チートじゃなくてバグってる ~理外の巨漢と高身長コンプレックスの戦乙女達~
鎧 兜
序章 異世界の記憶
時は、夕方。『
場所は、高校のクラブ棟の脇にあるベンチの一つ。
「――メグミ」
優しく
「…………あれ? 私……」
「やっと来たよ」
そう言って横を向くマドカの視線を
一人は、端正なアイドル系のイケメンで、手足がスラリと長い身長175センチ程の『
もう一人は、好みによって意見は分かれるが、イケメンだという者もいる
「――
それが、霊長類最強男子、超人、和製ヘラクレス、リアルチート、バグキャラ……仲の良い友人達から言いたい放題言われている幼馴染み――『
そして――
「――えっ? えっ!?」
幼馴染み達が制服姿だという事、自分もまた制服を身に着けているという事、更に、もう一度周囲を見回して、
「なに? どうしたの?」
それが収まらない内に問われて、え? と聞き返す。
すると、マドカは、苦笑しつつ、
「ちょっと、異世界に召還されて今帰ってきた所だ、なんて
冗談めかして言い、
「――――~ッ!?」
メグミは、はっ、と息を
そうこうしている内に二人が近付いてきて、
「そっちのほうが早かったか」
そう声をかけてきたのは勇仁。
それから、四人は連れ立って歩き出し……
「…………ねぇ、龍くん」
前を行く二人の背中を見詰めてから、メグミは、自分の隣を歩く龍慈を見上げて声をかけた。
「ん? なんだ?」
「あのね……、えぇ~と…………今日って……」
「部活後にみんなで道場に行って、稽古の後はそのままマドカ
訊きたかったのは、今日が何年の何月何日かという事だったのだが、龍慈に、違ったか? と確認されて、
やはりあった。手に取り、年月日を確認する……が、異世界に召還された正確な日付が分からなかった事を思い出して、がくっ、と肩を落とした。
(
覚えているのは自分だけ。――それが意味するのは……
「どうかしたのか?」
間近から聞こえてきた声に、メグミが、はっ、と
「何か心配事でもあるのか?」
続けてそう訊いてきた。
「心配事……?」
そう問われて、考えてみると……
「…………ううん」
こちらに
そして、あの世界とは違って、
「そうか。
龍慈は、落ち着きのある低い声で言いつつ、ちょうど良い高さにある頭の上に、ぽんっ、と手を乗せ、メグミは、大きくて力強く、それでいて重さを感じさせない優しい手のぬくもりを感じてはにかみながら、うん、と
異世界で共に過ごした記憶は、ないままなのかもしれないし、戻ってくるのに時間差があるのかもしれない。
そのどちらにせよ、確かに、友人達は今ここにいる。
「ねぇ、龍くん」
「なんだ?」
言いたい事は
だが、あの世界の記憶がない龍慈にしても
だから……
「……ううん、何でもない」
メグミは、全てを胸に
そして、手をつなぐ――ほどの度胸はなく、その
――こうして、『天野 恵』は元の世界に帰還し、日常へと戻っていった。
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