第27話 幼馴染みの装備屋(2)

「す、すごい。フィーグっ!

 このスキル【心眼】……素晴らしいわ!」



 レベッカは感激した様子で言った。



「でも、だからこそ分かる。やっぱダメだよ、これ。

 リリアさんよくこれ装備して戦ってたわね」


「どういうこと?」


「それはね——身体に触れるとよくない金属まで含まれている。肌が強いひとはいいけど、弱い人は腫れても仕方ないわ。見た目を良くするためだけにこんなこと……」



 装備名:勇者印の鎧

 エンチャント:マイナススキル【毒性】 (表面に塗られた塗料のため、肌が弱い者が長時間触れると、肌の異常、腫れや出血を引き起こす。防御力−10%)

 品質:低

 


「マイナススキル……そんなものがあるのか?」


「うん、私にはそう見えるの」


「しかも、こんなものを高額で売っていたと」



 強い装備だと勘違いして購入し、戦いに挑んだら……命を落とす可能性だってある。



「やっぱりこんなもの……転売品を加工したものなんてウチに置かなくて良かった」


「真面目に正直に商売をやってたんだな。レベッカらしいな。すごいよ」


「そ、そうかな? 普通にしてただけだけど……」



 急にレベッカはしおらしく、頬を染めたが、すぐに顔を上げ俺を見つめる。



「でも、このスキルすごいよ。なんでも分かるの。フィーグ、ありがとうね」


「もともとレベッカのスキルだ。それをちょっといじっただけ」


「だったら、いいけどね。装備屋なのに品揃え悪くなって……お客さん来なくなっててどうしようかって思ってたの。

 でもね、このスキルがあれば、新しく鑑定屋だってできるかもしれない。良いものと悪いものをもっと詳しく区別できる。

 本当に……ありがとう」



 涙目になって俺を見上げるレベッカ。

 今まで、俺が思ってた以上に辛い目に遭っていたのかも知れないな。



「リリアさんの鎧だけど、加工も良くない。雑な仕事すぎるわ。こんなのおじいちゃんが見たら何て言うか」


「そういえば、おじいさんの話も聞いてみたいな」


「そうね、うん、わかった」



 レベッカは再び少し目を伏せつつ、俺たちを店の奥にある工房に案内してくれた。

 どうやらじいさんは、装備の製作で急に失敗が多くなったらしい。


 それでも無理しながら作業していたら、火花が飛び散り火事になりかけたこともあるという。



「冒険者ギルドや神殿で診てもらおうと言っても、おじいちゃん聞かなくって」


「レベッカのじいさん、ちょっと頑固なところがあったからな」


「ふふっ。前ね、フィーグと一緒に工房に忍び込んだこと覚えてる?」



 覚えている。

 じいさんに見つかって滅茶苦茶怒られたのはいい思い出だ。


 レベッカと懐かしい話題に花が咲いた。だけど冷たい視線を感じ振り向く。


 そこには、ジト目で俺たちを見るリリアがいる。



「あの、リリア?

 どうしてそんなに頬が膨れてるんだ——?」


「いえ、なんでもありません」



 一方のレベッカは得意げな顔をしている。


 鍛冶をしているわけでも無いのに、リリアとレベッカの間に火花が飛び散っているのが見えたような気がする。


 そんな様子にどうしようかと思っていると、何やら俺のスキル【整備メンテ】が何か言っている。



《心眼の状態をより詳しく鑑定する性質を用いて、【スキルメンテ:診断】を魔改造することが可能です。魔改造します》



 ん?

 スキルが勝手に動いている。



《成功しました。【スキルメンテ:診断】は、対象の状態ステータスを診断できるようになりました》



 状態?

 なんだろうそれは。


 ちょっとレベッカで試してみよう。



『名前:レベッカ

 状態スキル:

  身体:正常

   →【詳細】

  生死:生

  精神:正常』



 おっ。状態スキル:身体の【詳細】が見られるようになっている。

 早速詳細を見てみよう。



『名前:レベッカ

  状態スキル:

   身体スキル詳細:

    年齢  16歳

    身長 159センチ

    体重  49キロ

    BWH 88:59:80』



 お……おう。

 こ、これは。成長している……。


 ではなくて……なんだか悪いことをしてるような気分になってきた。

 俺は頭を横に振り、邪念を追い払う。



「フィーグ? どうしたの?」


「いいいいいい、いや、なんでもない!」



 俺は目を逸らし、空中に視線を漂わせた。

 なるほど、人の状態を知ることができるようになったのか。


 生死と、精神状態が分かるようになったようだ。

 どういう時に役に立つのだろう?



 ☆☆☆☆☆☆



 工房についた。

 いつもはじいさんが鉄を打ち付ける音がするのだが、今日は静かだ。



「おじいちゃん! フィーグが久しぶりに来てくれたの」


「こんにちは。お久しぶりです」


「あぁ? フィーグだと? 悪ガキめ、何しに来た!?

 年長者の話を聞けないこの馬鹿者がっ!!」



 工房に入るなり、罵倒を浴びせられた俺。


 元々は、こんな悪態をつくような人では無かった。

 いったいどうしたんだろう?




————————————————

*作者からのお願い*


カクヨムコンに参加しています。


★で称えていただいたり、フォローいただけると嬉しいです。


女装したらヤバいことになった……「よしっ💕ぎゅっとしていいですか?♥」

https://kakuyomu.jp/works/16816700429237953848


↑カクヨムコン参加作品のラブコメです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る