最低限の高さ
シヨゥ
第1話
全力全開。そんな常にフルパワーで過ごした20代があっという間に過ぎ去り30代を迎えた。
明らかに疲れやすくなり、あらゆるところにガタを感じ始めている。それもあって生活を変化させなければならないという使命を感じた。
あれもこれもと手を出すのはやめて最低限のことをこなして省エネで生きよう。
そんな思いもあって、ゆっくりとではあるが生活が肉体的には楽になっていった。だが、ある所まで行くと一向に楽にならない。楽になりたいという気持ちと最低限こなさなければならないという責任感のはざまで窒息しそうだ。そんな思いを友達に吐き出すと、
「お前の最低限は棒高跳びぐらいなんだよ」
と言われた。
「最低限っていうのはハードルぐらいの高さがちょうどいいんだ」
どうやらボクの最低限は他人と比べたらはるかに高いらしい。
「周りの目なんか気にせずにそぎ落とせる仕事はそぎ落としていけ。必要なら誰かが代わりにやる。そんなもんだよ。組織っていうのは」
「そんなもんか」
「そんなもんだ。周りの目なんて気にせずに限界をアピールして、仕事に穴をあけてみろ」
アドバイスに従い仕事に穴をあけてみる。すると別の誰かがその穴を埋めていた。それを繰り返すうちにずいぶんと楽になる。
「顔色が良くなったね」
そんなことも言われるようになった。
「こんなに大変だったとは思わなかった。よくひとりで回していたね」
なんて言われることもある。
「まぁ仕事を増やしてくれたことの礼はあとでたっぷりと」
なんて言われた日には胃がキリキリした。だが、小言を言われるぐらいなんだという気持ちもある。
倒れるよりかはマシだ。その思いを常に持っていたい。体力のピークを過ぎたのだ。これは仕方がないこと。無理せず、長く走れたら。そう思う。
最低限の高さ シヨゥ @Shiyoxu
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