25.記憶にございません




 夜。

 夕食も終わり、ようやく一人の時間かと思ったいた俺だったが……、


「……お前、いつまでここにいるつもりなんだ?」

「はい?」


 なぜかカノンは帰る気配がなく、ベッドの上に横になってスマホをいじっている。

 しかも制服姿のまま、すなわちスカートを穿いたまま寝そべっているため、とにかく目のやり場に困る。今も太ももの大部分が露わになっているため、俺は直視しないよう顔を背けながら話していた。


「センパイ? あたしに話しかけてるんですか?」

「当たり前だ。お前以外に誰がいる」

「でもセンパイ、あたしの方を見てないじゃないですかぁ。あっ、もしかしてスカートの中が見えそうなの、気にしてるんですか?」

「……分かってるなら直せ、バカが」

「あはは、なんだかんだ言ってセンパイも男の子なんですねぇ。別に見たっていいんですよぉ? ほらほらぁ」


 小馬鹿にしたような声。果てしなくウザい……。

 大体、下着なんか見えたところでどうだと言うのか。

 あんなものはただの布だ、ただの……。


「どぉしたんですかセンパイ? そこにあたしはいませんよぉ。眠ってなんかいませんよぉ」

「……横にはなってるけどな。かれこれ三十分以上も。とにかくさっさと帰ってくれ」

「うえー、センパイつれないですね。まあ、センパイのことだから覗いたりはしないと思いましたけど」

「当たり前だ。ふざけるのも大概に――」


 思わずベッドの方を振り向き、俺は見てしまった。

 スカートを少しだけめくらせ、白いパンツの一部を露わにさせているカノンの姿を。

 が、カノンはすぐさま手を下ろしてパンツを隠し、


「~~~~っ」


 ……顔を真っ赤にして目を伏せていた。

 俺も分かりやすく狼狽した。


「お、おま……なんで本当に見せてんだよ」

「だ、だって、センパイは絶対見ないと思って……」

「だからって本当にめくらせる必要ないだろうが! ていうかそんなに恥ずかしいなら最初から煽るな!」

「う~~っ……」


 耳まで真っ赤にすると、カノンは近くにあった枕に顔をうずめて身悶えする。

 その際、足をぱたぱたさせているせいで再び目のやり場に困る状態になろうとしていた……こ、こいつ。マジでわざとやってるんじゃないだろうな。

 しばらくすると、カノンはわずかに枕元から瞳を覗かせ、


「……やっぱり、見ちゃいましたか?」

「……………………………………………………いや」

「センパイのむっつり!」

「なんでだよ!」


 その後もしばらく、カノンがベッドを降りることはなかった。赤くなった耳も中々戻らず、うつ伏せになって枕に顔をうずめたままだった。

 ……マジでいつまで居座る気なんだ、こいつは。

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