羅闍の覚醒

羅刹羅闍の追憶~後悔~

これはである...


「...様!完全に突破されました!」


僅かな記憶の中には紅く炎に包まれた。

宮殿の外から轟く戦の音...

金属がぶつかり合い命と命、魂と魂がぶつかり合う戦の響き渡る音と声の中に誰かの声が聞こえた。


「チクショウ!ヴァナラどもめ!もうここまで来たか!」


うろ覚えの記憶でもあったが、

その虚ろのように思える曖昧な記憶に深く刻まれたのは複数の感情の欠片が残っていた。

「人間への憎しみ」

「自分自身への失望」

そして...「愛する我が君への哀しみ」


これは負け戦である。


そして、我ら敗者は【悪】という烙印に押され、永遠に語り継がれるだろう...

そのような戦なんだ...


それでも最後まで余の【理想】と歪んだ【愛】のために戦う。

この国の王としては行く、そして逝く...

羅刹羅闍ラクシャーサラージャの名の下に...


我が同胞...


我が兄弟...


我が家族...


どうか余のことを許してほしい。

命までかけて、戦いの果てに命を落としてきた

この愚かの王のために...

どうか...

許してほしい...


気が付くと...覚めたくない夢から起きたような感覚に襲われた...

何だろう?この感覚

懐かしい夢を見た気がするが、遠い昔のような夢...

鉛のような重たい瞼を開けて周りを見渡す限り、暗闇の中が続いている。

どうやら余が閉じ込められたであろうとそのようなことが徐々に脳内で理解した。


今覚めたばかりの意識と共に取り戻すつつであった...

ついに実感できた自分の状態は

体に刻まれた傷跡、

胸に刺された...一本の...矢?だろうか...

痛みは感じない


そして余でも行方がわからなかった余の心...

否、残っていないではなく...残っているのは胸の中の心があった空っぽの穴...

心臓と定義した方が適切かもしれない...


この場所にいるのはいつからかわからない。

暗闇の中に上の方向から小さな隙間を通り抜けて照らされた光...

もう...どれぐらい時間が経っただろう...

漏れてきた光に向かって、自分を「余」と呼ぶ彼はつぶやきはじめた。


「愛する我が君よ、其方に愛してしまったのは【罪】だろうか...」


「愛する我が君よ、余が今でもこの空ろの胸の中に残っている【愛】の気持ち、其方に届けるだろうか...」


「愛する我が君よ、いつまで余の心を苦しめるこの【罰】を解放してくれるだろうか...」


と心が残らない自分の胸の中に秘めた想いを誰かに聞かせたいようなつぶやきが止まった次の瞬間。

目の前の暗闇から隙間ができて、徐々に光が広がり、やがて光が扉のような形は映し出し、次第に塞がれたその扉が開かれた。


光が彼を包むように...

まぶしく

暖かく

その光の先に現れたのは一人の人間。


逆光から見ると少女のような姿が余の目に映った。

放った言葉はある人の...


決して名前


その名は...

...

...

...


「シーター」


そして物語が動き出した。

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