第9話 再出発

 翌日、私は連合国本部に調査の真相をしるした報告書を郵送した後、バー夜汽車へと向かった。

 ことの真相を信じるかどうか本部しだいだ。

 一応、事件は解決したのだ。

 晴れて学は自由の身となるはずだ。


 バーにはあの麗しのマダムが立っていた。

 そのカウンター越しに学はあの甘すぎるコーヒーを飲んでいる。

「良い紅茶が手に入ったのよ。白州正子様にお分けいただいたの」

 マダムは私のために紅茶をいれてくれた。

 まったくこの人が男性とは本当に信じがたい。

「やあ、アン」

 学は紫の瞳で私を見る。

「事件のあらましは本部に伝えたわよ」

 私は彼に言う。

「これであなたは自由の身になれるはずよ」

 私は彼のアメジストの瞳を見る。

「で、これからどうするの?」

 私は訊いた。

 彼はこれから自由だ。

 これからのことを決めるのは彼自身だ。

 できれば……。

「アン、これからは君を守ることにするよ。君はまたあのような奇妙な事件に首をつっこむのだろう。そんなあぶなかっしい君には護衛が必要だ。それも腕ききのね。僕は生きる目的を君にするよ」

 学はずれるサングラスを戻しながら言った。

「サンキュー マナブ」

 私は彼の固い手を握り言った。

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鬼が啼く刻 解放の条件は悪魔を倒すこと 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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