微かなもの
愛歌勇
想い
寒い12月の冬、家を飛び出して、誰もいない路上に座りこんでいる。
私ははスマホに保存した一つの写真を眺めていた
「どうしてだよぉ」
そう呟く、そこに映った一人、‘その人‘の笑顔が私の胸を苦しめる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「やーい、きっも~」
「近づかないで」
「なんで居るの」
「最悪」
お願い私をいじめないで
「死ね」
過去の出来事が私を深く傷つける。私は小中学校いじめられていた。クラスで散々私を罵倒して、ストレス発散の人形にされて、何度も、何度も死にたいと思った。心無い言葉が私を深くえぐった。私は何故かみんなに馴染めなかった、私もみんなと同じなのに、どうしてと
家に帰るとき、いつもその人が慰めてくれた。
「大丈夫、あなたは素敵な子よ、自信をもって!」
その人は少しやつれていた、私の家は貧乏で、あまり裕福ではなかった。けれど私に一度も弱音を吐かなかった。
そんな風に時間を重ねて、私は大人になり、友達も少ないけど一人や二人できていた。高校ではいじめられることなくみんなと同じ空間で過ごせていた。
「凄いよ!」
「かっこいい」
「かわいいね」
「流石!頼りになる」
大人になるに連れて褒められることが増えてきた、こんな単純なことなのに生きたいと思った。周りが居るだけで、こんなにも世界が輝いて見えた、何もかもが違ってみえた。
なのに、なのに
雪が降りしきる中で、涙がぽたぽたと零れ落ちてくる、立派な大人なのに人目もはばからず、泣いている。白い息が私の顔を覆う。
寒いな、心も体も冷たい。
成人式の日、着物を召した姿をその人に見せた時、その人は感動して泣きじゃくんでいた。
「ぅぅ大きくなったねぇぅふん」
「恥ずかしいよ~」
この光景は私の中で一生忘れないだろう
「元気で居てね」
「分かってるって、大事にここまで来たんだから」
あの日は春で桜が舞い降りて、心地良かった。あの日は私が生きてて良かったって思えた。
幸せだった。
家に出された食事、小さいころから続いた何気ないやり取りそれが今日
終わった
私はずっと‘その人‘に支えて今日まで生きてきた。どうやって生きれば分からない、大切な何かが、心に穴が、失ったのは、私には大きかった。
寒さで凍える、このまま死のうかな
「ちょっと、大丈夫、?」
「え」
「こんな所に座って、どうしたの」
「私、このまま生涯終えようかなって、だってその方が幸せだもん」
「馬鹿なこと言ってるんじゃないの!」
「え」
「私のことも考えて、ここまで元気に幸せにやってこれたじゃない、いじめにあった時も負けずに今日まで生きてきたじゃない、」
「けど、もう負けそうなの、だって居ないじゃん」
「あなたの心の中に居るわ」
「え」
「おじいちゃん、おばあちゃんも心の中に居る」
「私もそうやって生きてきたのよ」
「けど私・・」
ブブーとスマホが鳴った、友達からメールが来てた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「大丈夫?!、今どこ?」
「今外」
「え、どこ?」
「公園の奥の路上」
「迎えに行くからそこで待ってて」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ほら、まだあなたに生きてほしいって思う人がまだいっぱい居るわ」
「けど、けど、母さんは!」
「母さんは少し先にお休みしておくわ、あなたの幸せな人生見させて、それで私より幸せになって!」
「母さん、」
「約束」
「私けど」
今日死んだはずの母が私に今、ハグを、私の顔の横で泣いている、安心させなきゃ
「分かった、私、母さんよりも幸せになるね」
私は母をそっとさすった、その人を楽にさせたかった。
そして目の前が真っ暗になった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「起きろ、起きろ!!!」
「・・おはよう」
「おはようじゃないだろ!」
私の目の前の友達は泣いていた、私の為に
「何かあったら俺は」
「大丈夫、私誰よりも幸せになるから」
「え」
「母さんとの約束」
「そっか、帰ろう!」
「うん!」
私達二人、体を寄せ合いながら帰った。白い道の上で
「綺麗、雪の結晶」
「だな」
まるで私達二人を鏡のように映す結晶は天国みたいだった。
その人の、母さんの笑ってる顔が私には見えた
今までありがとう
微かなもの 愛歌勇 @ofof
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます