2022年8月
■ジュネーヴでのインターンから戻ってきたジュリアンから、いろいろ体験を聞いた。いろいろ憧れてしまいそうな世界だ。私も将来そういう世界に入ってみてもいいかもと思ったけど、そういうのは無理だろう。きっと。私の言葉を聞いた彼は、**で働いている日本人の女の人も何人かいたよ、日本語で挨拶してみたよ、ユキも試しにインターンとかやってみたら、と。
■フラットは引き払ってしまったので、私の帰国日までジュリアンの部屋で暮らした。ずっと一緒にいられる。幸せなはずだ。なのに、いまさらのようにあのレイプのフラッシュバックが時々来てしまうようになった。いまでもジュリアンにあのことは打ち明けられていない。とても言えそうもない。打ち明ければ、彼も苦しむだろうし、あるいは私を遠ざけるようになるかもしれない。だから言えない。
ジュリアンとセックスしている時にフラッシュバックしてしまうと、体が硬直してしまう。あの潤いも何故か一気にひいてしまう。乾いてしまうのだ。何回かこういうことがあって、ジュリアンが私の様子に気づいた。どうしたの?なにかあったの?ううん、なにもないよ。だいじょうぶだよ、と返したものの彼は不審げだ。何か隠してるでしょ、と。
■そんなこんなで、なんとなく彼との関係がギクシャクするようになった。でも朝1回、夜3回、たまに昼に数回のセックスは毎日のこと。でも私を抱くときの愛情が薄らいでいくような気がする。性欲解消、もっと言えば精子放出のために私を使っているような。私の思い込みかもしれないけどそんなふうに感じてしまうと、私の方もジュリアンがだんだん遠くなっていくような気がしてくる。英語でのコミュニケーションも砂を噛んでいるような感じ。
でもあのレイプのフラッシュバックさえなければ、私の性欲は正常だ。エクスタシーもあるし、運が良ければ一晩で二度以上。
■留学に来て、英語も少し上達したし、勉強もたくさんした。制作の成果もあった。でも考えたらこの一年弱で一番「進歩」したのはセックス方面かもしれない。イギリスに来る前のセックス経験はコウタ一人だし、基本、ほとんど目を閉じてしていた。彼のペニスだってちゃんとみていなかった。ジュリアンと付き合うようになって自分でも信じられないくらいのことをするようになったし、色々な種類の快楽も知った。体が学習した。
それだけではない。封印していた女の子とのセックスも解放してしまった。アーダとも、浮気的にニコルとも。ロンドンのマッサージも。自分の恋愛対象の性のアイデンティティも揺らいでる。
■ジュリアンとの最後の日、二人でロンドンのホテルにとまった。チェックインしてから、翌朝までずっと抱き合っていた。湧き上がってくる性欲に素直になって、何度も私の方から攻めた。彼の上で自分で腰を振って自分でイッた。彼の反撃でもいった。お互いにそんなふうにしているうちに、朝方になった。
少し眠ってから出発の用意をした。服を着て部屋を出る直前にぎゅっと抱き合った。彼のものが固くなっているのがわかった。あんなに何度もしたのにまだこんなふうになるものなの?最後だからか自分でも驚きのことをしてしまった。彼の前にひざまづいて、彼のズボンの前を開けて口で。立ったままのフェラチオのときどうすれば彼がすぐイクか、もうよく知っている。顔を振って数分間、ジュリアンは私の口の中に射精した。彼をこんなふうにできるのは私だけだろう、と変な満足感があった。多分この時私も濡れてしまっていたと思う。でもそれは考えないことにした。
彼の出したものをそのまま飲み込んで、彼のモノをズボンにしまった。宿を出てパディントンへ。彼とはここでお別れ。日本に遊びにいくよ、とジュリアン。私もまたイギリスに戻るよ、と。変わらず僕は君を愛してるよ、と。でも、なんとなくこれが最後の別れのような気がした。口の中に彼の精子の味が残っている。全然ロマンチックじゃない。
■日本に帰る前に、一週間パリに滞在する予定だ。何人かの友達会う予定。
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