局違いは見つかっても、見分けはつけられなかったわけです。

　それにしても。

「そもそもどうして胸だけ違うんだ？　弟だけ胸筋鍛える運動でもしてるのか？」

　もちろんしていません。どうして胸囲だけ差があったのかは、自分でもわかりませんでした。

　おそらく一生謎のままでしょうね。

　そして違いと言えばもう一つ。

　自分も兄も全く自覚はないのですが、「よく見たら弟の方が少し頭が小さい」と言われる事が割とあります。

　最初は気のせいだろうと思っていたのですが、全く別のタイミングで別々の人から同じことを言われたので、きっとそうなのでしょう。なるほど、自分の方が頭が小さいのか。

　しかしこれ、二人揃ってる時によーく見比べないと分からない程度の違いらしく、一人でいる時の判断材料には使えないみたいです。

　結局ハッキリ分かる違いって、見つけられていないのですよね。

　あ、でも外見はともかく、食の好みでは決定的な違いがあります。

　自分はチーズが苦手なのですが、兄はチーズが大好物なのですよ。他の食の好みはほとんど違いはないのに、どうしてチーズだけはこうも違うのか。謎です。