結婚式 前

「私もこの部屋にいて良いのですか……?」

「勿論だ。お前は我が弟子も同然だろう。ならば、ここにいることにおかしな点などないはずだ」

「ええ、レイラ。貴女も──」


 騎士団長の結婚式。それは良い。実に喜ばしいことだとニールは思う。これが当人たちの望まぬ結婚であればいざ知らず、当人たちが望んで結婚するのだから祝福する以外の選択肢はあり得ない。推しカプであるというのも大きいだろうが。


(しかし、それはそれとして)


 チラリ、とニールは騎士団長と談笑をしているソフィアを見た。騎士団長にとって、初めてできたと言っても過言ではない友人。時は短いが、しかし二人の紡いだ絆は本物である。この二人の関係も、ニールは好ましく思っていた。


(何故、これほどまでに世の中は残酷なのですか)


 だからこそ、先日の一件を思い出したニールの表情が曇る。


(ジル王には、既に婚約者がいたなど……)


 騎士団長は友人であるソフィアの恋を応援している。それは騎士団全員の共通の見解であり、であればこそソフィアとジルのカップリングを推すのは必然と言えた。かくいうニールもその一人であり、ソフィアとジルの組み合わせを見る度に自然と「良い……」と背景に徹している。


 騎士団長と救国の英雄。騎士団長とソフィア。ソフィアとジル。救国の英雄とジル。これらの関係は、全て綺麗に収まっていた。全てが幸せになるマリアージュ。奇跡という言葉ですら生温い絶対領域。もはや"神"という他ないカップリングの重奏であり、エクエス王国の歴史に名を刻むに違いないと確信できたほど。泥沼にハマることなどあり得ない。騎士団長と救国の英雄が結ばれればソフィアとジルは喜ぶし、逆も然り。険悪な関係が一切存在せず、故に痴情の縺れなどあり得ないというまさに完全なる関係だった。


(なんたる、悲劇か……ッ!)


 だが、違った。この世界は、それほど上手くいくようにできていなかったのだ。所詮は絵に描いた餅。当たり前といえば当たり前だが、しかし慟哭せざるを得ない。


(こんな、こんなことがあって良いのですか……!?)


 ジルには既に、婚約者がいた。解釈違いも良いところであり──それ以上に、ソフィアが不憫で仕方がない。それを応援している騎士団長にとっても、悲劇的すぎる事実。


(……まさに、終末論)


 自分では、どうしようもない。


「ニール?」

「少し、外の空気を吸ってきます」


 顔を俯けながら、ニールは部屋を後にする。後にして、ニールはこちら側に歩いてくる人物──ローランドの姿を目に留めた。


「……ローランド殿」

「ニールさんか。レイラが世話になっている」

「いえ。私も、学ぶことが多いですから」


 無表情のまま頭を下げるローランドに対して、微笑みを浮かべる──が、こちらの内心の異常はお見通しだったらしい。


「どうかしたのか?」

「……実は、世界が終わる瞬間を知ってしまいまして」

「──なんだって?」


 ローランドの表情が、真剣な面持ちに変化する。それを見て、ニールは納得したように内心で頷いた。


(……ああ。ローランド殿も、察したのですね)


 彼はレイラと付き合っている。であれば、ニールの内心の全てを察するのは必然だろう。


「それは、本当なのか?」

「本当です。ですが、私が嘘を吐いていると思うのであればそれも貴方の選択でしょう。私はそれを、否定しません」

「……いや、吐いていない」

「……強いですね、ローランド殿は。私はこれを知った時、激しく動揺しましたよ。現実であることを、認めたくありませんでした」

「動揺したところで何も始まらない。終末が訪れるなら、逃げたところで無意味だ。何より、やることは変わらないからな」

「……やることは変わらない、ですか」

「ああ。俺たちがやるべきことは、世界の終末を回避することなんだから」


 終末を回避する。そんなことが、本当に可能なのだろうか。


(いえ、無理でしょう……。こればっかりは)


 世界は終わる。間違いなく世界は終わるのだ。ジルがソフィアと恋仲として結ばれない以上、ニールの中には絶望しかない。


「無理ですよ。世界は終わります。私は……無力だ」

「何故、そう言い切れる」

「あまりにも、強大にすぎるからですよ」

「強大にすぎる? 貴方は……何を知ったんだ?」

「断片にすぎませんよ、私が見たものは。しかし……あの少女は」

「少女……? 『世界の終末』の犯人は少女なのか?」

「犯人とは言い得て妙ですね。……ええ、その通りです。こればかりは騎士団長はおろか、ソフィア殿でもどうしようもないでしょう」

「────」


 息を飲むローランド。無表情だが、しかしどこか顔を蒼褪めさせた少年の身を案じたニールは「医務室に行きますか?」と声をかけた。


 だが。


「……いや、大丈夫だ。続けてくれ」

「ですが」

「問題ない。続けて、くれ。ソフィアさんと騎士団長さんの力は知っているからな……流石に、動揺した」


 確かに、とニールは頷く。あの二人であれば、間違いなくジルを射止めるだろうと思っていた。それがこんなことになるなど、普通は予測できないだろう。


「後手に回ってしまいましたからね」

「……既に、準備は終えていると」

「ええ。ここから逆転するには、ジル王に手を引いてもらうしか」

「……何故、王様が出てくる?」

「それは、ジル王があの少女と──」

「──冗談でも、言っていいことと悪いことがあるぞ」


 次の瞬間、ローランドから怒気が溢れる。表情は微塵とも動いていない。だが、それでもローランドが怒っているのは誰の目から見ても明らかだった。


「ですが、事実です。ジル王とあの少女を止めなければ、我々に未来はありません」

「…………」


 ジルとあの少女と付き合っている以上、その仲を引き裂かなければジルとソフィアが結ばれることはない。そしてその二人が結ばれなければ騎士団長は曇り、自分たちも阿鼻叫喚地獄へと陥る。それはまはや、未来を閉ざされたに等しい事実だった。


「……まだ、だ」

「ローランド殿……」

「まだ、そうなると決まった訳ではないはず……」

「何を」


 扉を開けていいか? とローランドはニールに問う。それに対して、ニールは何故、と疑問を呈した。


「レイラなら、解決策を編み出してくれるかもしれない。なら、俺はレイラに相談する」

「っ! バカな! 騎士団長とソフィア殿でも不可能なことを、貴方方ならできるとでも!? いえ、むしろ貴方方では(カップルだから嫉妬を生む的な意味で)逆効果では!?」

「……ああ。そうかもな。俺とレイラだと(王様からすれば余所者的な意味で)逆効果なのかもしれない」

「なら……」

「けど──動かないと、変わるものも変わらないんだ」

「────」

「……おかしな感覚だ。俺が、自分から行動しようだなんて」

「ローランド殿」


 目を見開くニール。それを無視してローランドはノックをし、中から返事を貰ったので扉を開く。


「レイラ」

「どうしたの、ローラン」

「話があるんだ。少し、時間をくれないか?」

「えっと」

「構わない。ローランドには、それなりの理由がありそうだ。行くといい、レイラ」

「ありがとうございます。……行こうかローラン」

「ああ」


 遠ざかっていく二つの背中を眺め──フッ、とニールは気が晴れたような笑みを浮かべた。


(私としたことが。先達となるべきは私であるはずなのに、少年少女に教わるとは)


 いや、あるいは彼らだからこそなのかもしれない。が、それは今は脇に置いておこう。


「ソフィア殿。少し、席を外してもらっても構いませんか。エクエス王国として、重大な情報を騎士団長に伝えたいので」

「分かりました」


 一度、ソフィアには席を外してもらう。ジルに恋人がいたなどと発覚すれば、ソフィアは心臓麻痺で死んでしまうかもしれない。これは、ニールなりの配慮だった。ちなみにソフィアは──というより『熾天』は心臓麻痺程度なら自力で復活できるので、特に問題はなかったりする。


「騎士団長」

「どうした、ニール」

「先日のジル王の一見は覚えていますか?」

「先日の……ああ、アレか。見間違いかと思ったが。しかし、何故お前はそれを」


 だから自分は、自分にできることをしよう。そう心に誓って、ニールは口を開いた。


「横恋慕です。騎士団長」

「……は?」

「(ソフィア殿は)横恋慕をされたのです」

「お前は何を言っている」

「あるがままを」

「主語がないんだが」

「扉の外にいるので、ぼかす必要があるかと」

「急に小声になるな。まるで聞こえんぞ。お前は何が言いたいんだ」

「ですから、横恋慕をされたのです。そういうことにすれば大義名分を──」

「そもそもだ。──嫁入り前の人間にその単語をあまり出すな」

「たわばっ!?」


 騎士団長の鉄拳がニールを襲う。気持ちが先行しすぎて主語が行方不明になった結果とんでもない発言をした者に、当然すぎる末路であった。


 ◆◆◆


「……そう。王様が」

「レイラ。俺は……俺たちは、どうするのが正解なんだろう」


 殺すしかないのだろうか──とローランドの冷静な部分が訴える。

 殺したくない──とローランドの感情が泣いている。

 ◼︎◼︎──とローランドの中の◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎が叫んでいる。


「……殺し合いをしたくないのなら、別に殺し合いをする必要なんてないんじゃない?」

「えっ」

「確かに、『世界の終末』を起こす人に、会話をしても意味がない……と思っていたけれど、王様ならそうでもないと思うよ。ローランドも、そう思わない?」

「……」

「だからさ、私たちがやるべきことは単純明快」


 ポン、とレイラはローランドの肩を叩いた。


「話をしよう。王様と、話を」

「レイラ……」

「それにさ」


 ──世界だけ救っても、救った世界に必要なものが残ってなければ寂しいじゃん。生きるってさ、命があれば良いってもんじゃないと思うよ。


 そう言って、レイラは微笑んだ。


 ◆◆◆


 キーランは混乱の最中にいた。


(何故だ。何故、オレがあれほどまでに目立つ位置に配置される……?)


 会場には多くの人々。それは無辜の民だけでなく、騎士も多く配置されている。武装をしているのは護衛という側面の他に、騎士たちの正装は鎧を纏った状態という側面もあるだろう。いずれにせよ、攻めるにはやりづらい状況である。


 そして一番の問題は、キーランは列席者たちの前に立って待機しなければならないらしいことだ。どう考えても、暗殺するには不向き。自然と同化することで擬似的に不可視になる技術は会得しているが、ヘクター曰く「頑張って目立てよ」とのことなので自然と同化するのは禁止されているに等しいと言えるだろう。


(オレが陽動か? いや、ジル様の作戦であればこうはならないはずだ……)


 流石に訝しんだキーランは、念話──ジルの手解きによって『レーグル』と一部の部下はこれを扱えるようになっている──を使い、ヘクターに連絡をとる。


『ヘクター。私があそこで待機するというのは、ジル様の指示か?』

『いや、別に特別ボスからの指示があった訳じゃねえが』


 やはりか、とキーランは内心で舌打ちした。ならば誰がこの杜撰な作戦を考えたのだという話になるのは、当然の流れだった。


『ならば誰の指示だ』

『誰の指示も何も、お前がそこに立つのが常識じゃねえの?』


 絶句するキーラン。暗殺者を目立つ位置に配置して任務を遂行させるのが、ヘクターの中では常識だとでも言うつもりなのか、と。


(あり得ん。ヘクターは信仰を有していない不届き者ではあるが、しかし能無しでなければジル様の不利益になる行動を取る愚者でもない。やはり、催眠の類を受けているのか……?)


 傭兵としての経験を積んでいて、人徳を有し、戦闘狂ではあるものの考える頭を持つヘクターが出す結論として、あまりに不自然。これは、第三者による見えざる計略があるに違いない──!!


『まあ強いて言うなら、神父さんだな』

『神父さん』

『ああ』

『……神父さん、か』

『神父さんだぜ』

『……』


 つまり教会の連中か、とキーランは静かに殺意を立ち昇らせる。下界を知らぬ引きニート集団では、暗殺者に相応しい配置など把握していないのは当然の理屈ではある。ヘクターがそれに頷いたのは解せないが……一応、立場上は向こうが上だと判断しているのだろう。信仰心の有無で上下関係を決定しているのは殊勝な心がけだが、それをするくらいならばさっさとジル様を信仰して服を脱ぐことで"本物"になれと言いたい。教会程度、顎にして使うのが許されるくらいの働きをヘクターは済ませているはずなのだから。


『その神父とやらの言葉は忘れろ』

『あん? けど……』

『オレよりも、お前の方があの位置に着くのに相応しい』

『……は?』


 ? とキーランは眉を潜めた。今のヘクターの「は?」はこれまでと毛色が違うような──。


『テメェ。本気で言ってんのか?』

『本気も何も、当然だろう。むしろ、オレがあの位置に立つなどあり得ないにもほどがある』

『……テメェ。心ってもんを知らねえのか』

『知っているとも。だがな、これは感情論で片付けていい問題ではない。お前の方が相応しいとオレが思う──これ以上の理由が必要か?』

『本気で言ってるんだとしたら、そこまでテメェの性根が終わってるなんざ思ってもみなかったぜ……!』

『……?』

 

 何故、ヘクターは怒っているのだろうか? とキーランは不思議に思う。普通に考えて、ヘクターが陽動になる方がこの場において相応しいはずなのに。物理的に屈強なヘクターであれば、万が一暗殺対象が直接武力を行使しても安全であり、彼の存在感は陽動としてこれ以上なく相応しい。


『オレよりもお前の方が相応しいだろう。常識を考えろ。お前の方が、オレよりも白兵戦に優れている。これは適性の問題だ』

『だからなんだってんだ。……いや待て。テメェあれか。今更自分には資格がないだとか悩んでる性質たちか。意外と繊細というかなんというか……。だとしたらさっきの言葉は取り消すし、謝罪もしねえと……』

『謝罪は不要だ。なら──』

『けどその前に、だ。いいか? テメェ以上にそこに立つのに相応しい漢はいねえ。テメェだからこそ、あの女はそこに来るんだよ。俺がんな場所に立ってみろ。間違いなく帰るぞ』

『……帰るのか』

『そらそうだろ』


 どうやら暗殺対象は女で、ヘクターが目立つ位置にいると帰宅するらしい。だから自分が抜擢されたのだろうか。


『ローランドはどうだ』

『同じだろ』

『レイラは』

『何言ってんのお前』

『ソフィアはどうだ?』

『それも普通に呆れて帰るんじゃねえの』


 ……なるほど、やはり消去法で自分は選ばれたようだ。


『女はいつ来る?』

『テメェと同時に入場するか、テメェの次に入場じゃねえか?』

『オレは何をすればいい』

『流れに身を任せろ』

『つまり、好きにしていいということか』

『ああ。普通に考えれば特に問題は起きねえよ。逃げんなよ。そこに立つって決めたんならな』

『逃げる訳がないだろう』


 全てはジル様のために。


 信仰を捧げながら、キーランは時が来るのを待った。


 ◆◆◆


(列席者は全て席に着いたか。キーランも着替え終えて待機場所に待機済みだし、騎士団長も直に来ると)


 順調だ、とジルは内心でほっと息を吐く。この世界の住民の特性上、とんでもないイレギュラーが裏で進行していたらどうしようかと思っていたが、順調に事が運んでいる。このまま進めば、平和に結婚式は終わることだろう。


(誓いの言葉で、キーランが服を脱がないかだけが唯一の懸念事項だが)


 流石にないよな? とジルは思う。今回、キーランが心を捧げる相手は騎士団長であり、であれば服を脱ぐなんぞあり得ないだろう。そう考えると、これから先に問題は起きそうに──「王様」──?


 声を受けて、ジルは振り返った。そこにはローランドとレイラの二人がいて。どこか覚悟を決めたような表情を浮かべている。


「やめよう」

「……?」

「こんなことは、やめよう」


 その言葉に、眼を細めるジル。


(こんなこと……結婚式のことか? それを止める? ここまで来て? ここまで順調なのに? 予算も結構かけたのに? 特に問題点もないのに? どういうことだ。何故、ローランドとレイラは……だがひとまずは、俺の解答の返事をするか)


 眼を細めながら、彼は思考を巡らせていた。


「断る」

「っ、けど」

「……本気、なんですか?」

「本気も何も、この段階まで来てやめる訳がなかろう」


 ◆◆◆


「本気も何も、この段階まで来てやめる訳がなかろう」


 決定事項は覆らない。くだらないことを聞くな、と言ったような口調に絶句する。嘘だ、と思いたくても、祝福に反応はなくて。


「そもそも、貴様らは何故私にそのようなことを申す?」

「そ、れは」

「私がどれほどの手間をかけ、どれほどの人員を動かしたと思っている。それを今更、取りやめろと? 貴様らは本気で言っているのか?」


 世界を滅ぼす準備が大変だったから予定変更なく世界を滅ぼすね……そんな雰囲気だった。それは、まさに巨悪と言っても過言ではない在り方。だが、それでも──それでも、ローランドもレイラも彼とは戦いたくなかった。


「ですが王様!」

「くどい。今の発言は、私の耳には入らなかったことにしておいてやろう。そら、疾く去れ。式が始まる。貴様らにも席は用意してある故にな。勿論、二次会たる披露宴も──」

「──なんで、ですか」


 なんでもなにも、とジルは呆れたように。


「貴様こそ、何が不満だ。これで、誰もが救われる。私も、ヘクターも、セオドアも……お前たちとて、な」


 本気で言っている、とローランドは確信した。


(滅びが救い、とでも言いたいのか……?)


 けど、それは──と思い、ニールが「あの少女」と言っていたことを思い出す。


「……王様。貴方は、騙されている」

「……何?」

「貴方は、きっと、勘違いをしているんだ」

「勘違い、だと?」


 そうだ。きっとそうに違いない。悪いのはすべて、ニールが「あの少女」と言っていた奴に違いない──!


「……あり得んな。それに、勘違いをしていたとして、それは取り止める理由にはならん」

「けど王様……!」

『キーラン殿。ご入場ください』

「そら、始まるぞローランド。結婚式だ。今は奴らに祝福を送る時よ。無粋な真似はよせ。……今は貴様らの精神状態はあまり良くないらしい。私の近くにいることを許す」


 そう言って、ジルは視線を移した。最後の言葉は、ぶっきらぼうで冷たい声音でありながら、しかしこちらを案じる面があって──


(……まだ、時間はあるはずだ)


 ──まだ、巻き返せるとローランドは静かに拳を握った。


 ◆◆◆


 そして、この場にいる第三者もそれを聞いた。


『キーラン殿。ご入場ください』


 ──は? 誰アレ。


 少女、ルシェの表情が能面と化した瞬間であった。


 ◆◆◆


 名前を呼ばれて、足を踏み出す。なんかよくよく見ると結婚式みたいな空気だな──と思いながらも、キーランは足を止めない。


(……いや、待て。これ、結婚式では?)


 ならば誰が結婚するんだ? と疑問に思って──あれ、これ自分が結婚しそうな流れでは? とキーランは呆けた。


(……オレは、結婚を、するのか?)


 いやそんな話一度も聞いたことがないのだが、とキーランは呆然とする。


 そして。


『騎士団長殿。ご入場ください』


 そして──運命の時は来た。

 

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