邂逅(ボーイミーツガール)

現在よりさらに5週間に遡る


ネパールの首都、カトマンズ

トリブバン国際空港


「は...疲れた~」


客で混んでいる荷物受け取りベルトで疲れた様子が隠せない蘭華ランカはいつ出てくるか分からない自分の荷物を待っていた。


「でも、やはりこの雰囲気...アンティーク感あふれる建物はいいね~」


蘭華はまた別の意味で隠せないわくわく感を抑えながら、周りの客にも不思議な顔をされながら...ニヤニヤの顔をしていた。


「まあ...バンコク経由で待機時間を考えたら、14時間ぐらいかなあ。やはり直行便が復活してほしいな。でも待った時間で出発ロビーでタイ版ラーマーヤナ、『ラーマキアン』で登場した羅刹ラクシャーサの石像も見られたし、これもこれで感激したな...わざわざタイに入国してもう一回入った甲斐があった...空港の中しか歩いていないけど...」と疲れがうまく隠せないが、目のキラキラも隠せないい蘭華である。


荷物がようやく出てきて、外の空港を出ると、すでに夜になったにもかかわらず、入口から出た途端にバリケードが設置されていた。

その道路の向こうには来客又は家族の帰り姿を待っている人たちがバリケードに寄りながら、声をかけたり、客の名前が書いてある看板を持っていたりする人混みは到着したばかりの蘭華を待ち受けていた。

出た途端で見た人混みに驚きながら、次の目標を考えていた蘭華...

「うん...とりあえず...カトマンズ市内に行くか...えーと...」

と自分に呟いた蘭華の後ろから日本語の言葉が聞こえてきた。


「あの...すみません...ホテルにお困りですか?」振り向いたら、褐色の肌色の青年が立っている。見た目から見ると、顔立ちでは一瞬日本の人かと思われてもおかしくないが...

なんだかよくある日本の観光客に日本語で声をかけて、ホテルに安い料金で案内するからと言って、ホテルに着いたら、高額のお金を要求されたり...またはもっとひどいことに巻き込まれる詐欺のやりぐちかとも考えられる。これは避けた方がいいだろう...と蘭華が脳内で考えた結果、次の行動に移した。


「ああ...迎えが来ますので、結構です。」と蘭華がネパール語で答えた。

そう、蘭華は南アジアのことが好きすぎて、ヒンディー語とネパール語をマスターし、さらに古代のサンスクリット語まで読めるというまさに南アジア文化大好きというマニアぶりである。そのため、このような場面ではローカルの言語で旅先での問題の一部を回避することができる。今回も今までのようにきっぱり断ろうとして、その青年に向けて言ったネパール語は逆にその青年にびっくりした顔で返させることになった。


「あれ?ネパール語が話せる方って珍しい...」

「え...だから大丈夫ですよ」ともう一回断りを入れようとした蘭華にその青年は少し照れる笑顔で返した。


「はは...そうなりますよね...やはり詐欺とかに間違われますよね...僕。でも、僕はそのようなことをするつもりで言った言葉じゃないと...信じてほしいです。まあ...初対面の人に言われても...ですよね...」という言葉に蘭華は少し戸惑いを感じた。


「えーと...ホテルは予約はしたので気にしないでください。でも、日本語が上手ですね。もしかして日本に行ったことがあるんですか?」というちょっとした会話に展開できそうな質問をしてみたが、結構がっかりしている顔をした青年の反応を見て、ランカはふっと頭を少し下げた。


「あ、ごめんなさい。私...何かまずいことを聞いたのですか?」

「いや...やっぱりこの質問されるのは何回目かわからないですけど、されるたびにへこみますね...はは」


蘭華は頭を上げて、その青年を疑問視する目で見て、もう一回質問をした。


「どういうことですか?」と言った蘭華にその青年は自分のポケットから何かを取り出した。


「僕...この見た目なんですけど...です。」と言った彼が見せたのは見たことがある花の紋章が印刷されたパスポート...

日本国のパスポート!?


「あ、え?そうなんですか?本当にそう見えないけど...あ、すみません!すみません!」

「謝らなくていいですよ。こういうことは慣れましたので...は...これを見せることも僕としては抵抗がありましたけどね...」

慌てて謝った蘭華に対して丁寧に話の対応をしてくれて、この人...信頼できそうなと思ってしまうな...と考えなくもない蘭華であったが...とりあえずはまだ話ができそうだ...日本語も現地のネパール語も対応できるし!


「僕...設楽したらと言います。設備の「セツ」と楽しいの「ラク」で設楽です。」

「私、椎谷しいたにです。椎谷・蘭華。椎名林檎の「しい」と谷でしいたにと読みます。ランカと呼んでもかまいません。」

「では、よろしくお願いします。ランカさん」

「こちらこそ...」

「苗字もなんか似ているし...ここで出会うとは何かご縁を感じますね...えにしと言いますか...ところでホテルまではどうしますか?」

「あ、そうだった。」

「よろしければですけど...僕と一緒に行きますか?親戚がもうあと少し着きますので、ホテルまで送ります。」

不信感が完全に払拭されていないランカだが...この人には不思議に親近感に近い感覚を感じる。


なぜだろう...


本当に不思議だ...


この人は初めて会った気がしない...


「あ...じゃ...お言葉に甘えてよろしくお願いします。」

「はい!ぜひ!あ!今回のネパールは初めてですかね...ダルバートとかネパールの定番な伝統料理が楽しめる店も教えますね」伝統料理というキーワードが出た途端、蘭華の目の輝きが戻ってきた。


「ダルバートですか!はい!すごく楽しみにしています!」


その直後、設楽という青年の親戚らしき中年男性が来て、とりあえずホテルに送ることになった蘭華だが、車が止まっている場所まで荷物を抱えながら移動中...どこかで声が聞こえた。


「シーター」

という誰かのささやきのような声が聞こえてきた...


「誰...?何?さっきの声...」振り向いても誰もいなかったことが分かり、怪しげな声に対して少し不気味さを感じた蘭華はそのまま車に乗って、空港を後にしてそこから去った。

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