1章 箱庭②
かつての私は日本在住の女性であった。
彼女の名前はなぜだかどうやっても思い出せないけれど、サバサバした性格の、可愛い
好きではないが、
でも、そうは言っても私たちは常に二人だった。
隣にいるのが当たり前。
さて、そんな彼女に
『君と
略して『キミ
聖ポリヒュムニア学園には通常貴族が教養のために通うが、
例外に適用されるのは特別な物事に
主人公であるヒロインは
その才に目をつけたプラータ
そんな物語の導入は正直どうでもいい。この
ハマりにハマったゲームだったが、中でも私がどハマりしたのは、攻略対象であるヒロインの
アスワド様は、
前世での
傷つく恋愛をそこそこ経験してきた私の行きつく先は、当然ながらアスワド様であった。
ちなみに悪友の推しは第二王子。
だから第二王子は名前程度の浅い知識しかなく、私はほかに
知らないものはこの際仕方ないが、最重要
重要なのは、ヒロインのライバル……ライバルというか彼女の
ヒロインをいじめにいじめ
――それが、私。
絶望だ。どうして私が
しかも、ベルティーアはハッピーエンドでもノーマルエンドでもバッドエンドでも、必ず消えて終わる。
悪友
だけど、正直私はベルティーアが嫌いではなかった。ベルティーアが出てくるイベントではアスワド様の好感度が五割増しで上がるので。
ちなみにベルティーアは王子を見た瞬間に
悪友の話なんて半分以上聞いていなかったから、合っているかは分からないけど。
そのことを思い出した時はさすがにヒヤリとした。実際、お見合いの場面で私は彼に一目で心を
ともかく、ベルティーアは自分から婚約に
であれば、物語も変わってくる。
なんだ、なにも
そんな風にニヤニヤしたのはつい昨日のことだったと思う。
何がいけなかったの? 翌日、そう思わずにはいられない状況に私は
目の前には
「こんにちは、三日ぶりだね。ベルティーア」
「あの、殿下。なぜ我が家に?」
「なぜ? ベルティーアは僕の婚約者になったんじゃないか。婚約者の家を訪れるのは当たり前のことだろう?」
「こ……婚約者? 私がですか!?」
思わず大声で聞き返す。
私は何もしていないはずだ。お父様は帰ってきて早々に寝込んだ私を見て心配そうにしていたし、お母様も状況を察して静かに見守ってくれていた。
「そうだよ。今日から君が僕の婚約者だ。あれ?
「無礼を承知でお
そう
「そうだねぇ……。
「面白そう……退屈しない……」
「うん、なにか不満?」
面白いって。まるで少女
まぁ、面白いだろうがなんだろうが、王子が私を好きではない時点でゲーム内容とはさほど変わらない。王族の婚約者という
「いいえ。光栄ですわ。殿下」
「うん、よろしくね。ベル」
いきなり私の名前を
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