『モテる』スキルで異世界最高〜物を『持てる』だけのクズスキルのはずが、実は物に『モテる』スキルらしく美少女に囲まれて暮らしています〜

耳折

第1話

 モテたかった。


俺がそう口に出したのは死ぬ間際だった。


 学生時代はゲームが趣味、誰かと付き合う何で二次元以外では考えられなかった。


 いや、そう思わなければやっていけない程に俺はモテなかったし、いじめられていた。


 現実世界では誰も助けてはくれない。

 社会人になっても、それは変わらなかった。


 成果は上司の評価、失敗は平社員の俺の責任。


 そして極めつきは付き合いだと仕方なく行った飲み会終わり、笑いながら川で泳げと言われたことだ。


 酒に弱く泥酔状態の俺が半ば無理矢理川で泳げばどうなるかは明白だった。


 ……モテたかった。


 ただの一度でいい、誰かに好きだと、そう言われたかった。


 それが、俺の最後の願いだ。



◇ ◇ ◇



「ショウ!何をぼうっとしているんだ!」


 あれ、ここは……


「もうすぐスキル覚醒の儀式だぞ、我がホルドア家の恥とならない様、しっかりするのだ」


 そうか……俺は死んで異世界に転生したんだ。

 そこで貴族のホルドア家の三男になり、そして今はスキル覚醒の日。


「わかっていると思うが、スキルによっては今後の貴様の処遇を考えねばならない。まぁ、我が息子であればクズスキルなんて事はないだろうがな」


「……はい」


 嫌だな、この感覚。

 前世でもあった上司に、いや権力を持つ者に逆らえない感覚。


 少し混乱しつつも、どうやら俺はこの世界でも根本は変わってないらしい。


「さぁ、その聖杯の聖水を飲み干せ」


 俺は言われるがまま金色の杯の水を飲み干す。

 味は無いはずが緊張のせいで口が切れているせいか血の味がする。


「……どうだ?何か変わったことがあるはずだが」


 スキルはすぐに現れる。


 この世界に魔法は無く、スキルがそれの代わりだ。

 炎スキルであれば手から炎が、召喚士なら魔獣を召喚する。


 でも、俺は……


「何故聖杯を持ったまま動かない!?何をしているのだ!!」


 俺だって聖杯を手から離したかったが、何故かから離せなかった。


「おい鑑定士!今すぐにスキルを調べろ!」


 鑑定士のスキルを持つ男が俺に触れると、すぐに判明したらしく父上に耳打ちする。


「なん……だと……」


「あの、父上、俺のスキルは……」


「黙れ!!この、出来損ないが!!貴様のような、持ちのクズは2度と私の前に顔を見せるな!」



 ……え?

 

 それは……スキルなのか?


 前世の記憶で混乱してる中、それでも俺は理解した。


 これ、追放されたよな……



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【あとがき】

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