無敵な彼女はプレゼントのためにバイトする

夏川冬道

無敵な彼女はプレゼントのためにバイトする

突然の話だが楠木葉名は弟がいる。名前は楠木陽太。育ち下がりの小学3年生である。当然、葉名が伝説の千年妖狐、葛葉姫の転生体であることを知るはずもない。

 その陽太がクリスマスプレゼントに何が欲しいのかそれとなく聞いてみることにした。すると陽太はマインボックスが欲しいとのことであった。マインボックスは根強い人気の誇るサンドボックス系のゲームで陽太は友達の家で見たゲームを見て自分も欲しくなったのだ。マインボックスはAMAZONEでポチる方向にして、そのための資金を稼ぐために家庭科クラブをしばらくお休みし(家庭科クラブは古河遊聖と楠木葉名の二人しかいないのだ)頼れる先輩?の一番ヶ瀬環からアルバイト先を紹介してもらうことになった。まぁそうは言ってもバイト先は環の実家である喫茶店、キトゥンカフェのウエイターであったがクリスマスシーズンなのでバイト料は弾ませるとのことだった。


 一方、困ったことになったのは古河遊聖である、つい先日の藤原千方と第三種接近遭遇に関して、祖父である古河家当主、古河泰道からお呼び出しがかかり、藤原千方に負けないように修行して鍛えなおしてこいとの命を受け平日は葉名の警護をし、金曜の夜に古河家本家に戻り、休日は修行の日々を当面送ることになったのだ。休日の警護は式神の篝が務めることになったので問題はなかったが、それを聞かされた遊聖は情けない悲鳴を上げた。

「藤原千方に後れを取ってしまったことでウチの爺様が大ハッスルして手ずから古河家流の退魔術をたたきこむそうだ……年寄りの冷や水だからいい加減やめてほしいぜ」

 これは式神少女、篝に思わず漏らした本音であった。しかしその言葉を言った直後、どこからともなく遊聖の頭上をケロリンだらいが強襲した。遊聖は地獄耳かと思った。


そんなこんなで、遊聖が不在の中、環と葉名はキトゥンカフェでバイトに精を出していた。

今は、ちょっとした空き時間、カフェの休憩スペースで一休みをしていた。

「葉名ちゃん、カフェキトゥンのウエイトレスにバイトを手伝ってくれて本当にありがとね~……ウチのお姉ちゃん、クリスマスの準備に忙しくて中々手伝えなくて困ってたんだ~」

「そんなことはないよ、ただ私は弟のためにマインボックスが欲しかっただけで、自分のわがままに付き合ってくれてごめんね」

「いや、別に気にしなくてもいいよ~。困ったときはお互い様だから~」

 そう言って環は葉名が差し入れした缶入りクッキーを食べた。葉名も環に同調して崛起を食した。口中にクッキーの素朴な甘さが広がる。

「葉名ちゃん、この高級缶入りクッキー、とても美味しいよ~! やっぱり缶入りクッキーだからか市販のクッキーと一段上の美味しさを感じるよ~」

「そうかな、ジャヌコのセール品だから、意外と安かったんだけど、一番ヶ瀬先輩が喜んでくれてとても嬉しいな」

 二人は和やかに談笑した。


そしてその様子を密かに千里眼で監視していた、式神少女、篝は全身を激しく震わせていた!

「缶入りクッキー……! とても美味しそうです! 私も食べたいです!」

 缶入りクッキーなど古河家の本邸でもめったに出ない未知のお菓子! それはどんな美味しさがするのだろうか! 篝は遊聖が帰ってきたら缶入りクッキーをねだろうと思った。

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