第7話


 昼食は食べなくてもいいのか?

 もう2時じゃん。

 ちょうどランチの忙しい時間が過ぎて落ち着いたところだ。


 オーサカ駅、見ての通り何もない……あ、マックがある。

 関西だからマクドって言わないと怒られるか。

 マクドのポテト食べよう?


「ぼくはバケーションで来たのではない」


 休暇で来たならマクドは行かないよ普通。

 よっぽど海外で現地の食べ物が不安なときぐらいなもんだ。

 海外には行ったことないけど、なんかそう、本で読んだから。


 わかった。

 オーサカの中心部へ行ってたこ焼きを食べよう。

 本場のたこ焼き!

 通行人捕まえて美味しいところ教えてもらおう。


(同じことを二度も言わせないでくれたまえ)


 はしゃぎました。

 すいません。


 おれが厳しい……。


 お前だって初めての遠出だろう?

 もっとはしゃいだらどうだ。

 真面目すぎると疲れない?


(作倉部長の話では、『キャサリンというお名前の金髪八頭身美女』が出迎えてくれるとのことだった)


 無視か。

 いいだろう。

 お前がそのつもりならこっちはこっちで好きなようにやらせてもらおうかな。


「あんたがささはらじゃ?」

「鎧戸導。能力は【変装】……お前が最初に声をかけてくることは知っていた」


 もう1人のぼくが前面に出て、ぼくを待ち構えていたオーサカ支部所属の小学6年生・鎧戸導に対応する。

 初対面の相手に名前を言い当てられた導は「なんじゃと!?」と大袈裟に驚いた。

 資料によれば『外套をかぶることで身長や年齢などの他者から見たときのステイタスを変更できる能力』とある。

 能力を発動していないとこの状態か。


「次に来るのは天平芦花さんか。霜降先輩と同期で、ヒーロー研究課の風車総平の婚約者」


 名前を呼ばれて柱の影から女性が現れた。

 ソバージュのかかった黒髪、胸元にビッグなリボンをつけたサマーニット、トラ柄のミニスカートにローファーと非常にキテレツな服装をしているが「気色悪いにーさんが来たもんやな。まるっとお見通しやんか」とまともなことをおっしゃる。

 能力は【転送】で、これは『触れたドアと目的地に近い場所にあるドアとをつなげる』という移動系のものである。


「おれにも未来がわかるんでね」


 ぼくの顔で堂々と宣言しないでほしい。

 ぼくには未来はわからない。

 導と天平先輩はヒソヒソと「何なんじゃコイツ」「作倉さんから聞いてたんとちゃうな」と会話している。


「さっさとオーサカ支部で挨拶を済ませておれは食い倒れツアーを決行する」


 なんだなんだおれ。

 勝手に決めんな、って?

 おれは腹が減ったんだ。

 お前は減っていないのかもしれないがそれはおかしいぞ。

 そういう“トレーニング”か何かのつもりか?

 人間が活動していくにあたってエネルギーの補給は大事だぞ。

 美味しいものを食べれば人間は心が豊かになる。


「失礼致しました。天平先輩、オーサカ支部までの案内を頼みます」

「お、おう。ええけど。元からそのつもりやったし」

「ありがとうございます」





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