水の底には誰がいる?
第19話 勇者は異世界人
緋村玲人は日本から光の地へ転移した「異世界勇者」である。
彼は卓越した剣技と高い魔力を兼ね備える、光の地でも稀有な存在だ。特に雷属性の攻撃魔術は、光の地の魔術師たちが最も難儀する闇の巨人ですらも倒してしまうほどの破壊力を誇っている。そして今は、魔王デルガドが光の地に送り込んだサハギン軍団と戦闘を繰り広げている。
「ライトニングシュート!」
玲人の右手から発せられる電撃は、数体の下級サハギンを数秒のうちになぎ倒した。直後、別のサハギンが玲人に向けて槍を投擲する。
「レイト、危ない!」
玲人の前に、プレートアーマーと重シールドで防御を固めた戦士が立った。彼は光の地の王室近衛兵グレゴリー。パーティーのタンク役である。
サハギンの槍は、グレゴリーのシールドにガツンと当たった。が、グレゴリー自身にダメージはない。
「セシリア、援護してくれ!」
グレゴリーの呼び声を聞き、飛び出したのは女騎士セシリアだ。素早くレイピアを抜き、目の前のサハギンに斬りつけた。
「やあぁぁぁっ!」
セシリアのレイピアは、耐久力の低い下級サハギンであれば一撃で真っ二つにしてしまう。しかもセシリアの『疾風斬り』は、一度の攻撃で2体の魔物にダメージを与える。彼女の剣技により、あっという間に2体のサハギンが消滅した。
「ヒュー、残りを片づけろ!」
セシリアはパーティーの最後方にいるヒューに、そう指示を出した。ヒューはこの世界では珍しい少年魔術師。光の地でも闇の地でも、魔術師という職業は女性がやるものだが、ヒューはその例外である。
「アイスブレード!」
攻撃魔操師専用の杖を振り上げながら、ヒューは魔術の名を叫んだ。直後、パーティーと対峙する残り3体のサハギンに氷の刃が降り注ぐ。
下級サハギンの小隊は全滅した。が、これはあくまでも前哨戦に過ぎない。
「ふふふ……以前よりもレベルを上げたようだな、光の地の勇者どもよ」
そう笑いながらパーティーの前に現れたのは、上級サハギンの小隊を率いる闇の魔操師ヒルダ。玲人たちが最も警戒する魔王軍幹部の女だ。
「現れたな、ヒルダ! 今日こそは必ずおまえを倒す!」
玲人はそう叫びながら、雷の魔石を柄に埋め込んだ彼専用のフランベルジュを構えた。
「覚悟しろ!」
「ふん、相変わらず愚かな異世界人だ。……まあいい、今日はとことんまでお前を苦しめてやろう。そしてお前は、苦悶と暗闇の中で死ぬのだ!」
ハイレグ魔操服に身を包んだヒルダは、殺意に満ちた目を玲人に向けながら攻撃魔術の呪文を詠唱し始めた。
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