羅亜夢(工夫③)
場所はある小さな町工場に移る。
その町工場の奥に隠されている部屋で一人の青年が一生懸命だと感じさせる表情で何かに取り込んでいる。
壁や棚に数々の武器が飾ってある部屋の中に目の前にある一丁の斧に向けて、見つめている。
まるで何かの魔法をかけようとしているかのように両手でその斧を持ち、中々の眼力で見つめている。
しばらくして、その青年、
はあはあと息を整えようとした彼を見て、一緒に部屋の中にいるもう一人の男性...この町工場を工房と呼んだ工房の主、
「うん...」と念入りに斧を見ている様子に息を整えたラームはタクオに質問した。
「どう...ですか?」
そこで、タクオは手にした斧をまた机に置いて、首を横に振った。
「...ダメじゃ。」
「え?」と思わず疑問を声で出したラーム。
「わしがあんたの要望の通りに追加要素が入れるように...こう...なんと言ったら良いんだ?こう...例えるなら、銃弾を装填できるように...弾倉...えーと...マカロンを作っておいたが...その銃弾が入っていないんだよ。」
「銃弾?...それ...たぶんマガジンかと思います。マカロンはお菓子です。」
「あ...そうそう...本当に横文字が嫌じゃ...最近の若者は日本語を使わないから!...とにかくマガジンに何も感じないじゃ。」
「えーと...そう言われましても...」とラームも困っている顔をし始めた。
「あんた...自分の気持ちをちゃんと斧に込めたのかい?」
「込めたというか...乗せようとしていました。」
「それだけはダメじゃ。」
「と言っても...僕もこういうことも初めてで...どうすればいいのか分からなくて...」
「アイツは何か言っていないのか?」
「アイツって...」
「前の持ち主だよ。これをあんたに渡したやつ...」
「さあ...自分の使命を受け入れる覚悟があれば、この斧を取って...その後は特に何も...」
「あっちゃ...ノーヒットか...アイツも意地悪いことをしたな...」
とがっかりした表情を見せたタクオ。
「さっきの正しいのはノーヒントかと思いますが...そうですね。あとはこの世界の今後のこととか私たちの役割とか...確かに言っていました。」
「役割か...あんたはそれが何だと思う?」とここでタクオはラームに尋ねた。
「そうですね...終焉の魔王がもたらす終焉を阻止する...つまり皆が幸せに暮らす世の中にしたいということに繋がるかと自分が思っています。」
それを聞いたタクオはしばらく黙ろ込んでいた。
その沈黙が不気味だと感じたのかラームはタクオを呼びかけてみた。
「あの...大丈夫ですか?」
そこで、タクオは言い出した。
「念すれば、花は開く...」
「...それは?」
「どこかの詩人の言葉だ...要するに自分の願いを込め続ければ、何でも叶えるということだ...わしの解釈でな。」
「は...」
「さっきあんたが乗せようと言ったが、正確には込めることじゃ...もう一回試してみ?」
「あ、はい。」とラームはまた斧を手に取って、見つめている。
「そこで...睨んでいるみたいにしなくてもいい...逆に目を閉じろ。」
ラームはその指示の通りに目を閉じた。
「そこでイメージしろ...あんたが望んでいる世界とはなんだ?」
「僕が望んでいる...世界...」
「あんたならできる。」
「根拠もない自信ですね。」と少し気が緩んだ感じで笑ってしまいそうだったラーム。
「それでいい。力も抜いて、その気持ちを...その思いを頭の中に唱えなさい。」
ラームはゆっくり呼吸をして、目を閉じたまま集中し始めた。
...
この世を皆が幸せに...平和に暮らせる世界...
そう...【悪】というものがない世界...
その世の中にしたい...
この気持ちには嘘ではない...
悪を滅ぼし、全てを平和に...
これでいい...のかな...
いや、ここで迷うところじゃない...
思うんだ...皆の幸せ...
父さん...ラク...みんな...
...ランカさん
と突然頭の中に声が聞こえた...
頭の中に鳴り響いた声はラームに何かを伝えた。
「我の力を汝に与えることを誓わん...」
そして、ラームは目を開けた。
さっき聞こえた声は誰なのか気になりながら、手にした斧を見た。
その斧には今までなかった妙な烙印みたいなマークがついていることに気づいた。
「これは...」とまだ少し混乱しているラームを見て、タクオはその手から斧を取った。
そして、確かめた。
「やはりな...」と興味深そうな顔をしたタクオ。
「それは...」とラームが訪ねると、タクオはそのマークをラームに見せて、こう言った。
「成功じゃ...」
「ということは...」
「あんたの願いが無事に込められたぞ...」
「...よかった...」とやっと安堵の表情になったラーム。
「あと、わしが仕上がりにかかる。あんたは休んでいい。」
「あ、はい」
「一つだけ伝えておかないといけないことがあるが...」
「何ですか?」
「確かに込められた要素が確認できたが、おそらく...これが使えるのは1回だけじゃ。」
「一回...だけですか?」
「この烙印みたいなのは見ただろう?いわゆるマガジンに入っている弾の数みたいじゃ...残念ながら、一つしかないようじゃな。」
「そんな...」とラームも残念そうな顔をした。
「悲観するものではない。こういうのもわしも初めてみたのじゃ!やはりあんたなら、できると思ったぜ。」
「素直に喜んでいいですかね?」
「もしあんたが言った通りの願いが力に変わって、それが実現できれば...もはやそれは神の力と相違ないと言えることだ。だから...」ここでタクオはラームの目を見て、真剣な顔でこう言った。
「使うタイムリーを間違えるんじゃないぞ...」
「えーと...タイムリーじゃなくてタイミングです...」
...しばらくの間に気まずい沈黙が続いた。
一回しか実現できない願い...しっかりと込められたその力はいかに...
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