第6話


 2021年9月1日。

 東京駅。


 ついにこの日が来てしまった。

 篠原幸雄がオーサカ支部へと向かう日だ。


(たった1人のガールを見つけられないままトゥデイを迎えてしまった)


 ほんとだよ。

 今この時もおれたちを見張っているはずなんだよな。


 白菊つくも。

 99番目の白菊美華の劣化コピー。

 この世界を正しく進めるために、おれみたいなやばそうな奴を監視し続ける役割を持つ。


 かくれんぼ得意かよ。


(オーサカか……)


 手元のチケットを確認する。

 何度見てもトウキョー駅発オーサカ駅行きだ。

 新大阪駅ではない。


 こうなったら仕方ない。

 切り替えていこう。

 おれの【疾走】を使いこなせればオーサカから瞬時に移動して作倉さんの死を食い止められる。

 その日が来るまでオーサカでやり過ごそうじゃないか。

 行ってみたら案外悪くないかもしれないしさ。


 キャサリンとの対面が楽しみだ。

 金髪碧眼の高身長美……女?

 美女だ。

 美女ではあるなうんうん。

 そうだとも。


(オーケー、オーサカ支部の名簿を読み直そうか)


 まだ搭乗まで時間もあるからな。

 どこかカフェにでも入って時間を潰そう。


 どんなにギリギリでも【疾走】で間に合うんだから家にいればよかったものを。

 真面目だなあ、おれ。


「お前1人が暴れたところで未来は変わらないが」


 おれの行く手を阻む少年。

 顔の幼さとは不釣り合いなスーツ姿の、おれがおそらくこの世界で最も出会いたくなかった能力者。

 組織内最強の【創造】の能力者で、この世界の創造主だ。

 ナーフしろ。

 なんで【疾走】がわかりやすく下方修正されてんのに【創造】はそのままなんだよ。

 おかしいおかしい。

 理不尽だ。


 作者介入型の二次創作かよ。


 ああ。

 もしかして見送りに来てくれたのかな?

 オーサカへのチケットをちぎり捨てるかもしれないしな。

 おれならやるが、ぼくはやらないだろ。

 どんだけ信用ないんだよ。


「何の話でしょう?」


 おい。

 ぼく。

 おれとクリスさんとには因縁はあるが、お前とクリスさんとはただの上司と部下だぞ。

 露骨に威嚇するな。

 あくまで通常運転で行け。


「モブごときに何ができるんだ?」


 この顔で脇役なわけがあるか!


 ぼく!

 外見批判されてんぞ!

 言い返せ!


「このビューティフルなぼくが主人公ではないのだとしたら、いったいどこの誰がこのクロニクルをリードするのですか?」


 いいぞ!

 普段からそう思っていなければスラスラとは出てこないようなセリフだ!


「お前の役割は“ヒーロー”だ。その自信でこの“小さな世界”を救えるものなら救ってみせるんだ」




【Acceptance】

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