Chapter3

 2022年9月1日。

 23歳、高校2年生。

 2学期の始まり。


 これから初登校!

 主観では初登校になるケド、実際は14回目だとか云々。

 

「コスプレですか?」


 たーちゃんからの視線が痛い。

 警察の人呼ぶよ!

 あ、たーちゃんが警察だった。


「今日からわたしは高校2年生なワケ。これが正装」


 あのあと採寸しにいって、なんとか1週間で間に合った制服。

 神佑大学附属高校の女子制服は、紺色ブレザーと指定の白いワイシャツに千鳥格子柄のプリーツスカート。

 寒かったら指定のベストを着ろって感じらしい。

 市販のカーディガンじゃダメなの?


「大変ですね……頑張ってください」


 引いてる引いてる。

 気持ちはわかるよたーちゃん。

 わたしだってまだ納得いかないケド、創は「行ったらわかるしね」の一点張りだし。


「同情するならメシをくれ」

「じゃ、カツ丼でも」


 その創はわたしよりも早起きしていて、朝から缶やペットボトルを洗いまくっていた。

 だいぶ片付いてきたと思う。

 2人が向かい合って座れるぐらいにはなったし。


「重たいなぁ。あんぱんでいいよ」

「張り込みですか?」

「栗の入ってるヤツがいいな」


 今日はまだ2学期の始業式だから昼までで終わりだけど、明日から弁当だよ弁当。

 創が作ってくれるらしいケド、料理の腕前はわたしとどっこいどっこい。

 テキトーにコンビニで買って行ったらダメかなぁ。

 というか、私立だし食堂とか購買部とかないの?

 着いたら確認してみよう。


「ま! 初日から遅刻はダサいんで! 行ってきまーす」


 学校は実家の近くだけどこの家からは遠いの。

 サボり警察とのんきに立ち話してる場合じゃないの。

 腕時計(してないけど)を見るフリをしてレッツゴー。


「白いタクシーで送りましょうか?」

「いいの?」


 たーちゃんが指差す先。

 パトカーじゃねぇか。


「悪目立ちじゃない?」

「冗談ですよ冗談。いってらっしゃい」


 んもう。

 わたしはたぶん犯罪から最も縁遠いところにいる人種なんで。

 善良な一市民なんで。

 仕事関連ぐらいでしか、たーちゃんにお世話になるコトはないでしょう。

 もちろんパトカーに乗せられるなんてそんなまさか。


「いつもお勤めご苦労様だね」


 たーちゃんとお話ししてたら創が追いついちゃった。

 2人並んで登校するのは恥ずかしいからって先に出たのにこれじゃあ意味ないの。


 男子の制服はスカートが同じ柄のスラックスに変わったダケ。

 本の中の学校なんだから派手な色と柄でもいいんじゃないの?

 作者の趣味なの?


「宮城さん、姫の護衛をよろしくお願いします」

「かしこまり」


 姫って誰?

 わたし?

 やだなあもう。


「ちなっちゃん、元気に家出て行ったけど学校どこにあるかわかっているのかね?」

「そんなもんスマホで調べるし」


 現代科学をバカにするんじゃあない。

 調べればちょちょいのちょい。

 第四の壁とやらにはそういう技術なかったの?


「ぼくの後ろをついていけばわかるけどね」


 ならそうするわ。


 マスクしとこマスク。

 地元の知り合いに見つかったら気まずいし。


 えーっと、なになに。

 神佑大学附属高校っと。


 これ、わたしの実家の近くじゃないの。

 やってんな。

 こんなでかい学校あったの知らなかったケド。

 ここ数年でできたのカモ。


 というか、わたしの顔見知りがその辺をうろうろしている可能性大じゃない?

 事情があるとはいえ、噂されたらめんどくさい。

 いちいち説明してもいられないし。

 説明したところで理解してもらえるかわからないし。


 自分自身が納得できていないものを理解させるのって難しくない?





【朝の挨拶で親密度を上げよう】

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