【主従オフコラボ】悪魔と執事 #あくまとしつじ

 やられたな。


 確かに、戦闘中に油断は禁物だ。

 だが、一つだけ言わせてくれ。


「配信中だぞ?!コメ欄の相手してるときくらいなんかこう、配慮とかねぇの?!」


 散々ほったらかしにしてしまったリスナーの相手してたら背後からとか卑怯すぎませんかねぇ?


「知りませんよ、そんなの。リスナーさんの案で始まったんですし、私もチラチラ確認はしてて大丈夫と思ったんですけどね」


 :まぁ、悪魔の言い分も分かる

 :俺らの相手してて負けたんだもんな

 :でもまぁ、油断してた悪魔が悪いな

 :これは悪魔が悪い


 さっきまで文句言ってたくせにこいつらは……!!

 なんとも都合の良い奴らだ。


「はいはい、俺が悪かった悪かった……んで、説明してほしいんだが、お前のあの転移は何だ?お前空間属性苦手だったろ?」


 :それは思った

 :でも、初配信の時もやってなかった?

 :転移だけは得意なんじゃね?


「いや、俺が言いたいのはそういう出来る出来ないじゃ無くてな……」


「『練度』の話ですよね?」


 リスナーに説明しようとしたところ、ちょうどユーリがかぶせてくれた。


「そうだ。練度の話……言うなればレベルの話だ。

 お前いつの間にあんな違和感の無い転移を使えるようになったんだ?」


 いつものような空間を無理矢理ねじ曲げ穴を作るような転移では無く、存在がその座標へ移るような転移。

 俺の記憶が正しければつい最近までもっと雑な転移だったはずだ。

 それをこの短期間で俺が気付けないほどにまで仕上げられているのはさすがに不自然だ。

 数ヶ月の努力で苦手属性の魔法が使えるようになるなら誰も魔法の習得に苦労はしねぇし、そもそも苦手とは言えねぇ。


「逆……逆ですよ、ヴァイサー様。使ではなく、使んですよ」


「はぁ??今までは実力を隠してたって訳か?」


「いえ、今までの魔法は正真正銘の全力です」


 言ってる意味がよくわからんのだが……。


 :なるほどわからん

 :元から使えてたけど、使えないのが全力だった?わからん

 :解説求む


「ふむ……では、ヒントです。私の出自が大いに関係してきます」


 出自ねぇ。

 ユーリは特殊な生まれで天使と悪魔のハーフ。

 天使と悪魔……───ッ!


「魂か!!」


「正ッ解ッ!!」


 ユーリがにんまりと笑みを浮かべる。


 :すまんわからん

 :俺らにも詳しく教えてくれ

 :解説はよ


 置いてけぼりの視聴者に説明する。


「俺たち悪魔や、天使ってのはどういう生命だと思う?」


 :架空の生き物?

 :化け物


 ったく、そういうんじゃなくてなぁ……。


 :精神生命体か?


「そう、そこの『廃課金』さん、正解だ。

 俺らは精神生命体、言うなら魂の存在そのものに近い」


 :ほうほう、なるほど

 :それでさっき魂って言ってたのか

 :でも、それがどう関係あんだ?


「ここからは私が説明しますね。

 魂というのは遺伝子に近いものです。

 そして、あなたたちの遺伝様式は親の片方から半分、もう片方からもう半分の遺伝子をもらって子孫へ繋いでいきます」


 :ふむふむ

 :遺伝ってそういう仕組みだったのか知らんかったわ

 :勉強したようなしてないような?


「まぁ、それはなんとなく理解していれば大丈夫です。

 そこで、さっき私たちは魂のような存在であると言いました。

 精神生命体が子供を作るときは自身の魂と、番の魂の半分のコピー同士を掛け合わせて作られます」


 :大体仕組みは同じ訳だな

 :魂のコピーってちょっと怖くね?

 :自我とか残ってたりせんのか?


「そこは心配いらねぇぞ。コピーつってもほぼまっさらな魂だ。だから親の自我が基本混じることは無い。本当にただの遺伝子だと思ってくれれば良い」


 一応デリケートな部分だからな。ちゃんと誤解は与えないようにしねぇと。


「続けますね?

 同族の場合は綺麗に混ざるんです。でも、他種族の魂が掛け合わさっているので、私の場合は混ざった部分と独立した部分が混在します。普段は混ざった部分が表に出ています。今は天使としての魂が表に出た状態です」


 なるほどねぇ。

 精神生命体、しかも多種族との間の子供というのは魂までもが異質になるもんなんだな。


「簡単に言えば私には3つのタイプの魂がある、そういった感じです。そしてそれぞれの魂には特徴があります。

 混在型は、魔法の得意属性は水と風。魔法と物理両方に長けたタイプです。

 天使型は、魔法の属性は聖と光、炎、空間しか使えません。その代わり威力は高く、燃費も良い。でも物理面はあまり強くありません。

 悪魔型は、魔法の属性は深淵。最悪自分にも影響のあるちょっと使いづらい属性ですね。でも、このタイプの魔法適性がそもそも低いのであまり使えません。そして、物理が馬鹿みたいに強いです。威力も耐性も。

 天使である母の魔法特化、悪魔である父の魔法の苦手さと物理特化をそれぞれ受け継いだタイプですね」


 :なんかずるいな

 :チート過ぎるw

 :苦手なタイプには属性変えて有利属性ぶつけられるってこと?w

 :環境キャラじゃねぇか

 :合法チートで草


「なるほどなぁ。でも、絶対これデメリットあるだろ?」


 逆に無いとおかしいだろ。

 てか、魂のあーだこーだなんてロクに分かってないブラックボックスだぞ?

 最悪命に関わるなんてのもあってもおかしくない。


「ありますよ。まず、長時間使うと死にます。最悪は。これくらいの出力と時間なら何も問題ないですけど」


 はぁ?!!


「おま、そんなんはよ切れよ!」


「さすがに疲れたので戻ります」


 そう言うと元のいつも通りの姿に戻った。


 :普通に死ぬような魔法使うなよ……

 :大丈夫なんか

 :休んでもろて


「これくらいなら本当に大丈夫ですよ。まぁ、あと不便なのはたまーに独立した部分の魂同士が反発して痛むぐらいですかね?」


 :魂が痛むってめちゃくちゃ痛いやつなんじゃ……

 :普通の怪我で痛いとかじゃ無いだろ


「魂の痛み……魂痛か……あれめっちゃ痛いからな。なんかこう、体の内の内から引き裂かれるような痛みだからな。もう思い出したくないほどに」


 そんなのがたまにでも襲ってくるとか怖すぎるだろ。

 もうちょっと休暇とか出してあげた方が良いか?これ。


「ユーリよ、あれだぞ?休みがほしけりゃ言えよ?魂痛休暇出すからさ」


 :せやで、休みたいときは休むんやで

 :んじゃ、俺も休みたいときに休も

 :ダメだ、お前は働け

 :なんでや


「いえ、大丈夫ですよ?痛みには慣れましたし、それに私のはそんなに痛まないので。精々人間で言うところの針に刺されたくらいの痛みですよ」


「そうか……」


 何というか。何も言えないななんか。

 色々疲れたし。


「とりあえず、時間も良い感じですし、そろそろ終わりましょうか~」


「そうだな。よし、今日の配信は終わりだ!」


 :なんか早かったな

 :まぁ、引き込まれてたからな

 :面白かったぞ!

 :こんどはちゃんと企画考えて来いよ!

 :面白かったわ~ ¥20000

 :楽しかった、ありがと ¥30000

 :板の二大ネキが揃い踏みじゃねぇか

 :ナイスウルチャ!

 :ナイスウルチャ!


「えっと……人外狩りネキさんと?」


「ふじこさんね。ウルトラチャットありがとう」


 ずいぶん個性的な名前だな?

 コメント欄を見るにそこそこ名前の知られた人なのだろうか?


「こんなもんだな!んじゃおつ悪魔~」

「おつめ~」


 :おつ悪魔~

 :おつめ~!

 :楽しかったぞ!おつ悪魔!

 :悪魔もユーリちゃんもお疲れ様!


 そんなこんなで色々あったが、無事ユーリとの初コラボ配信が終了したのだった。



 ◇◇◇◇◇

 〜帆南〜有償依頼受付中@Honami_mama


 うちの子たちちょっと暴れすぎじゃないかしらねぇ?


 ママハラハラが止まらなかったわよ……


 □23   ⇅471   ♡4.2万



 ヴァイサー・ザリウス 【MML】やりすぎ反省中


 反省してます。ごめんなさい。


 □5   ⇅201   ♡5921



 ユーリ・ウルス 【MML】私が主を殺りました


 心配をお掛けしました……。


 □13   ⇅311   ♡7213

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