第21話 戦いの結末

 幾度も投げられては舞い戻るジョルジュ将軍であったが、高く空に放り投げられたところでカナに声をかけた。


「そろそろ決着と行こうではないか、聖女殿!」

「奇遇ですね、僕もそのように考えておりました」


 高らかに吼えるその宣言を、カナはにこりとして受け入れる。


 地べたに転がるマルキアスからみれば、この戦いはカナが不利であると考えていた。

 一見どちらも余裕であるかのような者同士だが、一瞬のミスも許されないのはカナの方であると。


 ジョルジュ将軍は動きの激しさからみて体力の消耗こそあるだろうが、カナに投げられてはいてもまったくダメージは負っていない。

 カナは最小限の動きで消耗は少なく、もちろん傷一つ負っていないのだが、ジョルジュ将軍と違うのは圧倒的なリスクの高さだ。


 カナの優位は極めて精密にして繊細な技術によって成り立っている。

 少しでもミスをすればジョルジュ将軍のランスがその身体に突き刺さってしまうだろう。

 一方で、ジョルジュ将軍がミスをしてもせいぜいどこかに叩きつけられる程度だが、そのぐらいで倒せる相手でないことは明白だ。


 着地ならぬ着木。

 足場となった大木が衝撃で揺れる。

 と同時に、ジョルジュ将軍が足場を強く踏みしめ、カナの元へと跳躍した。


 幾度にも渡る木を足場にしての自分自身の反動射出。


「ぬぅッ、オゥレ!」


 同じように飛び、同じようにランスを構え、勢いよく飛び掛かるジョルジュ将軍。

 一見、これまでと何も変わらない動き。

 しかし、半分までの距離に来たところでその動きに変化が起きる。


 空中を水平に飛びながら、――回ったのだ。


 豪速で飛び来るジョルジュ将軍は、その身体に捻りを加えて強烈な回転とともに空を駆ける。

 これまでを凌駕する驚愕の速さ、動き、軌道。


「回転を加え、軌道を……」


 正面に立つカナであったが、相手の動きの変化によって予測していた動きはぶれて――。


「これぞ我が必殺のォ! シャアァァルジュ! ロタシオン!」


 闘気の雄たけびと共に、捻じり回るジョルジュ将軍がカナの左側面から襲い掛かった。

 いままでのような直線状の一撃とは異なり、回転力と軌道の変化によってタイミングを外されたカナ。

 これでは同じように投げようと思っても、極めて困難な難度となるだろう。


 もっとも――。


「――しからば」


 もっとも、カナがこれまでと同じように相手を投げようとすれば、だが。

 構えを変え、槍術のように腰を落とすカナ。

 いままでと異なる動き、異なる技。


 ――しかし、その意図も崩される。


 ――そこへ介入する異物の姿。

 ――これまで傍観に徹していたふたりの聖騎士だ。


 聖騎士らは剣を振りかぶりカナの両側面より襲い掛かる。

 密かに静音の術を使い、気配を消しての奇襲であった。

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