25.1話
「そっか。うん、そうだね。ゆっくりゆっくり。……ところで、ロロの方はどうだった?」
「グランマの人から色々教わって面白かったです。人を斬り、縫い合わせるのは楽しいですね。うまくできると褒められ感謝されるのも面白いです。それと、……意外に人を美味しそうなどとは思わないものですね」
「よかった、楽しめたみたいだね。そういえば、僕もそんな風に思ったことほとんどなかった。一応知り合いというか仲間というか、そういう対象だからかな? 調理されてない食材だからかもしれないけれど。ほら、牛さんを見ても美味しそうって思わないし」
「……カナ姉様。そこは仲間だからという方がロマンチックではないでしょうか?」
カナが人の形をした生き物を食べるときは戦いの時のみである。
その場合は調理するわけにもいかないので“マカ”を用いて食べることになるのだが、そうすると味を感じることはできないのだ。
戦闘中にかじったとしても、結局のところ調理した肉の方が美味しいので、そういう意味でも人自体は美味しそうという対象とはならないのかもしれない。
コンコン、と。
くつろぎを堪能しているところに、ドアを叩く音がした。
そのままドアが開き、シードワーフの少女が姿をみせる。
「カナ、ちょっといいか?」
「おや、マイではないですか。何か御用でしょうか?」
部屋に入るでもなく、マイが外から声をかけた。
はじめてみる普段着姿のマイは、いつもの重武装を着ていないから一回り小さくなったかのようだ。
「うん。ごろごろしてるところ済まないなー。ちょっと来てくれるか? みんなが聞きたいことがあるんだとさ。私は別に気にならないのだが」
「いいですよー」
「カナ姉様が行かれるなら私も参りましょう」
気楽に承諾したカナに続き、ロロも寝転がっていた身体を起こしてその後ろに立つ。
先導されるままにマイの少し後ろをついていき、少しすると城門が見えてきた。
カナも知らなかったが、傭兵団は城ではなく野営地で寝泊りをするようだ。
というのも、リボーヌ城はそう大きな城ではない。
元々いた兵や使用人らに加えて、300人近くの傭兵が満足に寝れる場所を用意するのは難しいのである。
カナたちが豪華な寝室をあてがわれたのは聖女としての賓客待遇というわけだ。
他にもオーリエールなどは報酬の話や今後の相談もあり、今日は城に滞在することになる。
「聞きたいことってなんでしょうね。おすすめの本とかでしょうか」
「うちの団だと、本を読んでる奴の方が少ないなー」
カナが思いついたことを口にしたが、マイは笑いながら否定する。
確かに、戦争と旅が仕事の傭兵団で読書が流行ることは考えにくい。
カナも頷かざるを得なかった。
「ふーむ、ではでは。好きな食べ物とかかもしれません?」
「私は豚肉がちょっと……、臭いものが多くて。一度だけ食べたエビやイカというのも嫌いですね」
「ああー、親戚の人がもってきたね。不味かったけど」
再び、カナが雑な思いつきを口にして、それに答えたのはロロであった。
答えたのは好きな食べ物ではなかったが。
「なんで嫌いな食べ物の話になった? あとそれ、多分鮮度が悪かっただけだぞ。カナたちのとこ、山だし」
「そういうものですか」
『そうじゃ。魚介類は鮮度が大事なのじゃ。ほんとは美味しいからのう』
そこへクローゲンが頭の中から割り込み、しみじみと懐かしむようにひとり頷く。
「そういうものですか」
「なんで二度言った?」
それに対する返事をつい、カナはそのまま口に出してしまい、マイから軽くつっこまれることになった。
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