トゥルーエンド ~幼馴染に振られたら、モテ期が始まりました

Q

一章

第1話 寝取られて追放

 今は秋、修学旅行シーズン真っ只中。

うちの学校もご多分に漏れず、新幹線に乗って修学旅行先へ来ていた。


「優斗、このグループから出て行ってくれ!」

「な、何だと!」


グループ別行動になって周りに誰もいなくなると、突然、リーダーの箕輪将太みのわりくが言い放った。


彼は高校に入ってからの友人で、サッカー部ではキャプテンをしているモテ男だ。

そんな彼は修学旅行のグループ決めで、俺のグループに強引に加わった挙句、自分の人気と部活での立場を盾にリーダーに収まった侵略者インベーダーだ。


「俺は唯奈と二人でこの時間を楽しみたいんだよ。てか、お前は邪魔」

「だったら、グループ活動の課題はどうなる!」


追放といわれて居座るほど俺の心は強くない。

だが、グループごとに割り当てられた課題があって、名所を回りながら調べていかなければならないものだった。


「お前もガキじゃないんだし、何とかしろよ。まあ先生には、方向性の違いでお前が勝手にグループから飛び出しましたって伝えて置くからよ!」


困った事にこの男、先生からの受けも良い。

俺と、箕輪が違うことを言ったら、先生はよく考えもせずに箕輪の意見を優先するだろう。

だが、こいつの言うことが通たら、俺は悪者だ。


だから、食い下がったのだが……


「何だよそれ! 唯奈、お前はそれで良いのかよ!」

「ごめんなさい、優斗。わたし、先月から将太と付き合っているの……」


箕輪の後に隠れた黒髪ツインテール美少女が言った。

彼女は西田唯奈。

俺とは幼馴染で、小さい頃に結婚の約束を交わし中学から正式に付き合っていた。


しかも修学旅行のグループ決めでは、真っ先に俺の元へやって来た。

だから、箕輪が唯奈と二人の時間を楽しみたいたいと言っも、俺はそれを戯言と断じて信じなかった。


「嘘だろう?」


情けない言葉とともに一歩二歩と唯奈へ近づいた。

だが、彼女のもとへはたどり着けなかった。

箕輪が立ち塞がり胸ぐらを掴んで俺の行動を押し止めたからだ。


「おっと、そこまでだ。これまでのことはともかく、今、唯奈は俺と付き合っているんだ。いつまでも彼氏面しないで貰おう!」


そして力任せに引き寄せると、俺だけに聞こえる声で言ったのだ。


「ご馳走さま。美味しかったよ」


その一言で全てを理解した。

結婚するまでお互い綺麗な身体でいようと約束を交わしたのに、唯奈はそれをあっさり破ったのだ。


「本当か、唯奈!」


しかし、箕輪の声は彼女には届いておらず唯奈は俺の声に怯えるばかり。

どうして、こうなった。


そもそも、いつから付き合っていたんだよ。

唯奈も箕輪も、そんな素振りすら見せなかった。


混乱する頭を抱え、言葉を詰まらせる俺に、


「もう良いだろう? こっちはこっちでやるから。お前も好きにすれば良い。行こうぜ、唯奈!」

「う、うん…… 優斗ごめんね」


二人から絶縁とも取れる台詞が投げかけられ、同時に掴まれていた襟首が解放された。


「くそっ……」


その場で動けないでいる俺を残し、二人は去っていった。

その時、ムカつくことに奴らの手は恋人繋ぎになっていた。


食いしばった奥歯が、ギシギシと音を立てる。


ラノベでは、パーティ追放物を好んで読んでいたが、まさか自分がリアルで追放されるとは思わなかった。

実際、自分がなってみると、なかなか来るものがある。


(もう二度と異世界追放物なんて読むもんか……)


俺は悔し涙に歪む視界の中、立ち去る二人の後姿を見送ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る