応募内容はっと……
さて、オーディションに応募する事となったが、何すればいいのか分からんな。
「ユーリよ、こんな感じでいいのだろうか?」
我は自分のスマホに打ち込んだ内容をユーリに確認してもらう。
「ちゃんと名前は偽名も使ってますし……内容も問題なし。あとはアピールポイントぐらいでしょうか?」
大抵この手のオーディションには自身のアピールポイントを書き込むところがあるのだが、ヴァイサーはそこへ何を書くか決めあぐねていた。
「あっ、夢の欄には『受肉して人間のように楽しい生活を送るのだ』って書いたんですね。これじゃ、私たちが本物の悪魔って言ってるようなものじゃないですか」
「うむ…確かにそうか。ダメであるか」
「いや、でも……これをアピールポイントにできるかもしれませんね。もうキャラを作り込めてますよ的な」
そう言うとユーリはパシャと我の姿をカメラで撮ってきた。
「なっ、なにをするのだ?!」
「いいからいいから……ほいっと」
「出来ましたよ、ヴァイサー様」
そしてなにか操作したあと我のスマホがユーリの手から返される。
そこにはアピールポイントと書かれた欄に我の写真と、『立ち絵とキャラ作りは完璧なのだぞ』の文字。
「ほう……だが、ユーリこれではVTuberではなくなってしまうのではないか?VTuberというのはイラストを表示させて配信する者たちのことではないのか?」
「はいそうですよ。しかし、私たち悪魔は元より優れた容姿を持ち、生まれてきます。それはもう立ち絵として描かれるイラストと遜色無いほどに。なので、自身の姿を映し、配信しても問題ないかと」
なるほど……。
そこでユーリが、しかし…とまた口を開く。
「問題なのはVTuberになれたとして両親をどうするか、ですね」
「ん?両親?どういう事だ?」
VTuberには立ち絵を描いてくれた人や2Dデザインをしてくれた人をママやパパと呼ぶ風習があるらしい。
「ふむ……なら問題ないぞ」
そう、これに関しては全く問題がないのだ。
「それはどういうことですか……?」
こうユーリに聞かれたので我はあるページを見せる。
「これが、我の母上であるからな」
「えっ?!ヴァイサー様の母上様が人気イラストレーターの『帆南』様ぁ?!」
そう、我の母上、ホーミンは人間界で『帆南』としてイラストを描いているのだ。
どうやら、ユーリは我の母上、『帆南』の大ファンらしい。
「うむ、そうである。では、一応名前を使っても良いか確認を取ってみるか」
母上に電話をかける。
すると、一瞬で繋がった。
『もしもーし、ヴァーくんから電話なんて珍しいわね。どーしたの?』
「母上に少しお願いがあってだな……」
そこで先程話していたことを母上にも伝える。
『全然大丈夫よ〜!へぇ、ヴァーくんがYouTubeデビューなんてねぇ』
「まぁ、色々あってだな」
「あっ、母上と話したい人がいるんだが代わってもいいか?」
了承を得たので、隣のユーリに代わる。
「もしもし!帆南様でしょうか?!」
『はい、私が帆南ですよ〜』
「あのっ、私帆南様の大ファンで……それで、いつもイラスト拝見してますっ!」
こんなにテンションの高いユーリは初めて見るな。
いつもは冷静過ぎて恐ろしいぐらいなのに。
『ありがとう。あなたがユーリちゃんね?いつもヴァーくんから話は聞いてるわ』
「えっ、私の名前……きゅぅ」
『もちろんよ〜。それで、ユーリちゃんも私の名前を使ってもいいわよ〜。一緒に応募するんでしょう?』
おっと、そこまで察していたのか。
さすが母上だな。
「え、いいんでしゅか!!」
おーい噛んでる噛んでる。
『えぇ、私にとってユーリちゃんは娘も同然だもの』
よほど嬉しかったのかこれ以上話せそうになくなったユーリの代わりにまた我が話す。
「ありがとう、母上」
『いいのよ〜可愛い息子と娘のためだもの』
「では、また」
『ばいば〜い』
そう言って電話を切る。
惚けているユーリを再起動させ、応募内容の最後の確認を行い、送信する。
「これで、完了だな」
「えぇ、そうですね。帆南様の名前を借りた以上絶対受からねば……!」
おぉ、燃えてる燃えてる。
でも、受かりたい気持ちは我も一緒なのだった…。
◇◇◇◇◇
〜帆南〜有償依頼受付中@Honami_mama
私の息子と娘が近頃デビューすると思うわ〜
みんなよろしくねぇ
□56 ⇅1.1万 ♡2.4万
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