『きみをつれて~宇宙大震災』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

序章

 おれたちは世界のおわりをながめていた。

 宇宙はがらのわれるごうおんとともにばらばらになった。

 静寂につつまれた暗闇のなかでおれとあいが屋根にすわっているあお神社だけがいくつかの灯籠にてらされて存在していた。なぜかはわからない。小学生のころから初詣にかよっていたあお神社はやんごとなきあお大明神をまつっているという。大明神のかげでおれたちは一緒にいられるのだろうか。たしかにあの元日にあいは「永遠に一緒にいられるように」とねがった。あの元日から永遠の時間がすぎて人類も宇宙も時空の特異点までふきとんでしまった。世界なんてほろんだっていい。宇宙なんてばらばらになってもいい。ただ人間のこころまでばらばらになるのはさびしい。いや人間のこころまでばらばらになるなんてありえない。すくなくともおれとあいはよきにつけあしきにつけ永遠につながりつづける。やがて灯籠がきえてあお神社も原子レベルで消滅した。おれはさとった。「もう永遠がすぎちゃったのか」と。おれのてのひらをにぎるあいはこたえた。「じゃあ また永遠に一緒にいようね」と。すると無限の暗闇で一本の超紐が爆発して世界はけんらんたるひかりにつつまれた。

 暗闇の最涯てでビッグバンがおこったのだ。

 こうやって世界ははじまった。

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