幕間 一
『
あなたの望みは現実的ではありません――.
こんな事を続けても無駄だということは、自分自身が一番理解しているはずです――.』
「……貴方は黙って、私のサポートだけをこなしていればいいわ」
長い黒髪をなびかせながら空を駆け、次なる『獲物』を求めてさらに加速する……黒に紫で彩られた、『魔法少女』らしい派手な装飾もなく、飾り気もなくスッキリとした印象の彼女は――その彼女の後を追う、鋼鉄の球体と話している。
魔法少女一人につき、一体。必ず付いている、サポート役の『精霊』――サポポン。この鋼鉄の身体からは、あまり精霊という雰囲気は感じられない気もする。
……『話している』とは言っても、サポポンと呼ばれる鋼鉄の球体からの機械的な言葉を一方的に、バッサリと断ち切る、とても会話のキャッチボールが成立しているとは言いがたい状態ではあるのだが。
『こちらとしても動いて頂けるのはありがたいですが、これほどのペースで戦い続けていては体を壊すでしょう――.
魔法少女の損失はこちらとしても困ります故――.』
「……私だって、チマチマと数十万と雑魚を潰し続けるつもりはないわ。私にだって考えがある」
『では、あなたは一体何をお考えで――.』
そんな機械的な問いを無視して、彼女は――
「……貴方は黙ってサポートだけしていれば良い。いつも言っているでしょう?」
『何故無駄だと分かっていて続けるのか――.
分からない――.
解からない――.
判からない――.』
まるで壊れたAIのように――機械的に言葉を繰り返す鋼鉄の球体、サポポンは、高性能なCPUやメモリでも積んでいるのか。はたまた本当に『知能』を持っているのか。『精霊』とかいう、オカルト染みた存在だったりするのか。
……どれにせよ、並の機械や人工知能なんかよりも一歩も二歩も先へ進んでいる『サポポン』という存在でさえ、彼女の行動に対して理解に苦しむ。
対して、この声、言葉共に機械的ではあるが――人間であり、魔法少女である彼女は――
「そうね。少なくとも、機械的に魔法少女のサポートをしているだけの貴方如きでは理解できないと思うわよ」
冷徹に、冷酷に。彼女は、言葉という名の鋭い槍で突き刺すかのように。鋼鉄の球体、サポポンへと向けて、その冷たい言葉を吐き捨てた。
その言葉の槍を突き刺された鋼鉄のサポポンは――これ以上、機械的な問いかけも諦めて、再び『サポポン』としての仕事を全うする。
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